不登校経験の大学生 恩師の言葉で教員志す 「次は自分が助けたい」 長崎

模擬授業で生徒の答えに笑顔を見せる土山さん=長崎市、こころ未来高長崎本部校

 中学時代に不登校を経験し、長崎県内唯一の広域通信制高校に進み、教員を志すようになった大学生がいる。こころ未来高長崎本部校(長崎市愛宕3丁目)の卒業生、土山純可さん(21)=九州女子大4年=。きっかけは恩師の言葉だった。現在、母校で教育実習に励み、「次は自分が困っている生徒を助けたい」と思いを膨らませる。
 21日、土山さんは3年の学級で約20人に小説「山月記」を教え、生徒の答えに「正解です」と笑顔を見せた。文学国語の模擬授業。終了後「(内容が)伝わったと思ってうれしかった」と語りつつ、「説明の時間が長かった」と反省していた。指導役は1、3年時の担任、福田光芳教諭(72)。「積極的に誠実に取り組んでいる」と目を細める。
 土山さんは中学時代、教室に入るのが「嫌だな」という気持ちに襲われ、休むように。2年時はほぼ自宅学習。3年になり進路に悩んでいた時に同校を知り、夏休みにオープンスクールに参加した。
 手伝う生徒が教員と和気あいあいとした雰囲気で「良い距離感だな」と進学を決めた。週4日のコースに通い、友人もできた。だが「自分から話しかけるのは苦手」な性格。2年の時、友人関係で悩み、1人で過ごす時間が増えた。
 相談に乗ってくれたのが部活動の顧問だった当時の担任。「クラスにいるのはその子だけじゃない。いろんな人と話してみたら」。その言葉に背中を押され、自分から話しかけてみると新たな友人ができ、3年の時は生徒会長も務めた。「狭い考えしか持っていなかった。先生のおかげで視野が広がった」と感謝する。
 卒業後はネイリストになろうと考えていたが、「先生の言葉で生徒は変わることができる。そういう先生になりたい」と大学受験を決意。授業で文学に触れ、「人の心理や生き方が描かれ、読めば読むほど深い」と感じ、高校の国語の教員を目指すことにした。
 大学では中学から始めたバドミントンを続け、母校の教員になることを目標に勉強。卒業論文は不登校の生徒の社会的自立に向けての支援をテーマに取り組む。「自身の経験も踏まえ、生徒自らが決め、主体的に目標に向かって行動できるにはどうしたら良いか研究したい」と語る。
 教育実習は24日まで約2週間。生徒のやる気を引き出す雰囲気づくりなど教員に必要な多くの気付きを得ている。「生徒が楽しめる授業をしたいという気持ちが実習前より強くなった。生徒のちょっとした変化に気付けるような先生になりたい」。母校の教壇に立つ日を夢見る。

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