市原隼人が今も心に刻む父の言葉 「お前は寝るな。人が寝ている間に10倍努力しろ」

インタビューに応じた市原隼人【写真:冨田味我】

撮影中はストイックに減量するも、休みの日は「ステーキ800グラムをペロリ」

劇場用映画第3弾『おいしい給食 Road to イカメシ』(綾部真弥監督、5月24日公開)に主演する俳優の市原隼人(37)。映画では、80年代の中学校を舞台に、給食フリークの中学教師、甘利田幸男を演じているが、市原自身が大好きなものとは?(取材・文=平辻哲也)

『おいしい給食』は2019年にドラマシリーズから始まった人気シリーズ。『―Road to イカメシ』は昨年10月に放送がスタートしたドラマシーズン3の続編。1989年、函館に赴任することになった甘利田が、自由奔放な発想で独自の給食道を歩む生徒、粒来(つぶらい)ケン(田澤泰粋)と食のバトルを繰り広げる。

市原は、「好きなものを好きと胸を張って、人生を謳歌する勇気を持っているのが甘利田」だと語る。

「僕が好きなのは、きっと芝居なんでしょうね。腐れ縁のような感じで、好きなんだけど、嫌い。でも好き。他にも好きなものは挙げれば、キリがないです。旅も好きですし、バイクも好きだし、料理も好きです」

インスタグラムで時折、披露しているのはカワサキ・Z1。カワサキが1972年から76年に欧州・北米向きに販売した900ccクラスのネイキッドタイプの大型バイクで、今ではプレミアがつく大人気になっている。

「今はZ1に乗って、旅に出たい。チェ・ゲバラ(キューバの革命家、若き日にバイクで南米大陸縦断旅行したことが有名で『モーターサイクル・ダイアリーズ』として映画化されている)のように、そしてトム・ソーヤのような気持ちになって旅に出たいなっていう思いがあります」

夢はバイクでのアメリカ横断だが、国内も巡ってみたいという。

「日本人でありながら、日本の良さをまだ全然理解していないと思うんです。今回は『おいしい給食』で函館の町の良さ、道民の方々の温かさを感じたので、いろんな地域に行きたいと思います。仕事で地方ロケに行くことも多く、ここ最近も、何回も飛行機、新幹線に乗っていますが、仕事だとまったく地方を感じられていないので、バイクでも日本中を旅してみたいです」

『おいしい給食』では体重10キロ落とし、撮影中も節制に徹した。

「バイクにテントを載せて、テントで寝て、地産のものを贅沢に味わいながら、日本を食べ尽くしてみたい。休みの時は食事制限もしていないので、本当に食べたいものを食べています。ステーキは800グラム食べるし、ラーメンも替え玉7杯以上平らげます。本当にたくさん食べる人間なんです。それをいつも我慢しているので、解放する日が待ち遠しいんです。今も食事制限中ですが、マックが食べたいです」と笑う。

最長のツーリングは北海道の宗谷岬、神戸の川崎重工本社、神戸工場だという。

「西は、神戸が一番遠いと思います。多分、片道400キロくらいだったと思います。2月に行ってきたんです。雨が降って、雪も降って大変でしたが、役者の自分には演出の様で楽しかったです。北は、最北端の北海道宗谷岬です。往復で約3000キロ弱くらいでした。さすがにお尻が痛くなりましたが、走ることが好きなので、まだまだ走り続けたかったです。いつか、愛機のZ1で、アメリカ横断することが夢です」

毎日の筋トレもルーティンの一つ。

「筋トレが趣味というよりも、精神的なものです。10代後半から20代始めの頃、仕事のプレッシャーで、食べたものを戻してしまったり、部屋の隅っこで電気暗くして涙が止まらなくなったり、走っても寝られなくなる日々を重ねていて、心の支えにしようと思ったのがきっかけでした。2歳の時から器械体操と水泳をやっていたので、体を動かすことは好きなのですが、毎日、自分を追い込むことで、少しずつ弱い自分を乗り越えてきて、自分なりに自信をつけてきたんです」

今も頭にあるのは、父の言葉だ。

「『お前は寝るな。人が寝ている間に10倍努力しろ』と常にずっと言われてきたので、そういう生き方しか、できない。自分でも面倒くさい性格だな、早く休みたいなと思いながらも、仕事をしている。でも、自信がないから、やるしかない」と市原。今後も、いろんな人に感謝しながら、役と向き合いたいと誓った。

□市原隼人(いちはら・はやと)1987年2月6日、神奈川出身。2001年、『リリイ・シュシュのすべて』で初主演。主な出演作に『偶然にも最悪な少年』 (04年)、『劇場版 おいしい給食 Final Battle』(20年)、『ヤクザと家族 The Family』 (21年)、『太陽は動かない』(21年)などがある。昨年、『商魂 TRADE WAR』で台湾ドラマに初出演。平辻哲也

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