休むことに罪悪感があるあなたへ…「疲労で休む」のは、実は〈生産性が最も高い〉働き方だと言えるワケ【医学博士が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

「会社を休むのに罪悪感がある」という人は多いでしょう。しかし、実際に生産性が高いのは“遠慮なく休める環境”なのだと、医学博士、また日本リカバリー協会代表理事でもある片野秀樹氏は言います。日本の変わるべき“休暇のあり方”について見てみましょう。片野氏の著書『休養学: あなたを疲れから救う』から一部抜粋して紹介します。

「休むときはしっかり休む」へ発想を変えよう

こういう時代には、私たちの意識改革も必要になってきます。

もし自分の会社が勤務間インターバルを実施したら、次に仕事に就くのは終業から11時間後ですから、仕事が残っても明日早く来てやるわけにはいきません。限られた時間以内に与えられた仕事を終わらせなければ、自分の評価にもかかわってきます。おのずと、「できるだけ生産性を高めよう」という発想になるはずです。

生産性を高めるためには、自分の能力を100%発揮しなければいけません。「出社はしているけれど、ボーッと机に座っているだけ」というようなことは許されなくなってきます。

このように、日本の職場も「働くときは集中してがんばるけれど、休むときはしっかりと休む」という発想に変わっていくのではないでしょうか。

適切な例ではないかもしれませんが、LGBTQなど性的少数者の方々はこれまで、周囲につらく当たられたりしたことがあったと思います。しかし最近は社会全体の理解が進んできて、そのようなことは減る傾向にあります。

休むことに関しても、社会の理解が深まれば、さぼりやなまけと思われることも少なくなるのではないでしょうか。

「疲れたときは遠慮なく休める社会」にするためには、まず会社の経営者や上層部の意識が変わる必要があります。総務や人事など管理部門の休養リテラシーを上げることも必要ですし、50人以上の企業なら産業医や産業保健師がいるので、そういった方々にはぜひ休養についてより理解していただきたいと思います。

疲労で休むのは仮病ではない

私は「休むことに罪悪感がある」という人にいつもいうのですが、休むことは、なまけではありません。繰り返しますが、疲労とは活動能力が低下している状態です。健康なら出せるパフォーマンスが100%出せない状態が疲労です。そのせいで休みたいのであれば、それは仮病とはいいません。

もし疲れていないのに休みたいというなら、それは仮病かもしれません。あるいは、いじめなどほかの問題があるか、別の病気かもしれません。しかし明らかにパフォーマンスが落ちているのであれば、それは仮病ではないのです。

これまで、私たちは疲れていても、それを無視して無理をするのが社会人としての責任だと思ってきました。しかしこれからの時代は、疲労をこまめに感知してこまめに対策を打ち、疲れていないベストな状態で仕事をするのが、社会人としての責任ではないでしょうか。

それでも生真面目な人は「休んではいけない」と思うかもしれません。そんなときはこんなふうに考えてみてください。

「会社は100%のパフォーマンスが出ることを期待して自分と雇用契約している。70%とか50%のパフォーマンスしか出せないのに出社するということは、契約の不履行になりかねない」

100%のパフォーマンスを前提に契約しているのに、50%のパフォーマンスしか出せなければ、会社からすればむしろ損失になっているわけです。

それよりは有休を消化してでもしっかり休みをとり、100%のパフォーマンスが出せる状態で会社に行くことが、会社のためにもなる。こう考えれば、休むことへの罪悪感も払拭されるのではないでしょうか。

皆さん一人ひとりの新しい「休み方」が、日本を変えていく――私はそう信じています。

片野秀樹

日本リカバリー協会代表理事

博士(医学)

© 株式会社幻冬舎ゴールドオンライン