まずは家庭から生理の話をオープンに! 女性の生きづらさを知ると社会や家庭、男性の生きづらさの解消にも。専門家4人が対談【後編】

By FYTTE 編集部

一般社団法人日本フェムテック協会(以下、日本フェムテック協会)が2023年2月14日から「ランチタイムウェビナー」をスタート。それに先立ち、オンラインで1月31日に特別プログラム「actcoin(アクトコイン)×日本フェムテック協会 トークセッション」が開催されました。 テーマは「フェムテックとソーシャルアクションで未来を創ろう!」。日本フェムテック協会理事の山田奈央子さんを進行役に、同協会理事で女性泌尿器科医の関口由紀さん、同協会顧問でソーシャルアクションカンパニー株式会社取締役の石川淳哉さん、ソーシャルアクションカンパニー株式会社actcoin運営チームの堀井祥子さんが登壇。その様子を2回に分けてレポート。後編の今回は、「フェムテックとソーシャルアクションで未来をつくろう」というテーマでの対談です。

自分のつらさを言葉にすることも社会をよくするひとつのきっかけに

イライラしたり、落ち込んだり、感情をコントロールできないのはホルモンの変動。人に当たってしまったりすることを「感情失禁」というが、中期的に見ると、自分にとって損。第三者の自分を作って、折り合いを作るということを習慣づけることが生活を楽しくするポイント。

山田:女性って、体調が悪かったりしてもアクションを起こせていないことがすごく多いと思うのですが、関口先生は医師の立場からどう思われますか?

関口:私自身もそうですけれど、若いときって「こんなつまらないことを男性に言っても仕方ないな」と思って、言わないでガマンしていることがすごく多い気がします。それで結局、更年期になったときに、つもりにつもった不満をガーッと言ったりするから相手との関係性が崩れたりするんですよね。もっと早いうちから、女性同士で話しているような不満を、男性にも少しずつ言っていかないとダメだと思いますね。
相手に言わないで「この人に言ってもダメ」「どうせわからない」と思っているところがあるので、男性側もちゃんと受け入れないと。言葉にしないと伝わらないですよね。セックスに関しても、して欲しいことを夫婦間で言い合わないと(笑)。日本人って言葉に出すことがヘタな民族だと思います。

山田:声に出せなくてつらい思いをするのではなく、まず身近なところから話す、声をあげる、アクションを起こすというのも第一歩ですよね。ほかにも、たとえば、病院になかなか行けなくて「なんでこんな状態になってから来たの?」というようなケースはないですか?

関口:情報格差があるように感じますね。人口の多い地域は軽症で来る傾向があるけれど、人口の少ない地域だと「こんなにひどくなってから来るの?」という人が多い印象があります。これからだと思うのだけど、医療の場の情報をもっとネットから得るとか、あとは、電車で1~2時間の医療機関に出かけるくらいの行動力が必要かなと思います。医療機関の情報は、けっこうたくさんあるんですよ。でも、医療機関と国民がうまくつながっていないなと思います。

堀井:まだまだタブー視されていたり、あまり人に言えないと思って話題にできなかったりして、なかなか情報が得られていないということもあるのかなと思いますね。もっと対話が進んで知識が増して、みんなで話題にできたり、情報が得られると、友だちが「早めに病院に行ってみたら」と言ってくれたりとか。そういうのも医療機関にアクセスするきっかけになっていくのかな、とは感じますね。

山田:倒れたり、本当に痛くてガマンができないといった状態にならないと、アクションを起こしにくいですよね。でも私は、そのアクションがソーシャルにつながっていくと思うと、アクションの意味合いが変わってくるんじゃないかと思うんですよね。もちろんそのアクションは自分のためではあるけれど、それが社会をよくすることにもつながるという視点に置き換わると変わっていけるのかなと思います。

フェムテックの現状とは?まずは家庭で話すことからスタート

山田:よく受ける質問なんですけど、フェムテックに関する課題って何だと思いますか?

石川:難しいですけどね。知り合いから聞いた話ですが、男子高の高校で行ったフェムテック講座で、みんなで対話会をしたら、男子高校生たちが「なんで小学校のころから知らなかったんだろう。知っていれば女子、お母さんや妹、友だちにもやさしくできたと思う」「性的なことをすべてエロに結びつけていたけど、こんなに真面目なコミュニケーションの問題なんだということがわかった」と言っていたそうです。

彼らの感想を聞いて、すばらしいなと思ったんですよね。彼らが交際や結婚したときに、この情報はきわめて大切だと思う。だから、アクションは増えてきているけれど、効果的な行動をもっともっと僕らは増やさないといけないんじゃないかなと。その際、「これに参加した」という積み重ねが可視化されるというのはとても大きいと思っていて、それがactcoinなんですよね。actcoinで自分がいつどこで何に参加した、というのが記録に残る。人間って褒められないと動かないじゃないですか。だから、自分で自分の記録をとって、自分で褒めていく流れを作っていければいいなと思っています。

堀井:可視化することで、自分が意外と一定の課題にしかアクションできていなかったといったことに気づけると思うんです。今まであまり関心がなかった課題や、知るきっかけがなかった課題にも、actcoinを眺めるだけでパッと目に入ってきたりするので身近に感じられます。いろいろな課題に接することで、じつはすべてがつながっているということも体験としてわかってくるような気がします。

山田:フェムテックって、じつはSDGsのゴール5「ジェンダー平等を実現しよう」というところに包括されるんですよね。「えっ、そうなんですか」っていう男性がけっこういるのですが、そういったことを知るというのはフェムテックが浸透するうえで大事なことだと思いますし、自分のアクションが可視化されることで「フェムテックがゴール5なら自分ももうちょっと貢献しなきゃ」とわかりやすくなるのはいいと思いますよね。

関口:私はポスト更年期の専門家なんですけれど、女性専門クリニックというと、男性は若い女性ばかりが対象だと思っているんですよね。実際は中高年なんですよ。ポスト更年期は40年もあるので、そういうところから意識を変えていかなきゃいけない。女性に対するイメージがせますぎる気がするので、そこをどんどん広げていきたいなと思っています。

山田:そうですよね、人生100年時代においてポスト更年期のほうが長いので、そこをどうケアするか、若いときからどう自分が取り組んでいくかによって、そのあとの自分の健康状態や生き方が大きく変わってきますよね。そこを知っておくことって本当に大切ですよね。

関口:ただ、男性に対しての偏見もたくさんあります。「男性はこういうものだ」というふうにみんな思いがちだけれど、フェムテックがもっと広がっていけば「男性はこうだ」みたいなことも減ってきて、もっとみんなの行動が自由になっていくんじゃないかな。

石川:僕からしたら、たとえば、パートナーの「ホルモンバランスが崩れていて、機嫌が悪くなるぞ」という不調の予測が見てわかるような、グーグルグラスみたいなデバイスがあったらうれしいんですけどね。

関口:男性の更年期もあるので、男性も女性もお互いにわかるといいよね(笑)。

堀井:女性の生きづらさを知ることで社会や家庭がよくなっていくのではないかというお話がありましたけれど、女性の生きづらさが解消されたり、仕事がやりやすくなったりすると、男性の生きづらさも解消されていくんじゃないかと思います。今はまだ「男性ががんばる」という考えが強くあるので、そこを分け合うことでどちらも生きやすさを得られるのではないかと思います。

石川:僕は、名前、呼び方が重要なんじゃないかと思っているんですよ。「フェムテック」というと、テクノロジーのイメージが強いと思うんです。かといって「ウーマンヘルスリテラシー」だとちょっと長い。短くして「フェムテラシー」がいいんじゃないかと思っています。みんながそこに向かってビジネスを作りやすいゾーンをきちんと作ることも大切。入り口を作る作業を誰かがしなきゃいけないと思っているのですが、まだ考え中です。

堀井:それでしたら、フェムテラシー第一歩という感じで、ぜひ家庭で生理の話などを普通にしていくといったところから挑戦してもらいたいなと思います。私の家庭ではかなりオープンに話しています。娘が中学生ですが、はずかしいという感覚は持っていなくて、学校でも話すそうです。男子からの気づかいもすごく感じるそうで、いい循環が起きてるなと思います。ぜひみなさんも、家庭の中で生理の話をしてみるといったアクションから、フェムテラシーを上げる挑戦をしてみてほしいですね。

山田:まず家庭からって、すごくいいですよね。私は息子が2人いるのですが、息子たちがナプキンを買ってきてくれるような家庭にしていきたいなと思っています。まだまだこれから修業が必要ですけど(笑)。まずはフェムテラシーを上げることが大事ですよね。

このランチタイムウェビナーは、毎週火曜日12時から開催されています。忙しくて、自分と向き合って自分の健康のことを考える時間をなかなかとれないという人も、この30分間のランチタイムウェビナーを活用して自分と向き合い、フェムテラシーを上げる時間にしてみてください。
FYTTEでのレポートも続けていきますのでお楽しみに。

【登壇者】
山田奈央子 日本フェムテック協会代表理事、シルキースタイル代表取締役。

関口由紀 日本フェムテック協会代表理事、女性医療クリニックLUNAグループ理事長、女性泌尿器科医師。

石川淳哉 日本フェムテック協会顧問、ソーシャル・グッド・プロデューサー、一般財団法人ソーシャルアクション財団代表理事。

堀井祥子 ソーシャルアクションカンパニー株式会社actcoin運営チーム。フリーペインター、写真家、エシカルファッションの販売を経て、2019年からactcoin運営スタッフ。

【クレジット/協力】
一般社団法人 日本フェムテック協会 スペシャルコンテンツ
https://j-femtech.com/special_contents/

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文/小高 希久恵

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