5月下旬「残雪の北アルプス」絶景を見る登山! 日帰り「燕岳」レポート

残雪の山肌が美しい北アルプス。中央にあるのが槍ヶ岳だ(撮影:酒井 天里)

5月から6月にかけて気温がグッと上がり、初夏の雰囲気を感じられるほど暑い日も増えてきた。しかし、標高が3,000m近くなる高山では、まだ雪が登山道や山肌に残っている。「残雪期」と呼ばれるシーズンだ。

今回、筆者はそんな残雪の風景を求めて、2023年5月下旬に長野県の「燕岳(つばくろだけ・標高2,763m)」に登ってきたので、その時の様子をレポートする。

■「北アルプスの女王」と称される燕岳

燕岳は、長野県の北アルプスの南部に位置する山で、白い花崗岩(かこうがん)と緑のハイマツの美しさから「北アルプスの女王」と称されている。

山頂の少し手前には「泊まってよかった山小屋」ランキングで1位を獲得したこともある「燕山荘(えんざんそう)」があるほか、燕山荘から燕岳山頂までの登山道には「イルカ岩」や「メガネ岩」と呼ばれるユニークな奇岩があるなど、魅力に溢れる山だ。

燕岳登山口から「合戦(かっせん)小屋」を経由して山頂を目指すルートは、北アルプスの山の中では比較的危険箇所が少なく登りやすいため、初めて北アルプスにチャレンジする人におすすめ。ただし、登山口から合戦小屋までは北アルプスの三大急登に数えられる「合戦尾根」を通るので、それ相応の体力は必須である。

また日帰りとなると、より体力が必要だ。早朝にスタートして日没前までに登山口に戻れるかをよく考えてから計画を立ててほしい。緊急時に備えて懐中電灯、行動食、雨具等の準備を万全にしておこう。

■燕岳登山口から合戦小屋まで

早朝5時30分、燕岳登山口から登山を開始。今回は日帰りのため、深夜に登山口の駐車場に到着後、仮眠をとってから日の出とともに行動を開始した。

登山口からさっそく北アルプスを実感するような急な登りが始まる。樹林帯で展望のない道が続くので、根気よく進んでいこう。登山口での気温は一桁で寒かったが、登り始めるとすぐに身体は温まった。

途中岩をよじ登って進む箇所もあるので、手袋は必須だ。3点支持を意識して慎重に進んでいこう。ちなみに登山口から合戦小屋までは4つのベンチがあるので、こまめに休憩をとれる。

登山口から歩き始めて、3時間ほどで合戦小屋に到着。合戦小屋では軽食を販売しているため、休憩におすすめだ。夏季(6月下旬〜9月中旬)限定の名物となっているスイカも人気なので、立ち寄った際にはぜひ食べてみよう。

■雪道を通って燕岳山頂へ

合戦小屋から5分ほど進むと、雪道に変わる。ここから先はチェーンスパイクを装着して進んでいく。冬季の降雪が少なかったこともあり、登山道に残る雪は合戦小屋から燕山荘までの区間だけだった。

合戦小屋から1時間ほど歩いて、燕山荘に到着。木造の綺麗な建物で、外観の佇まいから人気の理由が伺える。AM10時前だったが、すでに多くの登山者で賑わっていた。

燕山荘の正面に見える山が燕岳だ。ここから先は絶景の稜線歩きが楽しめる。燕山荘から山頂まで雪がないと山小屋の方から情報をもらい、チェーンスパイクを外して歩いた。

山頂直下まで緩やかな傾斜が続くので、残雪の山々の景色を存分に楽しめるご褒美タイムだ。その道中、筆者は幸運にも雷鳥に出会うことができた。アルプスなどの高山帯にしか生息しない鳥で、その可愛らしい見た目からアイドル的な人気がある。

燕山荘から「槍ヶ岳(やりがたけ・標高3,180m)」まで続く「表銀座(おもてぎんざ)」と呼ばれる縦走路を一望できる場所に出たら、山頂まではあと一息だ。

最後に少し標高を上げると、燕岳山頂に到着する。その後、山頂で景色をゆっくり堪能してから来た道を戻って下山した。下山時は気温が上がり、雪がゆるくなっていたため、踏み抜きやスリップに注意して慎重に歩いた。

■燕岳から残雪の美しい北アルプスを見よう

残雪期の高山は美しい風景を楽しめる反面、雪が溶けてゆるくなっているため、転倒や雪崩等のリスクがあるので注意が必要。そうした中でも燕岳は難所が少なく、登山道が整備されているため、比較的リスクも少ない。

とはいえ早朝の時間帯は氷点下まで気温が下がることもあるため、防寒対策を入念に準備しておこう。また、残雪の状況によっては12本爪のアイゼンやピッケルなど雪山装備が必要となってくる。そのため、登山アプリで他の山小屋のホームページや登山者のSNSなどから最新情報を入手して慎重に計画を立ててほしい。

〈登山ルート〉
燕岳登山口(05:00)→合戦小屋(08:00-08:30 ※休憩)→燕山荘(09:30)→燕岳山頂(10:00-10:30 ※休憩)→燕山荘(11:00-12:00 ※休憩)→合戦小屋(13:00)→燕岳登山口(16:00)

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