ボスネコと仲良し野良ちゃん…2頭のユニークな“主従関係”に注目してみた【ワンニャンのSOS】

ボクたち、仲良し

【ワンニャンのSOS】#63

面白いネコちゃんを診察する機会に恵まれましたので、今回はそのお話を紹介します。飼い主さんは東京と千葉を行き来されていて、千葉の自宅に出入りする半野良のようなネコちゃんグループの1頭。4歳のオスで去勢はしていません。調子が悪く、ぐったりしていたので当院に連れてこられました。

診察すると、尿路結石で尿道が閉鎖し、尿が腎臓に逆流。急性腎機能障害で重篤でしたが、入院して治療を続けた結果、回復しています。

気になったのは頬のケンカダコです。シャー、シャー、フー、フーと威嚇するしぐさを繰り返していると、頬の筋肉が厚くなって隆起した状態になります。

それがあったので、ボスネコかボスを目指すタイプかと思いましたが、お話を聞くと違うようです。

そこにはもう1頭オスがいて、2頭はとても仲が良く、くっついて寝ているとのこと。もう1頭も去勢していません。

人に懐いているネコちゃんで同腹の兄弟だと、1歳くらいまでくっついて寝ることはあります。しかし、野良ちゃんの野生集団では、ある程度性成熟すると、同腹の兄弟でも縄張り争いやボスネコ争いが起こるため、4歳まで仲良くするのはとても珍しい。

さらに続きがあって、この2頭を仕切るボスネコがいるようで、ボスネコは自宅の外から2頭を呼ぶそうで、呼び声に反応して仲良し2頭はボスに招かれるように出かけるそうです。しばらくすると遊んで満足したのか、2頭そろって帰ってくるとのこと。

■サルのような主従関係

サルのボスと子分の主従関係のような感じがします。一般にボスネコが強いうちは、弱いオスネコは寄り付きません。ネコでサルのような主従関係は聞いたことがありません。千葉に残るもう1頭は、入院中の仲良しを捜しているようです。

去勢や避妊したネコちゃんグループだと、このような行動は見られますが、繰り返す通り2頭は去勢していません。野良のネコちゃんに、このような草食系のオスがいるのは珍しい。野良ネコちゃんたちの繁殖能力が落ちているのでしょうか。たまたま今回の2頭が特殊なのでしょうか。

元気になって千葉に戻ったとき、その相棒やボスネコとの関係が乱れる可能性があるので、去勢せずに退院する予定です。都心の自宅で飼う場合は、去勢して外には出さずに、と言いたいところですが、千葉では畑が目の前にある環境で外を生活圏にして人にも慣れていて、自宅には眠るために帰るような生活スタイルですから、それでよいと思います。

(カーター動物病院・片岡重明院長)

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