未熟な生き方に光を 電気工事販売業・植田さん 短編集出版 人情ドラマ5作を収録

短編集を出版した植田さん

 伯耆町岸本の電気工事販売業、植田寿治さん(73)が短編小説集「未熟な大人と純粋な少年」を今井出版から自費出版した。方言を交えて厳しくも温かな人情ドラマを書き、さまざまな“未熟”な生き方に光を当てている。

 小説を本格的に書き始めたのは59歳の頃。米子市の作家・松本薫さんが講師を務める小説エッセー教室に14年ほど通い、年1回発行の作品集「さるびあ」で小説を発表してきた。難聴が進み昨年退会したが、これまでの活動を形に残したいと5作を選んで収録し、「うえだジョージ」の筆名で出版した。

 収録作は、実在した焼き鳥屋の記憶から米子市で居酒屋を営む祖父と孫を書いた「氷解」▽母を残して上京した新聞配達員と喫茶店主の母子を巡る「霧が晴れる頃」▽約10年前に北海道で実際に起きた吹雪による死亡事故を題材とした「春よこい 早くこい」-など。生まれ育った環境や弱さに悩む登場人物の姿を通して「完璧な人間はおらん」との思いを表現した。

 植田さんは「みんな未熟な人間だというのが作品のテーマ。ちょっとした色気も入れて『こんな生き方もあるのか』と面白く読んでもらえる小説を目指した。収録できなかった作品もあるので、ぜひ2冊目も出せれば」と話した。

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