東大医学部6年生が貫いた12年間の文武両道 塾なし現役合格、勉強も部活も「両方やったら人生が豊かに」

男子2部・砲丸投げに出場した東大・渡辺健太【写真:中戸川知世】

陸上・関東インカレで輝いた選手たち 男子2部・砲丸投げ/東大・渡辺健太(6年)

9日から4日間、行われた陸上の第103回関東学生競技対校選手権(関東インカレ)。2年ぶりに国立競技場で開催された熱戦を取材した「THE ANSWER」は文武両道で部活に励む選手や、怪我や困難を乗り越えた選手など、さまざまなストーリーを持つ学生を取り上げる。今回は男子2部・砲丸投げに出場した東大・渡辺健太(6年)。現役で理科二類に合格し、医学部に進んだ。外科医志望する大学6年生に文武両道を貫いてきた理由を聞いた。(取材・文=THE ANSWER編集部・山野邊 佳穂)

春の太陽が降り注いだ日本大学陸上競技場。国立競技場ともう一つ開催された会場の投てきサークルに、医師を目指す東大生の姿があった。

淡青のユニホームをまとった渡辺が渾身の力投。結果は11メートル57の13位だったが、大学6年生にして最初で最後の関東インカレに「投てき自体は上手くいかなかったけど、出場する目標は達成できた」と充実感たっぷりに汗を拭った。

広島の公立進学校・基町高から現役で東大理科二類に合格した。塾には通わず、参考書を使って独学で勉強。大学2年時の進学選択で医学部を選んだ。そんな渡辺にとって不可欠だったのがスポーツ――。

「勉強ばかりだと気がめいっちゃう。どっちも楽しいし、両方やることで切り替えができる」

東大病院で8時間程度の実習を行いながら、毎日3時間練習し、大会に備えた【写真:中戸川知世】

中高6年間は陸上に打ち込み、大学入学後は「チームスポーツをやってみたかった」とアメフトサークルに入部した。4年生で引退し、6年制の医学部で大学生活は残り2年。高校時代には全国高校総体(インターハイ)出場にあと一歩届かず、心残りがあった陸上に再挑戦を決めた。

東大を目指した高校時代も、医学部に在籍した大学時代も勉強と部活に全力投球。東大病院で8時間程度の実習を行う現在も、毎日3時間練習し、大会に備えた。

「行き詰まった時に別のことをやるのは大事なこと。逃げだと思わずに両方やったら人生が豊かになる。2つ突き詰めてみるのも良いのではないかな」

高校時代には絞り切れなかった将来。「医者は直接的に人の役に立つ仕事だと思う。人を助けて感謝を伝えられるというのはやりがいになる」と進むべき道も定まった。自身も肉離れやオスグッド病の経験がある。だからこそ、医師のやりがいも感じている。

現時点では外科志望。文武両道を貫いた学生生活を「やりたいことに向き合ってきただけ」と謙虚に表現する東大生は、人を救うべく邁進する。

THE ANSWER編集部・山野邊 佳穂 / Kaho Yamanobe

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