保険会社の50代営業課長「役職定年前に左遷」の悲劇から一転、「人事部の部長」に転職できた理由【人材開発コンサルタントが解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

労働人口が減少しつつある昨今、ミドル・シニアの転職チャンスも増えています。人材開発コンサルタント田原祐子の著書『55歳からのリアルな働き方』(かんき出版)より、50代で転職を成功させた男性の事例をみていきましょう。

大手保険会社で営業課長→成績振るわず左遷の悲劇

現在50代の野中さんは、大手保険会社に生命保険の営業職として入社しました。

入社後は成績も上々で、数年後、若くして課長になった野中さんは、「小さな地方の事業所を自分たちの力で大きくしよう!」と、チームワークを大切に、プレイングマネージャーとして活躍します。

また、部下を育てるために、いち早く「コーチング」を取り入れようと、自腹を切って高額のコーチ養成講座も受講し、よい成績で資格も取得しました。

野中さんのコーチングで、部下はぐんぐん育っていきます。

ところが、部下は売れるようになったものの、野中さん自身の成績が徐々に振るわなくなってきました。時代が変わったのか、顧客が変わったのか……。理由は定かではありませんが、実績は下がる一方で、スランプ状態に陥ってしまったのです。

そんな最中、タイミング悪く、自分と相性がよくないA氏が営業所長に就任、野中さんは総務に異動させられてしまいました。事実上の左遷です。

「国家資格取得」で異業種への転職に成功

悩んだ野中さんは、そろそろ近づく役職定年に備えて、レベルアップした、プロを養成するコーチングスクールに通い始めました。

部下指導で培ったコーチングのスキルは、スクール生の中でも目立ちます。また、国家資格のキャリアコンサルタントの資格も取得し、そろそろ転職を考えようとしていた矢先、同じコーチングスクールの受講生から声をかけられます。

「うちは教育研修会社なのですが、人事部に部長として来てもらえませんか? コーチングをサービスとして定着させたく、コーチングに明るい方を探していたのです」

その受講生は人事担当の執行役員で、野中さんに白羽の矢を立てたのです。

二つ返事で転職した野中さんは、今まさに、保険業界のクライアントに対して、コーチングの指導をしています。彼の知識・スキル、才能を最大限に活かした素晴らしい転身の事例です。

「監督タイプ」と「選手タイプ」…自分はどちらの人材か

野中さんは、自分が従事している「仕事そのもの」ではなく、その仕事を「教え、コーチングするスキル」で、予想外の力を発揮しました。

人材には「監督タイプ」と「選手タイプ」という2つのタイプがある

たとえば、野球を例にすると、「選手」としてバッターやピッチャーとして素晴らしい力を発揮する人がいる一方、選手としては成績はパッとしないが、「監督」として選手とチームの力を引き出すのが上手い人がいます。

野中さんは、まさに「監督」タイプ。そして、自分も過去には実績を上げ課長にまで昇進した人ですから、保険の売り方のイロハはきちんと押さえており、監督の条件としては申し分なく、野中さんの知識もスキルも思う存分発揮できるはずです。クライアントもさぞ喜んでおられることでしょう。

田原 祐子
人材開発コンサルタント/ナレッジ・マネジメント研究者

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