言葉が出てこなくても大丈夫だよ…「注文に時間がかかるカフェ」1日限定オープン 吃音の学生らが接客体験 鹿児島

接客に挑戦する鬼束倫太朗さん(左)と初田心音さん=鹿児島市の鹿児島大学

 話し言葉が滑らかに出ないことがある「吃音(きつおん)」の大学生や高校生が接客する1日限定のカフェが、鹿児島市の鹿児島大学でオープンした。その名も「注文に時間がかかるカフェ」。悩みを抱えながら接客業に憧れる若者の背中を押す取り組みで、鹿児島では初開催。学生らは「伝えることを諦めたくない。吃音への理解が広がれば」と語る。

 カフェは2021年8月に始まり、全国各地に広がっている。昨年9月の広島会場に参加した鹿児島大学農学部2年の鬼束倫太朗さん(20)が「身近な場所でやりたい」と、発起人の奥村安莉沙さん(32)=東京都=に申し出て準備を進めてきた。鹿児島大であった18日は、鶴丸高校1年の初田心音(みおん)さん(15)と2人で、事前に予約を受けた約30人をもてなした。

 「言い終わるまで待って」「緊張しているからどもっているわけではない」「他の人と同じように接してもらえたらうれしい」。2人は入店時に吃音の特性や要望を説明してからテーブルに案内し、飲み物を運ぶ。言葉が出てこなくても急がされる雰囲気はない。ゆっくりとした時間が流れる。

 客には吃音に悩む人やその家族も多く、日常での工夫や学校生活について情報交換するなど会話が弾んだ。療育に通う小学1年生の娘らと訪れた鹿児島市の堀田香菜さん(36)は「吃音の人と接する機会はあまりない。若者がカフェで頑張る姿を見て、何かを感じてもらえたら」と話した。

 初田さんはリハビリで治まっていた症状が中学2年の時に再発。向き合おうと調べる中で、カフェの存在を知った。「ここでは安心して話ができた。子どもを支えられる小児科医になる夢に向け、大きな一歩になった」と笑顔を見せた。

 宮崎市出身の鬼束さんは「自分の言葉で相手に伝えることを諦めたくない。障害や病気ではなく、話すのが苦手という一つの特徴としてとらえてほしい。吃音のある人もない人も理解し合うきっかけになれば」と期待した。

■自助グループが活動中

 吃音は言葉を流ちょうに話せない発話障害の一つで、言葉を繰り返す「連発」、言葉を引き延ばす「伸発」、言葉が出るのに時間がかかる「難発」と、主に三つの症状がある。100人に1人いるとされるが、国内では認知や理解が広がっていないのが現状だ。

 鹿児島県内では自助グループが活動している。2013年設立の「かごしま言友会」は2カ月に1回の例会のほか、不定期で交流会や研修会なども開く。当事者だけでなく家族や言語聴覚士なども参加し、年齢も幼児から70歳代までと幅広い。同会kagoshima.genyuukai@gmail.com

(別カット)接客に挑戦する初田心音さん(左)と鬼束倫太朗さん=鹿児島市の鹿児島大学

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