愛犬お手柄、鼻ひくつかせ向かった先は 未明の住宅街、飼い主は一瞬恐怖も「自然と動けた」 宝塚

用水路に転落して動けなくなった高齢男性を救った柏田将輝さんとシバイヌの「てりたま」=宝塚市旭町1、宝塚署

 用水路に転落して身動きの取れなくなった高齢男性を救ったとして、兵庫県警宝塚署は21日、同県宝塚市の会社員柏田将輝さん(30)に県の善行賞「のじぎく賞」を伝達した。散歩させていたシバイヌ「てりたま」が男性のにおいに気付き、すぐさま発見。贈呈式にも、柏田さんとともに出席した。(池田大介) ### ■暗がりから、にょきっと

 4月中旬の深夜、仕事を終えた柏田さんは日課のてりたまの散歩にでかけた。午前0時を過ぎており、住宅街に人けはない。道路の真ん中を歩いていると、どこからか低いうめき声が聞こえてくる。同時に、てりたまが鼻をひくつかせながら、道路脇の用水路へと柏田さんを引っ張った。恐る恐る中を除くと、暗がりから、にょきっと手が伸びてきた。恐怖のあまり、一気に鳥肌が立った。

 しかしスマートフォンのライトで改めて確認すると、男性があおむけで倒れている。「助けてほしい」。頭から血を流しているが意識ははっきりしている様子で、柏田さんは急いで119番。同時に男性を引き上げるために用水路に降りた。しかし、深さは1メートルを超えており、1人で引き上げるのは難しく、下手に動かしてけがをさせてしまう危険性もある。幸いにも水は張っていなかったため、救急車の到着を待つことにした。 ### ■積極的に声かけ、思い出した10年前

 柏田さんも10年ほど前、車にはねられて、そのまま用水路へ飛ばされたことがあった。その際、近くにいた人たちは「息はできるか」「大丈夫か」などと声をかけながら救出してくれた。

 あの時の安心感を思い出し、柏田さんは積極的に話しかけた。「家はこの辺りですか」「お酒はよく飲むんですか」。たわいもない話をしているうちに、救急車は到着。男性は「ありがとう」と言い残してそのまま搬送された。同署によると、用水路に落ちたライターを拾おうとしたところ、男性も誤って転落してしまったという。

 帰宅後、「第一発見者」のてりたまには、「よくやった」と頭をなでながら、ご褒美のペットフードを与えた。

 柏田さんは野球部の主将を務めていた三田松聖高校時代にも、部員らと人身事故の救助に協力したとして、JR西日本から感謝状を贈られたことがある。2度目の救助活動に「今回も自然と体が動いた。同じように救助を求めている人がいたら、今後も素早く動いて助けたい」と語った。

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