あまりに悲しい…ファンに大きな衝撃を与えた漫画やアニメに登場する「推しの死」

『ONE PIECE』Log Collection “ACE"(初回限定版) [DVD](エイベックス・ピクチャーズ)

2023年9月、ある漫画連載で人気キャラクターが突然の最期を迎える展開があり、SNSで「推しの死」がトレンド入りする事態となった。その作品こそ、芥見下々さんの『呪術廻戦』。コミックス勢も今年4月に発売された新刊でその死を目の当たりにして撃沈、残すところはアニメ勢のみ……死屍累々の様相である。

このような経験は、アニメや漫画ファンなら誰しも持っているだろう。そこで昭和から令和にかけて、時代ごとにファンに大きな衝撃を与えた新旧「推しの死」を振り返ってみた。

■力石にラオウ…葬儀まで営まれた昭和のスターキャラたち

昭和時代、とくに印象深いキャラクターの死といえば、『あしたのジョー』(原作:高森朝雄(梶原一騎)さん、作画:ちばてつやさん)の力石徹が思い浮かぶ。

主人公・矢吹丈のライバル役として登場した力石は、ジョーと戦うために苛酷な減量に挑み、死闘を制した末にリングで倒れたまま帰らぬ人となった。寡黙でクールな外見と、文字通り勝負に命をかけた熱い生きざまには多くの人気が集まり、死後、現実でも葬儀が出されたことは広く知られている。

葬儀といえば、『北斗の拳』(原作:武論尊さん・作画:原哲夫さん)のラオウも平成に入ってから葬儀が執り行われ、多くの著名人をはじめ国内外から約3000人ものファンが参列したという。

拳を天高く掲げ「わが生涯に一片の悔いなし!!」と言い放った最期はあまりに有名で、没後40年近く経った今なお男女問わず多くのファンに愛され続けている。

ほかにも『北斗の拳』では南斗水鳥拳のレイや雲のジュウザなどの人気キャラが死を遂げており、本作で推しの死を体験したファンも多いことだろう。

■エースにカヲルくん…いまだ癒えない平成の死

平成の世に入り、世界中の人々の心を震わせたのが『ONE PIECE』(尾田栄一郎さん)に登場するポートガス・D・エースの死だろう。その死は多くの人にとって予期せぬ出来事だっただけに、10年以上経った今でもその死を乗り越えられないファンもいると聞く。ルフィに抱かれながらエースが遺した「愛してくれて」「……ありがとう!!!」というシンプルながらも力強い言葉は、アニメ史を彩る名セリフとして語り継がれている。

また『新世紀エヴァンゲリオン』(庵野秀明監督)で絶大な人気を誇った、渚カヲルの死も衝撃的だった。カヲルが初号機の手に握られたままベートーヴェンの交響曲第9番が長尺で流れ、やがて水面に何かがボチャンと落ちるシーンは、多くのファンにトラウマを植え付けたのではないだろうか。

そして本作も『北斗の拳』同様、綾波レイや加持リョウジといった人気キャラの死が重なる。ファンは満身創痍だ。

■煉獄さんにナナミンも…社会現象クラスの死が続く令和

時代は令和へ。爆発的な人気を博した『鬼滅の刃』(吾峠呼世晴さん氏)では煉獄杏寿郎がこの世を去り、世界中が涙を枯らした。

もともと人気のあったキャラクターだが、快活な人柄と高潔な生きざまが見る者の胸に響き、死後その人気はさらに高まりを見せている。「心を燃やせ」などのフレーズは今なおさまざまな場面で引用されているし、彼が遺した「胸を張って生きろ」という言葉を支えにしている人も多いだろう。

また、葛藤の末に「後は頼みます」という言葉を遺して逝った『呪術廻戦』(芥見下々さん)七海建人の死は、まだ記憶に新しい。

アニメ放送後には、彼が死の間際に隠居先として希望していたクアンタンを“アニメの聖地”として観光誘致すべく、マレーシア・パハン州の議員が動いていると、現地の日刊新聞『New Straits Times』が告げた。推しの死は国境をも越える。

「推しの死」とは、ただのキャラクターの消失ではない。物語のなかで重要な役割を果たすとともに、ファンに深い感動や衝撃を与える出来事だ。昭和から令和にかけて多くの人の心に刻まれた彼らの死を通して、アニメや漫画の影響力の大きさが再確認される。

© 株式会社双葉社