初夏公開“クセモノ俳優”最新作5選!ポール・ジアマッティ『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』ほか個性爆発の注目作が目白押し

『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』Seacia Pavao / © 2024 FOCUS FEATURES LLC.

アカデミー賞受賞!名作『サイドウェイ』のタッグふたたび

ワインと人生が絡み合うほろ酔いロードムービーの傑作『サイドウェイ』(2004年)で見事なコンビを見せたアレクサンダー・ペイン監督とポール・ジアマッティが再びタッグを組んだ『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』が、2024年6月21日(金)より全国公開となる。

名優ジアマッティがアカデミー賞で初めて主演男優賞にノミネートされ、二度目のゴールデングローブ賞主演男優賞(ミュージカル・コメディ部門)の受賞を果たした本作を筆頭に、今年の初夏は世界各国の“クセモノ俳優”たちが個性を爆発させた注目作が続々公開される。クセモノの定義は人それぞれだが、唯一無二の個性派俳優たちを切り口に、バラエティに富んだ作品たちを紹介したい。

ポール・ジアマッティ主演『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』

6月21日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国公開

アカデミー賞助演男優賞にノミネートされた『シンデレラマン』(2005年)で演じたボクサーのマネージャー、『それでも夜は明ける』(2013年)で演じた奴隷商人、『アメイジング・スパイダーマン2』(2012年)の怪人ライノ、『アメリカン・スプレンダー』(2003年)で描かれた伝説的オルタナ・コミック原作者ハービー・ピーカーなどなど、作品毎の変幻自在ぶりで強い印象を残してきたジアマッティは、無冠の名優とも言うべき存在だった。本作でついに初めてのアカデミー賞主演男優賞ノミネートを果たし、俳優仲間からはこの賞にジアマッティを推す声も多かったという。

そんなジアマッティが本作で演じる古代史の教師ハナムは、生真面目で融通が利かず生徒からも教師仲間からも嫌われているが、誰にも言えない過去を抱える複雑な人物で、ジアマッティ自身を念頭に置いて作られたキャラクター。その人物像は、ある視覚効果や匂いに至るまで緻密に設定され、ジアマッティは記憶に残る好演を披露している。

『サイドウェイ』以来のタッグとなったペイン監督は「ポールは最高の俳優だと思う。私は彼をとても尊敬しているし、彼も私を監督として尊敬し、私の感性を気に入ってくれていると思う。ポールはどのテイクも完全に真実で、完全に新しい。彼にできないことは何もない」と称えるが、親族に教師が多く、読書家でもあり、ハナムが劇中で言及する古代史についての書籍の多くを元々読んでいたというジアマッティは、ハナムに強い親近感を感じながら演じたという。バカンスや家族のもとに戻った人々を尻目に、誰もいない全寮制の学校でハナムたちが過ごすささやかなクリスマス休暇――その行方に注目して観ていただきたい。

ドニ・ラヴァン主演『美しき仕事』4Kレストア版

5月31日(金)よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか全国順次公開

『ボーイ・ミーツ・ガール』(1983年)を皮切りにレオス・カラックス作品の常連となり、『ポンヌフの恋人』(1991年)、『TOKYO!』(2008年)、『ホーリー・モーターズ』(2012年)など鮮烈な印象を与え続けている、フランスを代表する怪優ドニ・ラヴァン。同じくフランスの名匠クレール・ドゥニが手掛けた1999年の主演作『美しき仕事』は日本で長らく劇場未公開だったが、このたび4Kレストア版として初公開される。

仏・マルセイユの自宅で回想録を執筆しているガルー。かつて外国人部隊所属の上級曹長だった彼は、アフリカのジブチに駐留していた。暑く乾いた土地で過ごすなか、いつしかガルーは上官であるフォレスティエに憧れともつかぬ思いを抱いていく……。目が眩むほどに青いアフリカの海岸を背景に、外国人部隊とそれを率いる指揮官の訓練の日々を描く中で、ラヴァンのエネルギッシュな身体性が印象的なラストシーンも必見。

平泉成 主演『明日を綴る写真館』

6月7日(金)より全国公開

1964年の大映京都第4期フレッシュフェイスに選ばれ映画デビューして以来、映画、ドラマ、ナレーションなど幅広く活動し、日本を代表する名優のひとりとなった平泉成。『明日を綴る写真館』は60年にわたる俳優人生において、意外にも初主演作となる。本作で平泉が演じるのは、自身の趣味であるという写真撮影ともリンクするベテランカメラマンだ。

さびれた写真館を営む無口なカメラマン・鮫島は、客と対話を重ね、彼らの抱える“想い残し”のためにカメラマンと被写体の関係を超えてまで奔走している。そんな鮫島の写真に心を奪われた気鋭カメラマン・太一は華々しいキャリアを捨て、弟子入りを志願するのだが……。鮫島と対照的なキャラクターである太一を演じるのは、次代のエンタテインメント界を担う注目グループ「Aぇ! group」のメンバーである佐野晶哉。監督は『20歳のソウル』の秋山純が務める。

アダム・ドライヴァー主演『フェラーリ』

7月5日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開

ジム・ジャームッシュ、スパイク・リー、マーティン・スコセッシ、リドリー・スコットなど多くの巨匠から愛される一方で、レオス・カラックスの最新作『アネット』(2021年)でミュージカルに挑み、『スター・ウォーズ』続三部作ではカイロ・レンを演じたアダム・ドライヴァー。海兵隊から俳優へ転向し、キャリアわずか10数年にしてハリウッドを代表する俳優のひとりとなった、クセモノでありながらメインストリームを突き進む稀有な俳優だ。そんな彼が主演最新作で演じるのは、イタリアの自動車メーカー・フェラーリ社の創業者エンツォ・フェラーリである。

1957年。会社の業績不振、息子の死など激動のさなかにあったエンツォは、再起をかけてイタリア全土1000マイルを縦断する過酷なロードレース<ミッレミリア>に全てを賭けて挑む――。『フォードvsフェラーリ』(2019年)でオスカー2冠の名匠マイケル・マンが監督を務め、ドライヴァーは製作総指揮も兼任した。

ジョシュ・オコナー主演『墓泥棒と失われた女神』

7月19日(金)よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、シネスイッチ銀座ほか全国順次公開

フランシス・リー監督の名作『ゴッズ・オウン・カントリー』(2017年)で演じた牧場を切り盛りする孤独な青年や、Netflixの人気シリーズ『ザ・クラウン』(2016年~)のチャールズ皇太子役など、イギリスを代表する若手クセモノ俳優と言えるジョシュ・オコナー。『夏をゆく人々』(2014年)や『幸福なラザロ』(2018年)のアリーチェ・ロルヴァケル監督の最新作でオコナーが演じるのは、80年代、イタリア・トスカーナ地方の田舎町で忘れられない恋人の影を追う考古学愛好家アーサーだ。

アーサーは不思議な特殊能力を持ち、墓泥棒の仲間たちと掘り出した埋葬品を売りさばいては日銭を稼いでいるという役どころ。ある日、彼が稀少な美しい女神像を発見したことで、闇のアート市場をも巻き込んだ騒動に発展し……。オコナーは今年、大ヒット作『君の名前で僕を呼んで』(2017年)のルカ・グァダニーノ監督最新作で、テニス界の元スター(演:ゼンデイヤ)に恋をするテニス選手を演じた『チャレンジャーズ』の公開も控えている(6月7日)。

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