月収40万円・45歳のサラリーマン急逝…3年前に別れた妻、「遺族年金ゼロ」に年金事務所で崩れ落ちる「ちゃんと養育費をもらっておけば」

大黒柱を失った家族に対する公的保障である「遺族年金」。子の要件がない遺族厚生年金は、受給権が失権しないかぎり、生涯払われ続ける可能性があります。しかし、離婚が絡んでくると状況は複雑に……みていきましょう。

離婚原因トップ1「性格の不一致」、元夫の半数が「養育費」満額払えず…

離婚には離婚には「①協議離婚」「②離婚調停」「③審判離婚」「④裁判離婚」「⑤和解離婚」「⑥認諾離婚」の6つがあります。

①は夫婦で協議を行い、合意した上で離婚届を出す離婚。②は家庭裁判所で行われる調停を経ての離婚。③は家庭裁判所が、離婚を認める審判をする離婚。④は夫婦の一方が家庭裁判所に離婚訴訟を起こし、判決によって成立する離婚。⑤は当事者の話し合いによる離婚。⑥は訴えを起こされた被告が原告の請求をすべて認めた場合の離婚。①以外が多くの人がイメージする離婚劇であり、②以降は離婚の話し合いがまとまらず、こじれたものといえるでしょう。

法務省『協議離婚に関する実態についての調査研究業務報告書』によると、(協議離婚による)離婚原因で最多は「性格の不一致」。63.6%と圧倒的。「異性関係」「精神的暴力」と続きます。

【離婚原因トップ10(協議離婚の場合)】

1位「性格の不一致」61.6%

2位「異性関係」23.8%

3位「精神的な暴力」21.0%

4位「親族との折り合い」17.5%

5位「浪費」17.0%

6位「性的不調和」15.0%

7位「経済的な暴力」13.5%

8位「ギャンブル」10.5%

9位「生活費を渡さない」9.9%

10位「家庭を捨てて省みない」8.1%

子供がいる場合、離婚に際し気になるのは養育費ですが、その取り決めについて最も多いのが「口約束で決めた」で31.5%。「公正証書で決めた」が23.4%、「(公正証書を除く)書面で決めた」が20.6%。また「決めていない」は21.5%でした。

また養育費の取り決めを行っていない理由として、最も多かったのが「離婚した相手と関わりたくない」が38.1%。「取り決め交渉が煩わしかった」28.8%、「非同居親に支払い能力がないと思った」14.4%、「非同居親に支払う意思がないと思った」11.6%と続きます。

また株式会社アシロ/「ベンナビ離婚」で離婚歴有かつ子の親権ナシの男性に行った『養育費の支払いに関するアンケート調査』によると、「毎月支払っている」は52.0%に留まり、「一度も支払っていない」は11.3%と、10人に1人の水準でした。

別れた妻と暮らす子供…「遺族年金の受給権」はどうなる?

一生を誓い合ったとしても、夫婦が別れるのは仕方がありません。しかし離婚後、養育費あり/なしで、万が一の時に大きな差が生じるケースがあります。

たとえば子1人(5歳)いる夫婦(妻40歳、夫・会社員42歳)が離婚。それから3年後、元夫が急死。元妻は「離婚していても、子供は遺族年金をもらえるらしいよ」とアドバイスを受けて年金事務所に相談へ。しかし色々と状況を聞いた職員は「このケースでは遺族年金は受け取れませんね」とぴしゃり。淡い期待をしていた元妻、膝から崩れ落ちそうに。「ちゃんと養育費をもらっておけば……」。

順を追ってみていきましょう。そもそも通常の夫婦であれば、夫が亡くなった場合、妻は遺族年金が受け取れます。まず国民年金に由来する遺族基礎年金として、81万6,000円+子の加算額(1~2人目:各23万4,800円、3人目以降:7万8,300円)。そして夫が会社員であれば、厚生年金に由来する「遺族厚生年金」も。その額は、死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額です。

仮に亡夫が20歳~亡くなる45歳まで平均的な給与を手にしているサラリーマンだったなら、亡くなる直前の月収は40.6万円、年収は670.9万円ほど。遺族に支払われる遺族厚生年金は年54.2万円ほどになる計算です。

では離婚した夫婦の場合はどうなるのでしょうか。まず妻は離婚しているので、そもそも遺族ではありません。子はどうでしょうか。遺族年金における子の要件は「18歳になった年度の3月31日までにある、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある子」。子の要件に当てはまります。しかし、遺族年金においてはもうひとつ、「生計維持関係にある」ことが重要。養育費が払われていない場合は「生計維持関係」になく、結局「遺族年金はゼロ」ということになります。

離婚した夫婦であっても、子には遺族年金の受給権が発生します。そこで決め手になるのが「生計維持関係」であり、養育費のアリ・ナシが大きく影響してくるのです。離婚の原因によっては、養育費についてきちんと話し合えないケースもあるでしょう。ただ養育費のアリ/ナシは、万が一の際の遺族年金にも影響があることを、知っておいても損はありません。

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