【ロボテス構想10年】地域活性化の推進力に(5月24日)

 南相馬市と浪江町に立地するロボット・ドローンの実証試験拠点「福島ロボットテストフィールド(ロボテス)」は、施設の検討開始から丸10年を迎えた。国内産の性能向上が求められる中、企業の技術開発を後押しする役割は重要性を増している。製造現場へのロボットの投入、ドローンによる過疎地の物流網の維持など多方面の活用を探り、福島県の産業と地域社会の活性化につなげてほしい。

 県有施設のロボテスはロボット・ドローンの実験、研究開発が可能な施設として2014(平成26)年度に経済産業省の有識者会議で整備に向けた検討が始まり、2019年度に全面開所した。南相馬市の50ヘクタールの敷地にドローン飛行実験が可能な緩衝ネット付き飛行場、滑走路やヘリポート、災害現場を模したロボット試験場などがある。浪江町にはドローン用の滑走路などが設けられている。

 実証実験などの利用件数は2021(令和3)年度4751件、2022年度4781件、2023年度5115件と右肩上がりに増え、全体の7割近くがドローン関連という。現在、ドローンの国内市場の8割を中国製が占めている。経済安全保障の強化に向け、日本製の増産に期待が高まっている。一方、高性能ロボットの引き合いも強まっている。工場での人手不足は深刻化しており、生産性の向上も見据え、製造ラインの自動化が急がれるためだ。

 こうした背景から、ロボテスを管理する「福島イノベーション・コースト構想推進機構」は、製品化や高品質化を目指して施設を活用する国内企業は、さらに増えるとみている。今後は、部品発注や機器の組み立てなどの面で県外から訪れる企業と、地元企業をつなげる取り組みが一層求められる。

 県、イノベ機構と南会津町は連携し、町内の廃校で低温や降雪下でのドローンの飛行試験を続けている。町側は関連企業の立地による雇用創出、地域経済活性化に期待を寄せる。県内の自治体に対し、先端的なロボット・ドローン技術を紹介し、物流、農業、防災など幅広い分野での活用の可能性を示すのもロボテスの役割だろう。人口減少が加速する中、住民生活を維持する上での貴重な社会インフラとなる。(菅野龍太)

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