資産形成と社会貢献が同時に叶う【サステナブル投資】を始めるには?

今回はサステナブル投資(ESG投資)の意義について紹介したいと思います。

今日、私たちの経済活動は地球環境に大きな影響を与えています。気候変動、生物多様性の喪失、資源の枯渇など、多くの環境問題が私たちの未来に暗い影を落としています。そこで、投資の世界で注目されているのが「サステナブル投資」です。「Environment=環境」「Social=社会」「Governance=企業統治」の頭文字を取ってESG投資とも呼ばれます。


サステナブル投資がトレンドに

日本でも2022年の経済財政諮問会議(令和4年第12回)で議事として「GX投資、サステナブルファイナンス市場の拡大」が取り上げられています。

サステナブル投資とは、投資のリターンを追求するだけでなく、社会や環境に対してもポジティブな影響を与えることを目的とした投資手法です。この投資は、持続可能な未来を築くための重要なステップとされています。

サステナブル投資は、「Environment=環境」「Social=社会」「Governance=企業統治」の基準を活用して、企業やファンドがどれだけ環境に優しく、社会的に責任を持ち、良好なガバナンスを実施しているかを評価します。環境面では、企業がどれだけ低炭素経済に貢献しているか、または自然環境の保護に取り組んでいるかが評価されます。社会的側面では、企業が従業員の権利を尊重し、地域社会とどう関わっているかが、ガバナンスでは透明性や経営の公正さが重要視されます。

サステナブル投資が拡大するなかで企業が長期的に成長し続けるためには、ESGの3つの観点で事業リスクや事業機会を長期的に把握しなくてはいけないという考え方が世界的に広まってきています。

サステナブル投資の広がり

サステナブル投資の考え方と呼べそうなものは、17 世紀の英国においてキリスト教の一派であり平和主義を貫く“クェーカー”の創始者であるジョージ・フォックスが示した規範にあるといわれています。その後、1908 年に米国のメソジスト教会が教会の年金資金の管理及び運用機関を設立。1928 年には最初の公募型 SRI (社会的責任投資)のファンドが設立されました。

当初は環境保護や社会的責任を重視する少数の投資家によって実践されていたようですが、気候変動の影響が全世界で顕著になり、国際的な環境協定や政策が進む中で、サステナブル投資は大きな流れとなりました。特に、2015年のパリ協定や国連サミットにおいて SDGs(持続可能な開発目標)が採択されるなど、多くの投資家がサステナブル投資の重要性を認識し始め、今日では多くの主要な投資ファンドがESG基準を一つの重要な投資基準としています。近年サステナブル投資市場は急速に拡大しており、多くの機関投資家や個人投資家がESG基準を取り入れた投資に移行し、金融庁によると特に脱炭素については世界全体で設備投資や技術開発に官民合わせて巨額の資金が必要 とされており、国際エネルギー機関(IEA)は2050年脱炭素の実現には世界全体で、現在年間1兆ドルの投資を2030年までに4兆ドルに増やすことが必要と試算している、と伝えています。政府や規制機関も気候変動対策として、炭素排出量の削減を義務付ける法律やポリシーを強化しており、これがサステナブル投資の一層の加速を促しています。

サステナブル投資のメリット

サステナブル投資の最大のメリットは、長期的な視点から見た場合の安定したリターンです。環境や社会に配慮した企業は、法規制のリスクが低く、持続可能な経営が可能であると評価されます。また、消費者の意識が高まる中で、これらの企業の製品やサービスが好まれる傾向にあります。

さらに、サステナブル投資はリスク管理にも寄与します。環境事故や社会的不正が起こると、企業の評判は大きく損なわれ、株価の大幅な下落を招くことがあります。しかし、ESG基準を重視して運営されている企業は、そのようなリスクが低いとされ、より安定した投資先と見なされます。

革新的な金融商品の登場も

今後、サステナブル投資はさらに多様化し、革新的な金融商品が登場することが予想されます。たとえば政府や企業、その他の発行体による債権で、持続可能な環境に寄与するプロジェクトへの資金供与を目的とする債券である“グリーンボンド”発行額は急増しており、2023年11月までの発行額は世界で2.5兆ドル(約374兆円)を超えているほか、持続可能なインデックスファンドなどの環境に配慮した投資商品、金融商品が増えています。これらの金融商品は、投資家が自身の資金を地球環境や社会的価値の向上に寄与する形で運用する手段を提供します。

サステナブル投資を始めるには

ではサステナブル投資を始めるにはどうすれば良いのでしょうか。

まずはサステナブル投資に関する基本的な知識を身につけ、最新のトレンドやデータを追いかけましょう。多くの金融機関やオンラインプラットフォームでは、ESGスコアが高い企業やファンドへの投資を簡単に始めることができます。また、自分自身で企業のサステナビリティレポートを読み、その企業の環境や社会への取り組みを評価することも有効です。米国株投資でホームページを見てみるとサスティナビリティについては10年前でもかなりの企業でしっかりとリリースされていたと記憶していますが、今は日本企業でもサスティナビリティについて表示されているホームページがかなり増えています。

企業のサステナビリティレポートの詳細な読解や、サステナブルファンドの過去の実績と戦略などをチェックしてESG基準に沿った企業を選定します。サステナブル投資ファンドに投資することも一つの方法です。これらのファンドはESG基準を満たす企業に集中投資することで、環境と社会に貢献しつつ投資家にリターンを提供します。自分の投資目標やリスク許容度に合わせて、適切なファンドを選ぶことが大切です。分散投資を心がけ、異なる産業や地域にまたがる投資を行うことで、リスクを管理するとより良いと考えます。

最後に投資した企業やファンドのパフォーマンスを定期的に監視し、必要に応じてポートフォリオを再調整します。サステナビリティの基準が変わった場合には、これに適応する形で投資先を見直すことが必要です。投資先の企業がサステナブルな方向で進むように、株主として意見を述べる、また社会的なキャンペーンに参加することも一つの方法です。

MSCI日本株ESGセレクト・リーダーズ指数

ここで国内のサステナブル投資に役立つMSCI日本株ESGセレクト・リーダーズ指数をご紹介しましょう。

MSCI日本株ESGセレクト・リーダーズ指数は、親指数(MSCI 日本株 IMI指数)構成銘柄の中から、各GICS®業種分類の銘柄数50%を目標に、ESG評価に優れた企業を選別して構築される指数です。この選別手法により、ESG評価の高い企業を選ぶことで発生しがちな業種の偏りも抑制されるとのことです。

こちらの上位組入れ銘柄10社は以下の通りです。

トヨタ自動車(7203)
ソニーグループ(6758)
東京エレクトロン(8035)
日立製作所(6501)
三井住友フィナンシャルグループ(8316)
リクルートホールディングス(6098)
第一三共(4568)
任天堂(7974)
伊藤忠商事(8001)
KDDI(9433)

他の銘柄も見ることができますので、個別銘柄選びのヒントになると思います。

ETFでも投資できる

またETFで投資をすることも可能です。

たとえばNF・日本株ESGコアETF(2850)は、ジャパン ESG コア指数に連動する投資成果を目指すETFです。ジャパン ESG コア指数は日本の経済活動と持続的な成長にかかわる発展の観点から中長期の成長性が期待される複数の業種の中からSolactive社の定めるESG基準に適合する銘柄や、その他の業種の中で相対的にESGスコアの高い銘柄を採用する指数。二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量にも着目しており、指数構成比は、各銘柄のESGスコアおよび時価総額を勘案して決定するので、ETFのみならず構成銘柄も調べると参考になるでしょう。武田薬品工業(4502)、任天堂(7974)、日立製作所(6501)、HOYA(7741)、キーエンス(6861)などが組み込まれています。

米国のETFでは、【EFIV】SPDR®S&P500®ESG ETFというS&P500 ESG指数に連動する投資成果の提供を目的とするETFもあります。EFIVはサステナビリティ基準を満たすS&P500企業に分散投資できるETFです。

ESGデータの透明性には注意

サステナブル投資によって、私たちは自分たちの資産を増やすだけでなく、社会に対しても積極的な貢献を行うことができます。それにより、経済的な利益と社会的な利益が同時に得られるのです。

ただし、サステナブル投資にも課題は存在します。まず、ESGデータの質と透明性の問題があります。企業によっては、環境や社会への影響を適切に報告していない場合があり、投資判断が難しくなることがあります。また企業が自身の環境への配慮を実際以上に良く見せかける行為もあるようです。消費者や投資家が真のサステナブル企業を識別できるよう、透明性と説明責任を強化することが必要といえるでしょう。

皆様の投資の参考に少しでもなれば幸いです。

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