自転車でも“一時停止違反”で「懲役」や「罰金」の可能性があると聞きました。正直「たかが自転車なのに」と思ってしまうのですが、そんなに重い罪にはなりませんよね…?

自転車で一時停止しないときの罰則は3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金

自転車は軽車両に該当し、原則として車と同じルールが適用されます。

一時停止については道路交通法第43条で、「車両等は、交通整理が行われていない交差点又はその手前の直近において、道路標識等により一時停止すべきことが指定されているときは、道路標識等による停止線の直前で一時停止しなければならない。」と規定されています。「車両等」となっているので、自転車(軽自動車)も例外なくこの条項を守らなければなりません。

罰則については、道路交通法第119条に「3ヶ月以下の懲役又は5万円以下の罰金に処する」旨が規定されています。つまり、自転車で一時停止を無視すると懲役または罰金刑が科され、前科がつく可能性があるのです。

車には青切符がある

当然自動車でも道路交通法第43条と第119条が適用されますが、車の一時停止違反のみで懲役や罰金という話は聞いたことがありません。理由は車には「交通反則通告制度」、俗にいう青キップの制度があるからです。

交通反則通告制度とは、「運転者の反則行為について、法令で定められた比較的軽微な反則行為については、一定期間内に反則金を納めることにより、刑事裁判や家庭裁判所の審判を受けずに事件が処理される」ことをいいます。

一時停止等違反の場合は、交通反則通告制度で処理されることが多いので2点の反則点数と7000円の反則金(普通車の場合)が実質的な罰則だと思われがちです。しかし、車の一時停止違反等であっても懲役・罰金が科される可能性があることは知っておきましょう。

なお、自転車にも青キップの取締りを導入するという道路交通法の改正案が閣議決定されたため、成立すれば2026年までに実施される見通しです。

実際に自転車の一時停止違反で取締りを受けたらどうなる?

自転車で一時停止等違反を犯し取締りを受けた場合、取締り現場で赤キップと供述調書の作成が行われ、違反日の概ね20日後に出頭しなければなりません。そこで警察と検察官の取り調べを受けます。検察官が起訴した場合は裁判にかけられ、有罪の判決が出た場合には前科がついてしまいます。

2023年は5月末までで、警視庁交通部では7000件以上の自転車違反取締りを行っており、うち約25%が一時停止違反によるものです。つまり、いつ取締りを受けてもおかしくありません。

検察官の判断で不起訴処分となれば罰則はなく前科もつきません。自転車での違反、特に初犯の場合は不起訴処分となることがあるようです。ただし自転車でも違反を犯すと裁判にかけられ前科がつく可能性がある、ということを知った上で自転車に乗る必要があるでしょう。

3年間に2回以上の取締りを受けると講習受講義務が発生

自転車の違反行為を繰り返した場合、自転車運転者講習の受講義務が科せられます。具体的には「自転車を運転して信号無視等の危険行為(15類型)を行い、交通違反として取締りを受けた、または、交通事故を起こして送致された者で、3年以内に違反・事故を合わせて2回以上反復して行った場合」です。

危険行為(15類型)には一時停止違反も含まれます。自転車運転者講習の所要時間は3時間、受講費用は6000円です。なお自転車運転者講習受講命令書を交付されてから3ヶ月以内に受講しないと、5万円以下の罰金が科されます。

自転車による交通違反を繰り返すと、講習受講という実質的な罰則を受けることになるという点にも留意しましょう。

自転車でも人の命を奪う可能性がある! ルールを守ることが大切

自転車は軽車両であり、自動車と同様に道路交通法のもと厳格なルールが定められています。理由は自転車のルール違反が重大な事故につながるからです。

自転車での交通違反は事故に巻き込まれ自分が大怪我するだけではなく、他人を大怪我させる、場合によっては死に至らしめる可能性も秘めています。だからこそ、違反を犯したときの罰則は決して小さくなく、場合によっては懲役・罰金刑につながることを知っておく必要があるのです。

2026年には自転車にも青キップが導入され、自転車の取締りが強化されることが予想されています。一時停止だけではなく、自分の自転車の乗り方がルールに沿っているかどうか、この機会に見直してみてはいかがでしょうか。

出典

e-Gov法令検索 道路交通法
警視庁 反則行為の種別及び反則金一覧表
警視庁 交通違反の点数一覧表
警視庁 自転車違反取締りの現状
警視庁 自転車運転者講習制度

執筆者:浜崎遥翔
2級ファイナンシャル・プランニング技能士

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