『ヒーローではないけれど』チャン・ギヨン&チョン・ウヒが結婚へ キスで着火する恋心

Netflixで配信中の『ヒーローではないけれど』が好調だ。本作は、チャン・ギヨン&チョン・ウヒ主演で、現代病にかかった超能力一家を描いたファンタジーラブロマンス作品。配信後より日本のNetflixランキング、グローバルランキング共にベスト10入りを果たしている。本稿では第5話、第6話を中心にご紹介したい。(以下、ネタバレあり)

物語は、超能力一家のポク家がチョン・ウヒ演じるト・ダヘと偶然の出会いを果たしたところから始まった。ポク家は先祖代々能力を受け継ぐ超能力一家なのだが、家族はそれぞれ現代病にかかって超能力を失くしていた。

チャン・ギヨン演じるポク・ギジュは、幸せな時に戻ることのできるタイムトラベル能力を持つが、うつ病にかかり、幸せを感じられなくなっていた。ギジュの母であり、ポク家の当主マヌム(コ・ドゥシム)は、夢で未来を視る“予知夢能力者”だが、不眠症で夢を見ることができず、長女のドンヒ(スヒョン)は飛行能力を持つも、肥満で飛べなくなっているありさまだ。ギジュの娘イナ(パク・ソイ)もまた、目を見ると人の心を読むことができる能力を持っていたが、家族には秘密にし、分厚い眼鏡をかけて心を読めないようにしていた。ポク家の人々は、超能力を活かしてヒーローとして活躍するのではなく、それぞれが抱える悩みに苦しんでいるのだ。

そんなある日、ダヘとの出会いでポク家の面々は超能力を取り戻す。ダヘを気に入ったマヌムは、ダヘとギジュを結婚させようとダヘを家に同居させる。一方のダヘは、亡き父の借金を返すために詐欺一家の養女として、結婚詐欺を繰り返しており、ギジュを騙してポク家の財産を手に入れようとしていたのだった。

ダヘは、ギジュのタイムトラベル能力を利用して、「未来のギジュが、ダヘに婚姻届を持ってきた」とギジュを騙して婚姻届を渡す。ギジュは、「愛することが先だ」とダヘを愛せるかを試すために、彼女にキスをする。突然のことに驚くダヘだが、ギジュは彼女にキスをしてから、その瞬間へと何度も繰り返しタイムトラベルをして自分とダヘのキスを見に行ってしまい、そんな自分に愕然とする。キスでギジュとダヘの恋心に火がついたようだ。

ギジュとダヘの婚姻届がポク家の知るところとなり、ポク家とダヘの養母イルホン(キム・クムスン)は顔合わせをする。イルホンの前科を知ったポク家は、ダヘのことを調べることにする。一方のダヘは、超能力を持つギジュたちに自分の詐欺がバレないかとヒヤヒヤしていた。

ダヘは、ギジュの娘イナの様子がおかしいことから、イナが学校でいじめに合っていると思いイナに話をする。しかし、イナはダヘの心を読み、ダヘが詐欺師であることを知っているとダヘに告げ、ギジュに話すなと口止めをする。

ダヘは、イナの学校で手違いから倉庫に閉じ込められてしまい、13年前の火事のフラッシュバックでパニックになってしまう。そこへギジュが現れ、ダヘを助け出すのだが、ダヘは13年前に自分を助けてくれた人とギジュの共通点を思い出す。ダヘの学生時代のトラウマが明かされ、ダヘも過去にいじめを受けていたためイナの状態に気づいたことや、火事から助けてくれたのがギジュであることを予感させる展開となった。

ダヘは、ギジュのことを知るほど彼に惹かれていき、その一方で詐欺をすることに葛藤する。そんなダヘの姿を見たイルホンは、ホン家の詐欺から手を引いてもいいと話す。一方のギジュもまた、タイムトラベルを繰り返しながら、ダヘの自分に見せていない姿を知り、彼女にどんどんと惹かれていく。

ダヘがホン家から去ったことで、ギジュのスイッチが入り、ギジュが立ち直っていく。暗く締め切ったままだったカーテンを開けて、陽の光を部屋に入れて大量の酒ビンを捨てて部屋を片付ける。さらに朝から運動し、イナの朝食も作り、ダヘの義母の営むサウナに通ってダヘの気を引こうとする。

ダヘは、ホン家の超能力によって、全てを見透されることに恐怖を感じながらも、ギジュとの結婚式の日を迎える。予知夢によって結婚式がどうなるかを知っていたマヌムは、ギジュに意味深な言葉を投げかける。ダヘは、式前にギジュの父スング(オ・マンソク)から、ギジュの過去を聞かされる。スングは、ギジュが過去に引き戻されて苦しんでいたことを明かし、「今度希望を失ったら立ち直れないでしょう」とダヘに告げた。

物語の初めから、ダヘはギジュを騙すつもりで近づいたが、ギジュを知り彼に惹かれていく中で、葛藤するようになる。そこにとどめを刺すように告げられたスングの言葉によって、ダヘは全てを明かしてしまうのだが、ギジュは一体どうなるのだろうか。ギジュのタイムトラベルの中で、唯一救える人であるダヘに、ギジュは希望を見い出し、彼女との結婚を決意したのだ。その彼女が自分を騙していたことを知ったあと、彼はどういう選択をするのだろう。

ギジュとダヘとの関係性だけでなく、ダヘを中心にギジュと娘イナとの関係の再構築も気になるところだ。拠り所がなく、能力のことを家族に秘密にしているイナ。ジュヌ(ムン・ウジン)との淡い初恋など、思春期の悩みもふまえて彼女の笑顔が見られることを願っている。

さらに、チャン・ギヨンが演じるギジュが、うつ病から立ち直り始める様子からも目が離せない。虚ろで終始気だるげな様子から、目に光が灯り、カッコよさが増した上、コミカルな様子も見せ始めた。過去にトラウマを抱えるダヘを好演しているチョン・ウヒとのケミも良く、ダヘとギジュを中心に、ポク家が現代病を克服して超能力をイキイキと使えるようになることを期待している。

全編を通じて、フランス映画を思わせるようなオシャレでアンニュイな音楽も物語を輝かせており、何度も同じ場面に戻る場面もあわせて、不思議な雰囲気が漂う“ヒーローではないヒーロー”ドラマとなっている。

ギジュが、繰り返し戻ってダヘとのキスを覗き見る姿は、お気に入りのドラマのキスシーンをリピートして見ているドラマファンのようでコミカルで面白い。妻の死後、幸せを感じることができなくなっていたギジュに、再び「幸せな時間」が流れ出したようだ。
(文=にこ)

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