ドラマ「VRおじさんの初恋」最終回で〝ロス〟多発 隠れた名作と評判、作者も感無量

放送したNHK

NHK「夜ドラ」枠(月~木曜深夜の15分枠)で4月から放送されていたドラマ「VRおじさんの初恋」が23日、最終回の32話を迎え、ファンの間では早くも〝VRおじロス〟が始まっている。

X(旧ツイッター)には「本当にいいドラマだった」「このクールでのドラマで1番ハマった」「こんなに心揺さぶられるとは」など、ポジティブな感想があふれている。ドラマのタイトルから、冷やかしや面白ドラマだと思って見始めたら「気がつけばどっぷりハマって」「意に反してとても良かった」という視聴者も。

物語は、さえない中年サラリーマン・直樹(野間口徹)が、セーラー服少女のアバター・ナオキ(倉沢杏菜)でログインしていた仮想ワールドで美少女・ホナミ(井桁弘恵)と出会い、生まれて初めて恋をするところから始まる。だが「ホナミ」の正体は、余命宣告され一人娘(田中麗奈)と断絶したまま死にゆく老人・穂波(坂東彌十郎)。

気持ちを抑えきれず現実世界のホナミを探し当てるも、老人と知り戸惑う直樹だが、2人は交友を深め、穂波の孤独な孫(柊木陽太)らも巻き込んで、父娘を仲直りさせようと奮闘する。VRと現実世界を行き来し直樹は変わり、距離を置いていた職場の同僚たちとも仲良くなっていく。

ドラマを見て泣いたというある視聴者は、Xの投稿でこう指摘している。「おっさんズラブ・BL・GL(ガールズラブ)・シン(グル)ママの子育て・社会の女性進出・イジメ・親子の確執・リストラ・高齢化社会・がん・会社での人間関係など挙げればキリがないほど、設定が詰め込まれているのに、見事に整理されている」

原作はウエブ漫画。作者の暴力とも子さんは、最終回を目前に「ドラマ版と原作の違い」について、文章やイラスト配信サイト「note」上で説明している。

暴力さんによれば「脚本についてはあくまで『監修っぽいチェックをさせていただいた』立場であり、基本的にはドラマ版の制作の方向性はドラマの制作スタッフさんが決めた」という。

編集が終わりドラマ完成版の出来に、原作者の立場でいかに満足しているかについても書いている。

「『原作を中心として拡張されたものがドラマ版である、と解釈することがちゃんとできる』そのようにしっかり言える内容だと思いました。なんなら、仮に原作で何か描写に食い足りなさを感じていた人がいたとして、ドラマの補足によって多くの満足を得るというプラスの可能性すらある」

日本テレビ系で昨秋クール放送されたドラマでは、脚本をめぐり制作サイドともめていた漫画原作者が急逝するという痛ましい事態に発展した。かたや「VRおじさん――」は、誰もが納得いく形での丁寧なドラマ作りが、好評を得る結果となった。

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