購入者の体験談から住宅のプロが徹底解説
株式会社一条工務店は2024年3月18日に「収納に関する意識調査」の結果を公表しました。
調査概要は下記のとおりです。
- 調査期間:2024年2月6日(火)~2024年2月14日(水)
- 調査対象:全国の男女
- 有効回答数:928サンプル
- 回答者:男性299名、女性629名
- リリース公開日:2024年3月18日
※構成比は小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計しても100にならない場合があります。
調査の結果、半数以上の方が家の収納スペースが少ないと感じているそうです。
また9割以上の方がクローゼットや押し入れの収納が使いづらいと感じていて、7割以上の方が物の量や置き場所で、家族で揉めたことがあると回答しています。
さらに収納が少ないために物を処分して後に後悔したことがある方は、実に4割以上となっています。
一般的な一戸建住宅では、住宅の床面積に占める収納面積の比率は10~15%程度といわれていて、延べ床面積が100㎡(約30坪)の家であれば必要な収納面積の目安は10~15㎡(6~9畳)程度になります。
しかし、当然収納するモノによって収納スペースの幅や奥行、高さなどが異なります。
どこに何を収納するのかをあらかじめよく考えておかなければ、スペースはあってもそれを有効活用することはできません。
また家族の趣味・趣向によっては、一般的な収納スペースの量では不足してしまうこともあります。
したがって、収納スペースを計画する際には単純に広さや形状だけを考えるのではなく、どのような物を収納して、それはどこでどんな使い方をするのかをイメージしておくことが大切です。
それを怠ってしまうと、たとえ収納スペースは余っていたとしても十分に活用できずに無駄なスペースになってしまいます。
そこで今回の記事では、注文住宅を建てて「収納」に関して後悔したことがある方の意見を紹介したいと思いますので、参考にしてみてください。
この事例は、次のような方の実際の体験談です。
【現在の年齢】40歳代~50歳代
【購入時の年齢】30歳代~40歳代
※編集部注:外部配信先では図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。
注文住宅の収納にまつわる後悔ポイント1:大きく作りすぎて手が届かない
「キッチンの収納を大容量タイプにしたが、脚立を使用しないと手が届かないため不便を感じる」
キッチンは収納するモノが多い場所なので、少しでも収納スペースを増やしたいと思う方が多いでしょう。
しかし手が届かないような高い場所にある収納スペースは、ほとんど使わないモノを収納しておく場所になりがちです。
こうしたスペースもキッチンでは必要になることがありますが、利用頻度が高いものを高所に収納する場合には、食器棚の下部が収納を兼ねた踏み台になっている踏み台付食器棚や、戸棚の中身を丸ごと手元まで引き下ろすことができる昇降式吊戸棚などがあります。
注文住宅の収納にまつわる後悔ポイント2:家族それぞれの部屋に収納を作ればよかった
「収納を一か所にまとめたが、個々の部屋にもクローゼットを設ければよかった」
家族全員の収納を一か所にまとめて収納できるファミリークローゼットがあると、各部屋のスペースを広くとることができます。
また、洗濯をして衣類を各部屋のクローゼットに収納する手間を省くことができるメリットがあります。
一方で、身支度に忙しい朝などにはファミリークローゼットが混雑してしまうので、せっかく作ったファミリークローゼットが機能せずに無駄なスペースになってしまいがち。
ファミリークローゼットは家族のライフスタイルによっては合わないこともあるので、自分たちのライフスタイルを考えた上で採用を検討することが大切です。
注文住宅の収納にまつわる後悔ポイント3:床下収納はほぼ使っていない
「床下収納は思っていたよりも使いにくく、利用頻度が低い」
床下収納のメリットは人目につかない場所に収納することができ、居住スペースを削ることなく収納を増やすことができる点です。
しかし床下に収納スペースがあるため立ったまま物を出し入れすることができず、重いものや大きなものは出し入れが大変になります。
したがって年に数回しか使わないような調理器具や瓶詰め、缶詰といった食材のほかに、カップ麺や調味料、防災用の非常食などの保管に適しています。
一方、日常的に良く使用するものや長期保存ができないものの保管には適していません。
注文住宅の収納にまつわる後悔ポイント4:リビングとダイニングにも収納を作ればよかった
「リビングやダイニングに収納スペースを設けなかったので、収納が足りなくなってしまった」
リビングやダイニングは家族が集まって過ごすことが多い場所なので、家族のモノがたくさん置いてあることが多く、非常に生活感が出やすい場所のひとつといえます。
読みかけの本や雑誌が放置されていたり、ソファーの上に脱いだ服が置いてあったりするほか、小さな子どもがいるご家庭では床の上におもちゃが出しっぱなしになっていたりしがちです。
これらのことが起きるのは、近くに収納する場所がないことが原因といえます。
毎日使うものや雑誌などであれば、たとえ本格的な収納を設けなくても壁面収納やちょっとした棚を設けることで部屋が片付き、使いたい時に簡単に取り出すことができますよ。
注文住宅の収納にまつわる後悔ポイント5:和室の押し入れを大きくしすぎた
「和室6帖の押し入れスペースが大きすぎたため、収納するものがなくて無駄なスペースになってしまった」
和室の押し入れは、間口が170cm前後、奥行きが80cm前後になっていることが多く、主に3つに折りたたんだ布団が収納できるようになっています。
しかし近年では押し入れに布団を収納することが少なくなったため、奥行きが80cm前後あっても無駄なスペースになってしまうばかりか、収納したものが取り出しにくくなってしまうことも少なくありません。
たとえ和室の押し入れであっても、事前に収納するモノを想定してプランニングすることが大切です。
住宅のプロから収納のアドバイス
住まいのプランニングをする上で収納計画は非常に重要なものですが、住み手によってライフスタイルが異なるため、収納量や収納場所については一概にどれがベストとはいえません。
また、筆者の経験上、収納は住み始めてからいろいろと不満が出てくる場所でもあります。
国土交通省の直近の調査結果によると、住宅に対して不満を感じている方の割合の合計は23.1%(多少不満20.1%、非常に不満3.0%)となっています。
動線計画やライフスタイル、家族の趣味・趣向、収納物に合わせて慎重に検討することが重要になります。
もしも判断に迷うようであれば、インターネットでの情報収集や、住宅の専門家に相談してみるのもひとつです。
本記事が、後悔のない住まいづくりのお手伝いができていれば幸いです。
参考資料
- 株式会社一条工務店「収納に関する意識調査2024」
- 国土交通省「平成30年住生活総合調査結果」