アルツハイマー病原因物質の蓄積、発症前から高精度に予測可能に 日本の研究グループが発表

 アルツハイマー病の原因とされるタンパク質の蓄積が、発症前に血液検査だけで高精度に予測できることを突き止めたと日本の研究グループが発表した。研究結果はスウェーデンで行われた同様の研究も含まれており、国際的な学術専門誌に掲載された。

年齢・性別などの指標を加えると精度9割以上

 研究成果を発表したのは、東京大学の新美 芳樹特任准教授(論文筆頭論者)、岩坪 威 教授らの研究グループ。アルツハイマー病は脳内に「アミロイドβ」という異常なタンパク質が排出されずに蓄積されることが原因とされているが、この状態を把握するためには、PETと呼ばれる大規模な装置で脳内をスキャンすることが必要となっており、患者だけでなく病院にとっても大きな負担となっている。また、こうした検査が必要であるということ自体が、患者に心理的な負担をかけ、検査への拒否感が残る原因ともなっている。

 研究グループは今回、認知症を発症していない国内の474人の血液検体をこれまで検討されていなかった「アミロイドβ」と「リン酸化タウ217」の2つの指標(バイオマーカー)の組み合わせで分析し、既存の検査法であるPET画像診断の結果と比較した。

 その結果、この指標による分析で、PET画像診断の結果を高精度に予測できることが分かった。つまりPET検査のかわりに血液検査を行っても、発症前から高精度にアミロイドβの蓄積を予測できることが分かったことになる。また、この2つの指標以外にも、年齢、性別、特定の遺伝子情報を加えて分析するとさらに精度が向上し、90%以上の正確性となることも突き止めた。

 研究はスウェーデンの大学の協力を得て現地の血液検体でも実施され、同様の成果が得られており、国際的にも価値の高い発見であることが強く示唆されている。

 研究グループではこの成果について、アルツハイマー病の超早期段階におけるアミロイドβの蓄積状況を血液検査で把握できるようになることで、簡便な早期診断、早期治療へ道筋となる可能性があるとしており、さらに研究を進めるとしている。

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