会社の飲み会「全員参加なら残業代発生する?」業務扱いになるか確認したい3つのポイント【社労士が解説】

会社でおこなわれる歓迎会などの飲み会は残業扱いなのか? ※画像はイメージです(Paylessimages/stock.adobe.com)

学校や多くの会社では4月から新年度が始まり、すでに2か月近く経過しました。新しい環境に慣れてきた人が多いのか、X(旧:Twitter)などのSNSで歓迎会に関する投稿が散見されます。

そんななか、全員参加が求められることが多い新人歓迎会について「残業代出ないのに歓迎会行きたくない」「新人の歓迎会って残業代でるんですか?って聞いてきた」などの声があがっているようです。

実際のところ、会社関係の飲み会は業務の一環として、残業代が支払われるべきなのでしょうか。社会保険労務士法人こころ社労士事務所の香川昌彦さんに詳しく聞いてみましょう。

飲み会の開催形式によっては業務扱い

ー会社の飲み会で残業代は発生するのでしょうか

はい、飲み会の開催形式によっては業務扱いとなり、残業代が支払われるべきでしょう。具体的には、「強制性の有無」「人事査定への影響の有無」「飲み会での業務に関する決定の有無」の3点がポイントになると考えられます。

まずは強制性の有無について解説します。例えば会社側が「全員参加」と指示している場合、強制性があると判断される可能性があります。また全員参加の指示がなくても、会費の一部ないしは全部を会社が補助するとした場合、従業員が補助を得るためには参加しなければいけないという視点から、強制性があると見なされるかもしれません。

続いては、人事査定への影響の有無についてです。例えば上司や人事担当の人が飲み会を断った従業員に対して「付き合いが悪い」「コミュニケーション能力がない」と発言する場面があったとします。すると、今まで業務とは関係のない飲み会だったのに、発言があった瞬間から飲み会が業務だと判断される可能性があるのです。

最後は、飲み会での業務に関する決定の有無についてです。例えば飲み会のなかで、次のプロジェクトに関する議論がおこなわれ、プロジェクトに関する重要事項が決定した場合、この飲み会での議論時間は業務であると見られるでしょう。

(Peak River/stock.adobe.com)

ーこれらの判断は以前からおこなわれているのでしょうか

はい。SNSなどで話題になる以前からこの考え方は変わっていません。労働基準法に大きな変更がないため、30年以上前から同じ解釈です。

ーしかし30年前にはこのような論争はなかったのではないでしょうか

確かに「飲み会に残業代が欲しい」という話は、ここ最近まで見られなかったものだと感じています。おそらくこの問題の背景には、終身雇用制度の終焉が影響しているのでしょう。

終身雇用制度が当然であった時代の会社には「従業員を公私ともに生涯面倒を見る」という気概がありました。この会社の気概に対して従業員も忠誠を尽くしていたのです。そのため会社と従業員が家族のような関係となり、本来は業務外の時間での追加業務と見られるような飲み会でも、参加するのは当然という認識が強かったのではないでしょうか。

しかし、終身雇用制度が終焉し、仕事とプライベートを完全に切り分けて考える従業員が増えたことで、飲み会の在り方が問題視され始めたように感じています。

これからの会社や管理職は、時代の変化を受け入れ、今の時代に合った飲み会を企画する力が試されているのかもしれません。

◆香川昌彦(かがわ・まさひこ)社会保険労務士 人脈ゼロから事業を成長させ200社以上の経営を支え、「社労士オタク」と称されるほど就業規則に熱中。ラーメン愛好家としても知られ、「#ラーメン社労士」での投稿が人気。個性を活かし幸せに働く職場環境づくりに貢献している。

(まいどなニュース特約・長澤 芳子)

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