27歳芦屋市長、初めて買った意外な備品 デジタル時代にこそ「大切」 つながる原体験は震災

市長室に設置したホワイトボード=芦屋市役所

 兵庫県芦屋市の高島崚輔市長(27)が就任して初めて購入した備品はホワイトボードだった。その理由は、今につながる原体験にある。灘中2年の終わりに起きた東日本大震災。あの時ほど無力感に襲われたことはないという。

 神戸市東灘区にある灘中高は阪神・淡路大震災の避難所となり、遺体安置所にもなり、自衛隊の炊き出しも行われていた。「そんな環境だったのに、何も知らないと突き付けられた」。何かしたいと思ったが、すぐには行動できなかった。

 高校1年の夏、ようやく仲間らと宮城県南三陸町や女川町、福島県を巡った。被災地で出会った同世代は古里のため、復興のため、さまざまな行動を起こしていた。それまでは「今は学んで、いつか社会のために」と思っていたが、今できることがあると教わった。

 その後も交流を続け、刺激を受けた。「『世界の課題を解決しよう』と大きな話を考えがちだが、意外と地域に課題があり、それを解決することができる」。学校から地域へ出て、行動する出発点となった。

 ホワイトボードとの出合いも、この時だった。福島県相馬市の立谷秀清市長を訪ねると、被災直後に使っていたものを見せてくれた。「2階建てすべて倒壊」「まもなく鎮火」「1000人孤立」…。刻々と入ってくる報告が「タイムライン」のように書かれていた。災害時、行政は最前線で対応しなければならない。「デジタル化は大事だが、いざという時に動かない可能性がある。それに同じものを見ながら議論することは大切なんです」

 購入したホワイトボードは市長室に置き、普段の会議でも使っている。(土井秀人)

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