【巨人】24歳・戸郷翔征 快挙ノーヒッターの裏にあった「WBC日程への落胆」と「師匠の大記録」

大記録を祝福してくれたジャビット(左)とハグする巨人・戸郷翔征

Gの若きエースが伝統の一戦で金字塔を打ち立てた。戸郷翔征投手(24)が24日の阪神戦(甲子園)で先発し、9回123球で史上89人目、通算101度目となるノーヒットノーランを達成。巨人の投手が甲子園で達成したのは1936年に同記録を史上初めて成し遂げた沢村栄治投手以来、88年ぶりとなった。くしくも同日、舞台裏では自身の思い描いた〝理想のシナリオ〟が消滅。ショックをものともせず、右腕は大舞台で最高の投球を披露した。

最後の打者・中野がフォークに空振りした瞬間、戸郷は両腕でこん身のガッツポーズを見せた。捕手の岸田と喜びをわかち合うと、チームメートが次々にグラウンドへ集結。輪が出来上がり、偉業をたたえた。

24歳の若武者エースの大偉業達成には阿部監督も「すごいことだよ、もう。泣きそうになっちゃったよ、オレ」と感無量。当の戸郷は笑みを見せつつ、冷静な表情で「今までやってきたことは間違いじゃなかった」とうなずいた。

昨年3月21日(日本時間22日)の第5回WBC決勝・米国戦で3回からマウンドに立ち、2イニングを無失点に抑えて侍ジャパンの世界一に貢献。その栄光から1年2か月後のこの日、2026年・第6回WBCの開催地が発表され、決勝戦の舞台が前回大会と同じフロリダのローンデポ・パークに決まった。

同時に開催時期もシーズン前の3月と発表された。一方で昨年11月の時点ではシーズンを中断し、第6回WBCをNPBとMLBで球宴期間に当たる7月に開催する案も有識者や関係者の間で一時浮上していた。

この案について、戸郷は「WBCを夏場にやるのはメッチャいいアイデア」とし「7月開催」を〝支持〟。その主な理由を「シーズン中なら(WBC公式球の)メジャー球への対応も楽になる。シーズン中にずっと投げている状態なら、少し投げれば慣れる。(3月に)投げていない状態からメジャー球に合わせるのは肩とボールで大変」と鼻息を荒げながら説明していた。

侍投手陣が苦しんできたWBC公式球への「アジャスト問題」が、仮に7月開催になるとすれば、一気に解決。チームの世界一2連覇への大きな後押しとなると、戸郷も考えていた。

ところが、次回大会のWBC夏開催プランは〝お流れ〟に…。あれだけ熱望していた戸郷も内心で大きく落胆していたのは想像に難くない。それでもG若武者右腕のWBCに対する情熱は不変だった。「WBCというのは僕を強くさせてくれましたし、そういう経験というのが今日のノーヒットノーランにも生きてきたと思います。アメリカで対戦したすごい数々の選手たちが僕のいい経験になりましたので、また出たいなというのは素直な気持ちです」と目を輝かせた。

この日、最も効果的だった球種に、前回のWBCでダルビッシュ有投手(37=パドレス)から伝授されたスライダーを挙げた。20日には、その師匠・ダルビッシュにLINEで日米通算200勝達成の祝福メッセージを送った。自らも4日後にノーノーを達成したことで「(ダルビッシュからのLINEが)来てほしいですね」。侍魂を胸に秘めながら4年ぶりリーグVに向け、今後も快投を続ける腹積もりだ。

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