手塚治虫の「火の鳥」初の絵本化 命についてのメッセージ「火の鳥いのちの物語」【しずおか産】

<下田支局 柴田寛人記者>
「上の方にも周りにも、鳥の巣がいっぱいあります。きょうのしずおか産は?」
<絵本作家 鈴木まもるさん>
「私が描いたこの絵本です」

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静岡県下田市に住む絵本作家、鈴木まもるさん(71)です。鳥の巣の研究家でもある鈴木さんは、生き物の命について日々考えています。子どもの頃から「火の鳥」などの手塚作品を読み、生命をテーマにする絵本を描いてきました。

<絵本作家 鈴木まもるさん>
「生きているものが、すっと死んでしまう。そういうことが、手塚先生の火の鳥に描いてあるんで、生き死にのことを」

漫画家・手塚治虫の代表作「火の鳥」は、時空を超えて存在する不死鳥の物語です。その血を飲んだ者も永遠の生命を得られるため、多くの人間たちが火の鳥を求めて争います。「生や死」などのテーマを壮大なスケールで描いています。

2024年4月、「火の鳥いのちの物語」として初めて絵本化されました。

<作品朗読>
「それは火の鳥です。火の鳥はなにもたべなくてもいきていけるし、しぬことはありません。火の鳥は宇宙や地球のこと、いろいろないきもののことをしっている、すべてのいのちのおかあさんのような鳥なのです」

鈴木さんが今回、絵本を描くこととなったきっかけは、2年前に出演したラジオの深夜番組でした。2023年の再放送を聞いた手塚プロダクションのスタッフからメールで連絡が入ったのです。

<絵本作家 鈴木まもるさん>
「火の鳥(連載)70周年だから、鳥の巣と火の鳥で何かこう、できるかなあ、みたいな形で。びっくりしました」

1988年に「火の鳥」の連載が終わってから、35年以上。若い世代が「火の鳥」に接する機会が減っていることに加え、描かれる壮大なドラマは、小さい子どもには難しいため、「絵本」にしてみようということになりました。

全12巻のコミック長編「火の鳥」。1冊の絵本にするために、短いダイジェスト版を作るのは困難です。メモ帳を持ち歩き、どんな絵と物語を展開するか、およそ1か月間、考え続けました。

<絵本作家 鈴木まもるさん>
「巣にいる火の鳥を描こうと思って、ラフで描き出したんです。そしたら、ここでこの絵を描いたら、自然に動物さんとか鳥さんが出てきたんですね」
「火の鳥は炎に入って、再生する。ここはよく描かれている。この後の世界って、(手塚先生は)描いてないんですよ、子どもの火の鳥が何をするかというのは。そこを描けばいいのかなと思って」

文と絵について、手塚プロと出版社から了承され、子どもの「火の鳥」が、動物たちに命の尊さを語るオリジナルストーリーが完成しました。

<作品朗読>
「みんないっしょにこの地球のうえで、げんきにいきつづけているのです。いのちはみんないっしょ、あなたひとりではないのです」

<読み聞かせの様子>
「火の鳥のところに鳥や動物がやってきます」

先日、下田市では、子どもたちに、絵本の読み聞かせを行うイベントがありました。

<小学1年生の男の子>
「動物がいっぱいいるのが、楽しそうだった。」

<小学2年生の女の子>
「(亡くなった)パパからのメッセージみたいな感じで、すごく感動した。(どんなメッセージだと思った?)自分が1人でも、頑張れば生きていける」

絵本化によって、手塚治虫の命についてのメッセージに触れる機会が増えることでしょう。

「火の鳥いのちの物語」手塚治虫原作/鈴木まもる文・絵/金の星社刊

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