「ヒーローインタビューはおまけ」日本ハムを戦力外となってオリックスで“縁の下の力持ち”として輝く井口和朋【オリ熱コラム2024】

昨季終了後に日本ハムから戦力外通告を受け、12球団合同トライアウトを経てオリックスと育成契約を結んだ井口和朋。オープン戦での好投が評価され、開幕直前に支配下登録。吉田輝星との元日本ハムコンビで、ブルペンに待機して試合を壊さない役割を任された。

今シーズンはリーグ3連覇を担ってきた阿部翔太、宇田川優希、山崎颯一郎といった盤石のリリーフ陣の出遅れを受け、小木田敦也、アンドレス・マチャド、平野佳寿が勝利の方程式になるも、小木田、平野が離脱。阿部と山崎は復帰を果たしたが、中嶋聡監督は2021年には43試合に投げて防御率1.86を記録した実績もある井口を、阿部とともにセットアッパーとして起用する方針を固めた。

19日の楽天戦では延長10回に登板すると、三者凡退に抑えてチームのサヨナラ勝ちに貢献。移籍後初勝利が舞い込んできた。井口は試合後、「もう開き直って、できることを突っ込んでいくしかないと。それこそ4番からだったんで、もう仕方ないなじゃないですけど、どんどん突っ込んでいくしかないっていう気持ちで投げようと思いました」と振り返った。

移籍後初のお立ち台については「ファイターズをクビになってから、ヒーローインタビューできるようなところに行くっていうのは正直考えてなかったんで、そういう意味ではすごい嬉しいですけど。でも結局、勝ち負けとかって自分で決めれることじゃないんで、毎回出してもらった場面で自分の仕事やるってことを考えてやりたいなと思います。これはなんかおまけっていうか、はい」と、自身がヒーローになることより、あくまで“縁の下の力持ち”に徹することを強調していた。
22日には古巣・日本ハム戦に登板。少しアンラッキーな形で敗戦投手になるも、23日にはしっかり無失点で前日の借りを返してみせた。

これまで12試合に登板して防御率1.72と安定度の高い投球が光る。

「結局、どこの場面で出ても自分の投球自体は変わんなくて。勝ってる時に四球とか、そういうやっちゃいけないことをやらないようにするぐらいで、基本的に自分のやんなきゃいけないことって変わんないんで、出してもらった場面で自分の仕事することだけを考えて、これからもやりたい」

チームはまだ借金生活が続く厳しい状況だが、井口のような存在がブルペンにいる安心感は大きい。そして井口自身、オリックスという新天地に懸ける想いも強い。チーム事情に合わせたポジションで、全力のパフォーマンスを見せてもらいたい。

取材・文●どら増田

【著者プロフィール】
どらますだ/1973年生まれ。プロ野球では主にオリックスを取材し、週刊ベースボールの他、数々のウェブ媒体でも執筆している。書籍『ベースボールサミット 第9回 特集オリックス・バファローズ』(カンゼン)ではメインライターを務めた。プロレス、格闘技も取材しており、山本由伸と那須川天心の“神童”対談を実現させたことも。

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