木次線、三段式スイッチバックが危機に。JR西日本が「あり方」協議求める

JR西日本が木次線出雲横田~備後落合について、「あり方」の協議を求める意向を明らかにしました。

JR山陰支社長が協議求める

JR木次線は、宍道~備後落合間81.9kmを結ぶローカル線です。輸送密度(2022年度)は宍道~出雲横田間52.3kmが237、出雲横田~備後落合間29.6kmが54です。

JR西日本山陰支社の佐伯祥一支社長は2024年5月23日の記者会見で、出雲横田~備後落合間について、沿線自治体と「あり方」について協議する意向を明らかにしました。

同区間には、出雲坂根駅の三段式スイッチバックが含まれます。全国的にも珍しい鉄道風景を含む路線の「あり方」が問われることになります。

「特定の前提を置かず」

佐伯支社長は同区間について、「全国的に見ても利用が非常に少なく、通勤や通学といった生活利用が乏しい」「鉄道の大量輸送という特性が発揮できていない」と状況を説明。

そのうえで、「できる限り早いタイミングで地元にうかがって、地元の自治体に地域の移動の実態に応じた持続可能な交通体系について、今後の進め方も含めて、特定の前提は置かずに相談したい」述べ、沿線自治体を訪問する意向を示しました。

法定協議か、任意協議か

佐伯支社長のいう「今後の進め方を含めた相談」とは、法定の再構築協議会で話し合うか、まずは任意協議会で始めるかも含めた「相談」をしたいということのようです。

JR西日本の長谷川一明社長も5月24日の記者会見で、「どういう場、どういう方法になるかは別にして、自治体と私どもが線区について正式の議論の場が設けられるようお願いしたい」と説明。再構築協議会にはこだわらない姿勢をみせています。

とはいえ、JR西日本が、存続を前提とした協議を求めているとも考えにくいところ。当然ですが、「特定の前提を置かない」とは「法定協議か任意協議か、存続か廃止か」という選択肢を示したに過ぎず、「再構築協議を経て鉄道廃止」という結論も、当然含まれるでしょう。

芸備線とセットで

備後落合駅で接続する芸備線は、備中神代~備後庄原間について、再構築協議会での協議が始まっています。木次線の出雲横田~備後落合間は、芸備線と連なる過疎路線で、JRとしては、セットで「あり方」を考えるべき区間とみているのでしょう。

両区間の当事者である広島県は、芸備線の再構築協議会で、広域ネットワークの維持を掲げて、徹底抗戦をする姿勢をみせていています。

島根県の丸山達也知事は「木次線は県民生活を支える大切な路線であるとともに、鉄道ネットワークを形成する路線だ。相談内容が廃止を前提にしたものであれば応じられない」とのコメントを出し、広島県と同調する姿勢を示しました。

とはいえ、廃止を前提としなくても、利用者数の少なさからみれば、自治体にとって協議は厳しい内容にならざるを得ません。有名な三段式スイッチバックが今後も維持されるのか、難しい局面にいたったのは確かでしょう。(鎌倉淳)

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