学校に行かなくなった子どもの「その後」。6人のケースを見てわかること

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ここ11年増え続けていた不登校の子どもは、コロナ禍を境に激増。特に中学生は約17人に1人が不登校(※)。保健室登校や行き渋りなどのかくれ不登校を含めると、その数はさらに増えます。もしもわが子が学校に行かなくなったら?学校に行かなくなった子のその後は?気になるあれこれを取材しました。

※小・中学校における不登校児童生徒数299,048人(「令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」:2023年 文部科学省調べ)

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子どもが学校に行かなくなった。親はまず、どうすればいいの?

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学校に行かなくなった子は、自己肯定感が大きく傷つき、心から血を流している状態です。不登校は「初動」が大切。まずは子どもの傷ついた心を守りましょう。

「学校に行けないこと」は子どもにとっても緊急事態。心は沈み、学校に行けない自分を責めています。そこへ「行きなさい」「頑張れ」などと言うのは、骨折した子どもに「走れ!」と言うようなもの。

親は明るくあいさつするなど普段通り接することで「ここにいていいよ」というメッセージを伝えましょう。家は子どもを叱咤する場ではなく癒やす場にすることを第一に心掛けて。(あかねさん)

【目指したいこと】
・「おはよう!」「おやすみ!」と、明るくあいさつする
・親は普段通りに生活する

【避けたいこと】
・無理に学校に行かせようとする
・生活態度に小言を言う
・勉強や家事を指示する
・親の悲しみや怒りをダダ漏れにする

親が元気をなくしていると、子どもはさらに落ち込んでしまいます。親だってつらいけど、ここはカラ元気で!

Q.学校に行かないなんてアリ?

A.意外かもしれないけど大丈夫です!

多くの親子と接した経験からそう思います。それには関わり方がとても大切で、学校に行かないことや子どもの今の状態を受け入れることが何より大切。親の予想より時間がかかることもありますが、いつか元気になり、社会に出ていく子の話をたくさん聞いてきました。(あかねさん)

Q.学校に行かないことや、だらしない生活が、どうしても受け入れられない

A.親の会や本で情報を得ると考えが変わるかも

僕も「不登校は怠けや弱さ」という偏見を持っていました。でも、ただ悩むのをやめて不登校の親の会や本から情報を得たら、学校が合わない子もいるんだと思えるように。似た悩みを持つ誰かとつながって不安や愚痴を共有すると少し落ち着いて気持ちも変わってきますよ。(純一さん)

『サンキュ!』読者の体験談 学校に行かなくなったわが子の“今”

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不登校のきっかけはそれぞれですが、不安な中でも好きなことや進路を見つけて一歩ずつ進むわが子に伴走する6人に伺いました。

勉強のプレッシャーで体調を崩し、五月雨登校に

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なおこさん(46歳)/長男(中1:学校に行かなくなったのは小4)

●きっかけ
中学受験の塾の成績や学校での評価に強い不安を感じた様子。登校しようとするとゲップが止まらなくなり、吐き気や腹痛も出て「しばらく学校を休もう」と話しました。

●当時の子どもの様子
教室など集団で授業を受けるのはつらそうで、小5までは行ける日だけ登校。塾もやめて自宅でWeb学習を自分のペースで進めていました。不安定な状態が続いたけれど習い事の水泳や将棋教室で学校以外の友達や大人と会ううち、少しずつリフレッシュできたようです。

【今は?】自分で受験すると決めた私立中学に進学します
小6で入ったドッジボールクラブが楽しくて週3日登校するように。中学は公立を考えていましたが、息子が自ら受験すると決め、塾に3カ月間通って私立中学に合格。クラブや習い事など教室以外の場所で体を動かしたり人と交流したことがプラスに働いたのかもしれません。

【この経験でママが気づいたこと】
春から中学生ですが、不安を感じやすい子なので正直まだまだ心配。でも息子が自分で決めたことを心から応援して見守りたい。今は健康で笑顔でいること、そしてどんな形であれ自立してくれたらいいなと思っています。

友達関係や体質など複数の要因が重なって不登校に

チェリーさん(47歳)/二男(中1: 学校に行かなくなったのは小4)

●きっかけ
当初は「教室で発表するのが嫌」と言うだけで本人も理由がわからなかった様子。1年たって「友達が少なくて一人でいることが多くてさびしかった」と打ち明けました。

●当時の子どもの様子
週1~2日の別室登校で勉強していましたが、1年たつとそこも通えなくなり市の支援教室へ。息子は“行かないといけない”という義務感で通っていた気がします。病院で起立性調節障害と診断され、朝起きられない体質も不登校に影響していた可能性があります。

【今は?】得意なことが見つかり、前向きに
小6のとき親身で信頼できる先生が担任になり、遅刻や早退をしながらも教室で過ごせるように。小5で習い始めたプログラミングが得意でITかゲームの仕事に就きたいと言っています。この春小学校を卒業。「中学でどの部活に入ろうかな」と楽しみにしています。

【この経験でママが気づいたこと】
登校すると「よかったね!」と励ましたけど、かえって「学校に行かなきゃ」と思わせてプレッシャーになっていたかも。中学ではどうなるか不安で、静かに見守るのは難しいですがフラットに接するようにしたいです。

友達とうまく関われず8年間行きしぶりが続きました

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たまごさん(47歳)/長男(中3:学校に行かなくなったのは中2)

●きっかけ
幼稚園の年長で自閉傾向の発達障害があると診断。友達と関わりたいけどどう接していいのかわからず、人の目を気にする性格もあって幼稚園から小6まで行きしぶりが続きました。

●当時の子どもの様子
小学校では気の合う友達はいませんでした。中学に進み同級生が普通に接してくれても「自分は浮いているし勉強も苦手だ」と話していました。中2の5月には「友達とうまくいかない」と泣いて3日間欠席。今は登校していますが、様子には注意を払っています。

【今は?】部活の仲間と仲良くなり、学校生活を楽しんでいます
中学で剣道部に。1年目は周囲との接し方に悩んでいましたが、中2の後半から少しずつ輪に入れるようになって、今では仲間とふざけあうことも。稽古にも真剣に取り組み2段に昇段。70代のボランティアの先生など多くの人と接することで大きく成長しています。

【この経験でママが気づいたこと】
剣道はマイペースでできる個人競技で息子に合っていたようです。部活仲間とはコミュニケーションできますがクラスでは人とかかわるのが苦手なことなど心配はあるものの、ここまで成長できたことに親が驚いています。

クラスのグループに入れず孤立してしまいました

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くるりんさん(45歳)/長女(中2:学校に行かなくなったのは中1)

●きっかけ
小学校は問題なく通っていたけど、中学に入学してクラスの女子グループに入りそこねてしまい、同級生に「独りぼっちだね」と言われたりして傷つき欠席するように。

●当時の子どもの様子
最初は家で自由に過ごしたり一緒に買い物に行ったりして気が紛れるようにしました。2カ月ほど休み、担任の勧めで学校内の教育相談室にぽつぽつ通うように。娘は学校のことを話したがらないけれど、学校に行かないといけないと思っているようです。

【今は?】1人で登校できる日も。自分のペースで進んでいます
教育相談室で過ごす時間が徐々に増えて、今は週2日通ってプリントや課題をやっています。最初は私も一緒に登校していましたが最近は1人で行くことも。「部活を頑張りたい」と登校した日は空手部で練習に励んでいます。でもクラスに行くにはもう少し時間がかかりそう。

【この経験でママが気づいたこと】
初めは相談室にも行けなかったことを考えると、ゆっくりですが前進しています。ベテランのスクールカウンセラーさんに「たくさんの生徒を見てきた経験から、娘さんは絶対元気になるはず」と言われたことが心の支えです。

みんなで時間通りに行動する学校生活になじめず……

宇佐木ももさん(57歳)/二女(専門学校4年:学校に行かなくなったのは小1と中2)

●きっかけ
マイペースで自由に過ごすのが好きな子で、学校に適応できなかったよう。小5から登校したものの、中2で足をケガして学校を休むうちに「何もかも嫌になった」と再び不登校に。

●当時の子どもの様子
登校させようとすると玄関にうずくまり泣きわめいて拒否。自宅に引きこもりニコニコ動画を見て過ごしていました。そのうちヴィジュアル系バンドを好きになって中学からライブに行くように。通信制の高校では課題提出などが間に合わず2年留年しましたが、なんとか卒業。

【今は?】ライブで出会った友達の影響で進路が見えた様子
ライブでいろんな世代や職種の友達ができて「このままではいけない」と思ったようです。高校の卒業直前に「服飾系の仕事に就きたい」と進路が見えて専門学校に進学。学校に通わなかったぶんちょっぴり浮世離れした面があるけれど、バイトやインターンシップで社会勉強中です。

【この経験でママが気づいたこと】
ひとり親で相談相手もおらず、小学生時代は「どうしたら学校へ行ってくれるの!!」と毎朝戦争。でも中学でも不登校になり、接し方を変えなきゃダメだと思い、小言や干渉をやめました。好きな道を見つけてくれてホッとしています。

いじめがきっかけで家にこもりゲーム漬けに

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はんぞーさん(57歳)/長男(22歳:学校に行かなくなったのは小5から)

●きっかけ
同級生にいじめられてクラスにもなじめず、小5から朝起きられなくなって休みがちに。中1でその同級生と同じクラスになり、夏休み前に学校にほぼ行かなくなりました。

●当時の子どもの様子
週に数時間、通級教室や病院のデイケアに通うほかは家でオンラインゲームざんまい。心配してゲーム機を取り上げると暴れるので、しかたなく好きにさせました。ゲームを通して気の合う友達ができたようで、今思えばゲームが大切な居場所だったのかも……。

【今は?】ゲーム制作会社に就職してゲームデザイナーに
中学のころから「ゲーム関係の職に就きたい」とコンピューター系の高校に進学。3年ぶりの通学でしたがネットの友達が偶然同じ高校に進んだため学校にもなじめて、ネットの世界と現実がつながり出しました。さらに専門学校で学び、この春卒業して社会人に。

【この経験でママが気づいたこと】
学校と常に連絡を取って息子に合った進学先を教えてもらったり、親子で学校見学に行ったり、希望する道に進めるよう応援しました。思春期のころはバトルもたびたびで大変でしたが、あきらめないでよかった。

「なんとかなる」と子どもを信じて。心配と不安にQ&A

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まだまだ尽きない気がかりの数々。『サンキュ!』読者から寄せられた疑問にお答えします!

Q.子どもが学校に行っていない時間、親には仕事があります。どうすれば?
A.「教育支援センター」など自治体の制度を使う手も

特に心配なのは低学年のお子さんですよね。職場に働き方を相談する、家族や親戚の協力を仰ぐ、ファミリーサポートをお願いするなどの方法が。お住まいの市区町村に、不登校の相談機関として教育委員会が設置している「教育支援センター(旧・適応指導教室)」があれば、そちらで相談してみてください。(あかねさん)

Q.「行かなくていいよ」と言ったら、永遠に行かなくならない?
A.たとえ行かなくても、元気に生きている子はたくさんいますよ

学校に行く・行かないは未知数なので、ずっと行かない可能性もゼロではないでしょう。ただ、順調に学校に通っている子でも社会に出て挫折することもあるし、人生の浮き沈みは誰にでもあります。不登校を経て大人になり「あれは必要な経験だった」と振り返る人も多いです。親は心配だと思いますが、決してデメリットばかりではないですよ。(あかねさん)

Q.出席日数や内申点が足りなくても進学できるの?そもそも進学の選択肢はある?
A.大丈夫。行き先はあります!

不安だと思いますが、出席日数が少なくても内申点が足りなくても行ける学校はあります。学校の先生以外にも教育委員会や教育支援センター、不登校の親の会など情報を持っているところとつながって相談するのが一番。子どもが通わなくても親の相談に乗ってくれるフリースクールもあるので、調べてみてください。(純一さん)

Q.スマホ漬けのわが子。取り上げるべき?
A.ゲームとスマホは子どもの“心の救命ボート”。親はつらいけど取り上げないで

食べて睡眠がとれていれば基本的に大丈夫。ゲームやスマホは不安やつらさをまぎらわせるための逃げ場だったりします。無理に取り上げると親を信頼できなくなり、心を閉ざしてしまうケースも。そうなると問題が長引いてしまうおそれもあるので、できるだけ自由にさせてあげましょう。この状態が永遠に続くわけではないと信じて。(あかねさん)

Q.ママ友の子どもが学校に来ていません。どう接すればいい?
A.普段通りに接しましょう

学校のことを話す必要はありません。話したければ向こうから切り出すでしょう。同情したり、よかれと思ってアドバイスすると相手が傷ついてしまうこともあるので気をつけて。(純一さん)

Q.私が頑張らないと!と、気が張りつめた状況が数年続いてます。……もう疲れてきちゃった
A.あなたはよくやってる!今度は「私を幸せにする」ことを意識して

不登校を経験した子たちは「親が自分の好きなことをして笑っているのを見ると救われた」と語ります。親の姿から「自分らしく生きていいんだ」と感じて安心と勇気を受け取り、それで前に進む力を得るよう。肩の荷を下ろし、子どもを凝視していた目を自分に向けてみてください。(あかねさん)

子どもが学校に行かなくなると、自分を責めてしまう人が多いですが、親だって苦しい。だからたとえば、炊きたてのごはんをお腹いっぱい食べるとか、一番風呂に入るなど、自分を意識的にいたわってあげましょう。(純一さん)

参照:『サンキュ!』2024年6月号「学校に行かなくなった子の“その後”」より。掲載している情報は2024年4月現在のものです。取材・文/神坐陽子 編集/サンキュ!編集部

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