おかしい…父が遺してくれた「3冊の貯金通帳」、合計〈300万円〉の残高に長女が覚えた違和感の正体

金持ちは大変だね……他人事と思っていた「相続トラブル」。しかし、裁判沙汰にまで発展するのは「遺産総額1,000万円以下」が最も多く、実は一般人のほうが相続トラブルに巻き込まれやすいというのが実情です。今回は遺産分割の話を発端にした家庭内のトラブルについてみていきます。

父の遺産は「3冊の貯金通帳」と「自宅」だというが…

――家族で盛大にトラブっている

と投稿した40代の女性。トラブルは、女性の82歳になる父親が亡くなったことにさかのぼります。女性には3歳上の兄と、4歳年下の弟の3人きょうだい。いわゆる普通のサラリーマン家庭で育ちましたが、父親の実家に暮らし、周囲の家庭のように住宅ローンの心配もなかったからでしょうか、比較的裕福な子供時代を送ったといいます。

とはいえ、両親とも堅実な性格で、派手に散財するようなことはなく、コツコツと貯蓄をしていくタイプ。そして父親は口癖のように「自分が死んだとき、少しは遺してあげられるから。決して多くはないけどな」といっていたといいます。

そんな父が倒れたのは半年前のこと。危ない状態も何度か乗り越えたものの、先日、82年の生涯を遂げたといいます。

半年近く、自宅と病院を往復し看病を続けたという女性。大変であったものの「父はよく半年も頑張ってくれました」と、しっかりと看取ることができたことに感謝しているといいます。

盛大なトラブルは、このあと。

葬儀などひと通り終わったあと。兄から遺産分割について話があると、話があり、その週の日曜日、母ときょうだい3人が実家に集まりました。そして長男が3冊の貯金通帳をテーブルに置き、「父さんの遺産は、これ(貯金)とこの家(実家)がすべて」とひと言。

女性はテーブルのうえの通帳を開き、そして違和感を覚えたといいます。3冊の通帳に記されていたのは、すべて一緒

――100万円

女性は少し違和感を覚えたといいます。父は生前「少しは遺してあげられる」と事あるごとにいっていました。「通帳3冊の残高は合わせて300万円。これがすべてというのなら、父はことあるごとに『少しは遺してあげられる』というだろうか」

兄から「通帳にある100万円を母さんと、OO(女性の名前)、XX(弟の名前)、それぞれに、この家は母さんに」と提案。兄自身は遺産はいらないというものでした。そこで、ますます違和感を覚え、

――お兄ちゃん、何か隠してない?

明らかに動揺をしている兄。問い詰めていくと、それまで無言だった母がもう1冊の貯金通帳をテーブルに。それを開いた女性は驚きました。元々1,000万円以上あった残高が、父が入院している間に引き出され、残高はわずか数千円。

――えっ、なにこれ?

疑問を口にする女性と弟。母は「わたしが使いなさいといったの」とひとこと。そこで借金の返済に充てられたこと、その借金は兄嫁が作ったもので兄が母に頭を下げたという真実が明らかになりました。

納得できないのは、女性と弟。借金の理由が単なる「浪費」というから、とても「そうですか」とはいえません。そこから話は、兄夫婦のことについて。兄嫁の醜態が次々と明らかになり、兄嫁にお金を返済させ、そのうえで離婚しろと家族全員で兄に迫るという展開に。

兄も今回の件でこりたのか、離婚に向けて話し合い中だといいます。

相続発生…「遺産はどれほど?」を明らかにするには

今回の相続では、母と3人の子供が法定相続人となり、法定相続分は母が遺産の1/2、子がそれぞれ遺産の1/6ずつとなります。

相続の際、まずは「どれだけ資産があるのか」を明らかにする必要があります。なかなか骨の折れる作業ですが、通常、書類や手紙など、亡くなった人の遺品から、財産の所在を示すものを探し、それに基づいて調査します。

【遺産の調査の仕方】

1.預金

通帳が見つかれば残高を調べ、かつ同じ銀行に複数の口座がないか問い合わせます。そのほか、口座がありそうな銀行に対しては、直接問い合わせます。

2.不動産

固定資産税の納税証明書等を確認します。市区町村に直接問い合わせると、氏名をもとに調査することが可能です。

3.有価証券、保険証券

証書等が見あたらない場合は、証券会社、保険会社からの郵便物をもとに調べます。

4.その他の債権・債務

債権については、契約書等の原本・写しがないか確認します。債務については、借用書等を探すだけでなく、支払いが滞ると、債権者からの催告書等が届きますので、それらを確認します。

出所:法テラスHP

女性の例では、相続の話がいつの間にか兄の離婚問題にすり替わってしまいましたが、万が一、ひとりでも遺産分割の方法に反対があると、ほかの人たちで遺産分割がまとまっても無効になります。また相続人全員の間で協議がまとまらない場合、家庭裁判所に対して遺産分割の調停、または審判の申立てをすることになります。

[参考資料]

法テラス『法定相続分とは何ですか。』

法テラス『相続に際し、被相続人の預金その他の資産を調べるには、どうすればよいですか。』

法テラス『遺産分割協議がまとまらない場合には、どうすればよいですか。』

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