「警察を装う特殊詐欺が横行 番号を偽造し『0110』から着信…ビデオ通話で偽の「逮捕状」見せる手口も

特殊詐欺の新たな手口として、警察署などで多用される“末尾「0110」”の番号から電話がかかってくる事件が発生。愛知県内では去年11月以降、3件の被害が確認されていて、警察は「我々がお金を要求することはない」と注意を呼び掛けている。

見知らぬ番号からの電話で始まることの多い特殊詐欺

警察庁によると、2023年、全国で認知された特殊詐欺は、過去10年で最多となる1万9033件で、被害総額は約441億円に上る。 そのうち愛知県では、特殊詐欺による被害総額は27億7800万円にも上り、おととし(2022年)と比較すると、7億円以上も増えている。 見知らぬ番号からの電話で始まることの多い特殊詐欺。 去年11月、名古屋市内に住む60代男性の携帯電話に1本の電話がかかってきた。 電話の主は「情報通信局の職員」をかたる男で、「あなたの携帯電話が北海道で『オレオレ詐欺』に使われた」と説明を受けたという。 続いて、「北海道警の捜査2課の警察官」をかたる男から電話があり、「8000億円の詐欺事件の犯人である、銀行員と警察官を捕まえた」との話が…。 さらに「逮捕したらあなた名義の口座が出てきて、容疑がかかっている」と突然、男性自身が逮捕されることを匂わせるような話を切り出されたという。 そのあと、電話をかけてきたのは、「札幌地検の検察官」をかたる男。「『優先調査』を使えば、逮捕はされない。そのために『調査費用』が必要。」などと話をされて、男性はLINEでのやり取りに誘導された。 最終的に、男性は指定された口座に500万円以上を振り込んでしまった。

電話の末尾が「0110」

もちろん男性が逮捕されるという話は、うそだった。男性が、うその話を信じてしまった要因は、言葉巧みな誘導と脅し文句だけではない。 実は、男性のもとにかかってきた電話の末尾が「0110」だったのだ。 多くの警察署では、この“末尾「0110」”の電話番号を使用されている。 男性のもとには、計3回の電話があったが、そのうち「北海道警の捜査2課の警察官」をかたる男と「札幌地検の検察官」をかたる男の電話番号の末尾には「0110」と表示されていた。 一方、不審な点としては、番号の先頭に「+1」と表示がされていて、これはアメリカからの着信を示す番号だ。 去年12月、愛知県内の60代の女性や、今年2月、30代男性の携帯電話にも同様に末尾が「0110」と表示された番号から電話があり、同じように「警察官」をかたる者から、逮捕される可能性をほのめかされ、それぞれ1200万円以上と約600万円をだまし取られた。 愛知県では、去年1月から現時点で、末尾「0110」の番号が表示された電話からの特殊詐欺被害は3件確認されていて、警察は、何らかの方法で電話番号の表示が偽造されたものとみて、詐欺事件として捜査を進めている。

「ビデオ通話」を通じて行われたケースも

新たな詐欺の手口は、電話番号の偽造だけではない。 警察官のなりすましが「ビデオ通話」を通じて行われたケースもある。 「逮捕された振り込め詐欺の犯人が反社会的勢力で、あなたもその共犯者として疑われています」 5月9日、名古屋市千種区に住む30代の男性は、かかってきた電話でこのように説明されたという。 電話先の男は自らを「愛知県警の警察官」と名乗ったあと、男性をSNSのあるアカウントに招待。 アカウントの名前は「捜査本部」だった。 男性はSNSを通じて、「愛知県警の警察官」を名乗る男とビデオ通話をすることに。 やり取りの中で、男が提示してきたのは『警察手帳』と『逮捕状』。 もちろん、これらは偽造されたものとみられているが、動画で身分証と捜査書類を見せられた男性は、相手が警察官であると完全に信じ込んでしまった。 さらに、このあと栃木県警の警察官や、検察官に引き継がれ…… 「お金の流れを調べたいので、お金を振り込んでください。容疑が晴れれば返金します」と案内されたという。 “捜査”に協力しようと、男性は指示通りインターネットバンキングから、指定された口座に現金61万円を送金してしまい、だまし取られた。

「警察がお金を要求することはありえない」

愛知県警によると、県内でも3月以降、同様の手口ですでに10件の被害が確認され、その総額は約2300万円にのぼるという。 警察は「警察がお金を要求することはありえない」、そして、「警察手帳や捜査書類を見せることもないし、連絡方法として使うこともない」などと、注意を呼びかけている。

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