●28日から個展
趣味で「源氏物語」を研究する日下(くさか)静子さん(78)=金沢市窪5丁目=は24日までに、作品ゆかりの地をまとめた屏風(びょうぶ)を完成させた。35年かけて全国各地にある源氏物語や紫式部ゆかりの地34カ所を巡った集大成となる。NHK大河ドラマ「光る君へ」で紫式部や源氏物語への関心が高まる中、28日から市内で開催する個展で披露し、多くの人に作品の魅力を伝える。
屏風は縦約30センチ、長さ約3メートル。表面では、紫式部が源氏物語を執筆し始めたと伝わる石山寺(大津市)のほか、越前国守となった父藤原為時とともに越前国府に移り住んだ紫式部をしのんで造られた紫式部公園(越前市)など8カ所を紹介している。
裏面には、主人公の光源氏が誕生した地とされる京都市上京区の京都御所など物語にまつわる26カ所を書いた。
厚紙14枚をつなげた屏風には、楷書や草書で内容を書写した和紙を貼り付けてあり、和紙の色を変えることで場所の雰囲気を表現した。28日~6月2日、広坂1丁目の石川国際交流サロンで開く個展「筆で歩いた源氏物語」(北國新聞社後援)で、かるたや原文54帖(じょう)の書写などと合わせて展示する。
日下さんは38歳の時、友人に勧められて源氏物語を読み始めた。読むうちに当時の世の不条理を嘆きながらも生きる女性の姿に魅了され、作品にのめり込んだ。内容を忘れないようにと、あらすじや原文、絵巻、和歌集などを書写。これまでに150点超をしたためた。
6年前に夫を亡くした後、「源氏サロン」というサークルを結成した。月に1度、地元の知人を自宅に招いて源氏物語を読み、学び合う機会を設けている。
日下さんは個展を前に「源氏物語に興味を持った多くの人に、ゆかりの地に行ってみたいと思ってもらえるとうれしい」と話した。
★源氏物語 平安時代中期に紫式部が創作した長編物語。桐壺から夢浮橋までの全54帖から成り、主人公・光源氏ら貴族の恋愛や宮廷生活を描いた。外国語にも翻訳され、世界的な古典文学として広く読まれている。