小児や思春期の過体重、甲状腺結節と関連 4年後出現率に影響

大平哲也教授

 福島医大放射線医学県民健康管理センター疫学室の大平哲也教授(59)らの研究グループが、東京電力福島第1原発事故当時18歳以下だった県民を対象にした甲状腺検査の結果を解析した結果、小児や思春期の過体重と、約4年後の甲状腺結節の出現率とに因果関係があることが明らかになった。特に女性や思春期に強い関連性が見られ、女性ホルモンや成長ホルモンの影響が考えられるという。

 医大が23日、発表した。大人の過体重や肥満が甲状腺結節の出現率を上昇させることは知られているが、子どもに対する経年的な影響は明らかになっていなかった。医大によると、追跡調査によって子どもの過体重と甲状腺結節との関係を調べた研究は世界初という。

 甲状腺検査は、原発事故後3年目までに1回目、4~5年目に2回目、6~7年目に3回目の検査が行われた。今回の解析は、3回目まで全ての検査を受けた人のうち、最初の2回の検査で5.1ミリ以上の甲状腺結節が確認されなかった18万4519人を対象に行った。3回目の検査で新たに結節が見つかった660人について、約4年前に行った1回目の検査時の過体重との関係性を調べた。

 その結果、対象者の居住地にかかわらず、過体重の人の出現率がそうでない人の1.27倍に上った。男女別では男性が1.21倍に対し女性が1.32倍、年齢群別では10歳未満が1.17倍、10~14歳が1.19倍に対し15~19歳が1.75倍で、特に女性や思春期で多く確認された。

 医大によると、甲状腺結節には女性ホルモンや成長ホルモンなどいくつかのホルモンが関係するのではないかといわれている。その中で肥満が起こることにより、肥満細胞から出される物質などが結節をつくることに関係するのではないかと推測される。大平氏は「なぜ女性や思春期の過体重が甲状腺結節に関連するのか、そのメカニズムについて今後検討する必要がある」としている。

 また、大平氏は「この研究の結果は、過体重と甲状腺がんとの関連を直接見たものではない」と前置きした上で「今後、過体重の甲状腺がんに及ぼす影響を長期的に確認する必要がある」とも述べた。

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 甲状腺結節 甲状腺にできるしこり。必ずしも甲状腺がんにつながるわけではなく、甲状腺検査では、最初の超音波検査で5.1ミリ以上の結節が見つかった場合、血液や細胞を詳しく調べる2次検査に移り、悪性が疑われる場合は細胞を採取して調べる「細胞診」が行われている。

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