声優・富田美憂が完全オリジナル作品に挑戦!「物語で共感した父との関係性」

新進気鋭のクリエイターが集まるスタジオとして注目の「スタジオコロリド」。5月24日にNetflixでの世界独占配信および日本での劇場公開が開始となる長編第4弾は、“少年と鬼の少女”が紡ぐ物語を描いた『好きでも嫌いなあまのじゃく』。

この映画で、鬼の少女・ツムギ役を演じているのが声優の富田美憂。完全オリジナル映画への出演は初めてという彼女に、ニュースクランチ編集部が映画の見どころや、彼女のパーソナルな部分についてインタビューした。

▲富田美憂【WANI BOOKS-“NewsCrunch”-Interview】

柴山監督の言葉を聞いて「この声で良かったな」

――まずは、富田さんが声優を志したきっかけから教えてください。

富田美憂(以下、富田):もともと、すごくアニメが好きでした。私が小学生くらいの頃って、水樹奈々さんや宮野真守さんといった声優さんが、テレビでもご活躍されている時期だったんです。なので、「声優」っていう職業を認識するのは早かったと思います。

幼少期からこの声だったので、学校で「アニメみたいな声だね」「すごくわかりやすい声だね」って言われたのが、自分的にはちょっとイヤでした……。自分の声がコンプレックスだったんですけど、歌うことや表現することはずっと好きでした。

中学校3年生のときに、母が本屋さんで声優事務所さんのオーディションが載っている雑誌を買ってきてくれたんです。読み進めると、いまの事務所を含めた合同オーディションがあることがわかって。「声優アーティストを育成します」といったオーディションだったんですけど、それを受けて合格できたので声優の道へ進んでいきました。

――映画『好きでも嫌いなあまのじゃく』では、鬼の少女・ツムギ役を演じられています。役が決定したときの心境はいかがでしたか?

富田:じつはオーディションではなくて、柴山(智隆)監督が名前を挙げてくださったことがきっかけで役をいただけたんです。本当にありがたいです。また、完全オリジナルの映画に出演させていただくのが初めてで、この作品の大きさを感じました。

あと、スタジオコロリドさんの『ペンギン・ハイウェイ』(2008年公開)を劇場で観ていたので、“スタジオコロリドさんの作品に出させていただける!”という喜びの反面、“本当に私で大丈夫なのかな……”みたいな気持ちもありました。

――柴山監督が名前を挙げてくださった理由って、ご本人に聞いたりしたんですか?

富田: 直接は聞いてないです。でも、別の媒体さんの取材でチラっとスタッフさん伝いに聞いたのは、「力強さがある一方で、ツムギが持つ“繊細さ”も兼ね備えた特別な声」といった話をしてくださったそうです。その言葉を聞いて、小さい頃から「変わった声」って言われてきましたけど、“この声で良かった”と思いました。

“普通に演じる”っていうことを心がけました

――この映画は、主人公・八ツ瀬 柊(声:小野賢章)と、ツムギが一緒に旅をしながら成長していく物語になっていると思うんですが、富田さんが感じる作品の魅力はどこでしょう?

富田:スタジオコロリドさんの作品は、全体の雰囲気が温かくて、誰にでも起きそうというか、日常の風景のなかにファンタジー要素がきれいに織り交ぜられている印象があるんです。今回でいうと、鬼だったり、夏に降る雪といった部分ですね。作品のテーマも、柊が持っている悩みとかって、みんなも感じたことあるんだろうなって思えるものなので、共感できる人が多いんじゃないでしょうか。

――柊は高校生ですが、富田さんの高校時代の思い出を教えてください。

富田:ありがたいことに、高校生の頃からお仕事をいただけて、レギュラー番組まで担当させていただいていたっていうのもあって、忙しい学生生活でした。埼玉県出身なのですが、芸能科とかが全くない普通の公立高校に通いながらお仕事をしていたので、午前中は学校に行って、夕方は仕事に行って……という、仕事場と学校を往復する毎日でした。

体育祭とかの学校行事には出られなかったんですけど、仲の良い女の子の友達グループがあって、小テスト期間はみんなでサイゼリアに行って勉強会をするとか、普通の高校生らしいこともできていたと思います。

▲柴山監督からの言葉を聞いて自信につながりました

――ツムギ役を演じるうえで、大事にしたこと、心がけたことを教えてください。

富田:まず、人じゃない鬼っていうところで、最初は“人間じゃない感”を前面に出したほうがいいのかな? と思っていたんです。でも、台本を読み進めていくと、ツムギも人間と変わらない生活をしていたんです。

隠の郷(なばりのさと)という鬼の世界に住んでいるだけで、外見はツノとかが見えないと見分けがつかないくらい人間っぽい。人間の世界に溶け込んで生活ができている子なので、 “普通に演じる”っていうことを心がけました。

あとは、お母さんが子どもの頃にいなくなってしまった、というのも演じるうえでポイントになりました。序盤に柊のおうちに遊びに行って、柊のお母さんに髪の毛を櫛でとかしてもらう場面があるんです。そこを演じるときも、たぶんツムギはお母さんからそういうことをやってもらったことがないはずだから、不思議な気持ちというか、照れくさい気持ちなのかな……といった内面の想いを考えました。

柊とは正反対で、自分の意見を言い過ぎてしまうというか、出しすぎてしまうところもあるんですけど、ちゃんと自分の芯があって、思ったことをズバッと言える子なんです。そこの気持ちの強さを表現できたらいいなって思いながら演技しました。

柊と同じく頼まれたら断れません(笑)

――富田さんから見てツムギの魅力って、どんな部分ですか?

富田:私自身はメンタル的な面でいうと、柊に近いなぁとは思っていて。「ここは自分の意見を出さないほうがいいのかな」とか探ってしまうこともあります。でも、ツムギは「いや、それは違うでしょ!」とか「私はこうだから!」っていうのをはっきり言えるので、うらやましいなぁって。私の隣にいてほしいです(笑)。

ツムギの“自分を持っているところ”が魅力なんですけど、年相応の女の子らしいところもあるので、美味しいものを食べたときは、素直に「うまし!」と言ったりとか、おちゃめな部分も可愛いです。

――どちらかというと柊に近いというお話もありましたが、作品全体を通して柊に共感する部分が多かったですか?

富田:柊はもちろんですが、ツムギにも共感できるところはすごくありました。ありがたいことに学生の頃からお仕事をさせていただいていたっていうのもあって、達観してしまう部分があるというか、幼少期からあんまり子どもっぽくなかったんだろうなって思うんです。

三人姉弟なんですけど、真ん中の弟はどちらかというとツムギ寄りの性格で、お茶目で可愛げがあって……っていう感じなんです。家族で親戚のおうちとかに遊びに行くと、一番可愛がられるのはやっぱり弟なんですよ。そういう意味で、空気を読もうとしちゃうみたいなところは、“柊、その気持ちわかるよ!”って思います。

ツムギで共感した部分でいうと父との関係性です。私も学生時代、父とうまくコミュニケーションがとれなくて……。高校3年間は全く口をきかなかったぐらいで、勝手に「どうせ私に興味がないんだ」と思っちゃっているところがあったんです。なので、ツムギの父へ想いをぶつけるところは、ちょっと似ているなって思いました。

――富田さんも柊と同じく、頼まれたら断れない性格ですか?

富田:そうですね(笑)。頼られたいみたいな気持ちはそんなにないんですけど、「断ったら嫌われちゃうかな……」とか、そういうことを考えちゃう気がします。

▲柊と同じく頼まれたら断れない性格かも(笑)

――ご自身の性格をひと言で表すと?

富田:うーん……気にしい。他人はそんなに自分のこと見てないよ、っていうのはわかるんですけど、どうしても気になっちゃいますね。あとは、イベントやライブなどに出演させていただくときに、やることが10あったとして、1つ間違えただけでめちゃくちゃへこみます。できた9の部分より、できなかった1が気になります。

――そういったときの気持ちの切り替え方などありますか?

富田:弟に話しますね。弟はあっけらかんとマイペースな性格なんです。私が出演するイベントとかライブ、アニメとかも見てくれているんですよ。ズーンって沈んだときに相談するんですけど、よく言われるのが「失敗しても死なないから大丈夫だよ」っていう言葉で、そう言われると「確かにそうだね!」ってなります。

――お話を聞いていると、ご姉弟とすごく仲が良さそうです。

富田:めちゃくちゃ仲良いです! 一番下も弟なんですけど、それぞれと買い物に行ったりとか、ご飯に行ったりもしますね。

大人の女性を演じることが増えました

――旅をしながら成長する物語ですが、旅と聞いて思い起こされる思い出はありますか?

富田:旅とはちょっと違うかもしれませんが、高校の卒業式がすごく思い出に残っています。卒業式の翌日に大分県でお仕事があり、前乗りしていないといけなかったんです。なので、自分の卒業証書をもらったら、そのまま担任の先生と教室までダッシュして、あらかじめ持ってきていたトランクケースを持って「先生、行ってきます!」って、そのまま飛行機に乗って大分に行きました。

卒業式のあとって、学校の前とかで友達と写真を撮ったりするじゃないですか? それができなかったのが心残りだったんですけど、仲の良い友達が、自分たちが撮った写真に私を合成して送ってきてくれました(笑)。

――ステキなご友人ですね。お仕事で自身の成長を感じる部分はありますか?

富田:自分が10代のときは、わりと等身大のキャラクターを演じる機会が多かったんです。でも、自分が大人になっていくにつれて、ちょっとお姉さん的な立ち位置のキャラクターとかを任せていただく機会が増えてきました。

そういう意味では、年齢とともにお芝居の感じも、ちょっと大人のものができるようになってきたなっていうのは、成長できている部分なのかなって思います。

――『好きでも嫌いなあまのじゃく』、劇場やご自宅(Netflixで独占配信)で楽しめる作品になっているかと思います。映画の見どころと、メッセージをいただけますでしょうか。

富田:誰もが抱えたことがある、そんな悩みを題材にしてる作品なので、柊やツムギくらいの年齢の人たちは、すごく共感できる部分が多いのではないかと思います。また、お子さんのいる親世代の方々にもすごく刺さる気がします。親世代の方々は、ツムギのお父さんお母さんや、柊のお父さんに共感したり感情移入できるんじゃないかなって思います。

子どもから大人まで幅広い世代に刺さる作品だと思うので、ぜひ家族だったり、友達だったり恋人だったり、いろんな人と見に行っていただきたい作品です!

▲ぜひご自宅&劇場でご覧ください!


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