残り3番

 のちの輝かしい足跡を考えると少し意外に感じるが、あの大横綱・千代の富士は幕内から十両への陥落を2度経験している。年季と鍛えの入った上位陣の壁の厚さを思う。角界には実力以上に地位が上がって成績が伸び悩む様子を形容する「家賃が高い」という言葉も▲さあ、家賃の具合は…と期待が半分、心配が半分。自己最高位の東前頭2枚目まで番付を上げて大相撲夏場所に臨んでいる平戸海関=平戸市出身=。ここで勝ち越せれば三役に手が届きそうだが、役力士と残らず当たる位置。相手も強い▲序盤戦は悔しい相撲が続いて黒星が先行。だが、思い切りよく前に出る取り口は変わらず、国技館を連日沸かせてきた。上位者9人との対戦は5勝4敗で乗り切る大健闘▲横綱への初挑戦は照ノ富士の休場でお預けになったが、4日目の大関・豊昇龍戦では結びの一番に登場。9日目には優勝争いのトップを走っていた小結・大の里に二つ目の土をつけ、混戦の演出にも一役買った▲昨日の対戦相手は平幕の実力者・豪ノ山。相手の鋭い出足に押し込まれながらも、しぶとく回り込んでこらえ、相手がバランスを崩した好機を逃さずドスンと押し倒した。足がよく動いていますね-と解説者▲星を6勝6敗の五分に戻して残りはいよいよ3番。応援に力が入る。(智)

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