実質賃金2年連続マイナス…“恩着せメガネ”岸田首相が必死「減税」アピールも裏目しか出ず

たった1回の「減税」で、この物価高…(C)日刊ゲンダイ

滑稽を通り越して、もはやイタい。6月から始まる定額減税のアピールに必死の岸田首相のことだ。「減税の恩恵を実感していただく」(岸田首相)ため、減税分を給与明細へ明記するよう義務づけたのだが、そうまでして「増税メガネ」の汚名を払拭したいのがミエミエ。肝いりの名誉挽回策は逆に国民の怒りを買っているのに、悪びれもせず「広報を強化」などとのたまう。見る者・聞く者が共感性羞恥を抱いてしまうというか、いたたまれなくなるというか……。

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厚労省が23日発表した昨年度の毎月勤労統計調査(確報、従業員5人以上)によると、物価変動の影響を除いた実質賃金は前年度から2.2%減。2年連続でマイナスとなった。

30年ぶりの高水準に沸いた賃上げもむなしく、物価上昇に追いつかず、賃金は目減り。財布の紐が固くなるばかりの国民の歓心を得ようと、岸田政権が打ち出したのが看板倒れの減税だった。

定額減税では、1人あたり年間で所得税が3万円、住民税が1万円減税される。1人あたり月3000円あまりの小遣い程度に過ぎないが、岸田首相は22日の参院予算委員会で「来月から国民は減税効果を実感できる」と鼻高々に主張。悪評ふんぷんの減税分の明細への記載義務化については「政策効果を国民に周知徹底し知ってもらう上で効果的だ」と強調した。

■明記させない方がいいレベル

岸田首相の脳内では「ほら、減税だよぉ~」とニンジンをぶら下げれば人気を集められる想定なのだろうが、現実は甘くない。生活費の足しにすらならない「施し」でドヤ顔しているだけでもイタいのに、ここぞとばかりに「集中的な広報など発信を強めていく」と鼻息荒い。やることなすこと、ことごとく裏目に出ている。高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)がこう言う。

「政府統計で明らかなように、岸田内閣が発足してから賃金は目減りし続けています。物価高で相対的に所得がガタ減りしている中、世間からすれば『手取りが1人あたり4万円増えます』と言われたところで、『なんだ……』って感じでしょう。恒久的な減税ならまだしも、たった1回ですし、これから電気・ガス代の補助金が消え、防衛増税も待っているわけですから。定額減税は弥縫策にすらなりませんし、明細に書かない方がいいレベル。電気・ガス代の補助を続けてくれる方が、どれだけ助かることか。岸田政権がまず講じるべきは、足元の物価上昇に歯止めをかけることです。庶民の苦しみをまったく理解できていないばかりか、くみ取るセンスも感じられません」

増税分も「明細書に明らかにされるものである」と強弁

減税分を明記するなら、増税分も同じ扱いにするのが道理だ。

22日の参院予算委で、野党議員から「増税の時はどうするのか」と問われた岸田首相はタジタジになりながら、「増税についても明細書に明らかにされるものである」と強弁。それなら防衛増税に転用される復興特別所得税についても、事実上の負担増であることを明記するべきだが、一体どうするつもりなのか。口が滑ったでは許されまい。

一方、医療保険料に上乗せして徴収する「子ども・子育て支援金」の明記については、増税と変わらないのに「税ではなく、医療保険と位置づけられている」とノラリクラリ。詭弁にも程がある。

「子育て政策も負担増ではなく、扶養控除を拡充するなど別の方法があるはずです。負担増のシワ寄せを真っ先に受ける若者や高齢者など、社会的弱者がこぼれ落ちているように思えてなりません」(五野井郁夫氏)

岸田首相は昨年3月、WBCの始球式で元高校球児とは思えない山なりの暴投をかました。政策も絶望的なコントロールとは、いくら何でも勘弁して欲しい。

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