心揺さぶられる!傑作ゴルフ映画‐後編‐

最近、忙しくてゴルフの練習に行けていない…なんとなくモチベーションが上がらない…そんな時にはゴルフをテーマにした映画を観て気分転換してみませんか。映画ライターの圷 滋夫(あくつしげお)さんに2本の傑作映画を選んでいただきました。本記事では、前編と後編に分けて紹介します。

スポーツと映画は相性が良く、これまでも『ロッキー』(1977)や『フィールド・オブ・ドリームス』(1990)、そして近年大ヒットを記録した『THE FIRST SLUM DUNK』(2022)などの名前を挙げるまでもなく、多くの作品が撮られてきました。本数は少ないながら、ゴルフを題材に描いた映画もいくつかあります。前編ではロバート・レッドフォードがメガホンを取った『バガー・ヴァンスの伝説』を取り上げましたが、後編では実話を元に描いた作品を紹介します。

『グレイテスト・ゲーム』(2005年)

『グレイテスト・ゲーム』は日本では劇場未公開ですが、人間ドラマとしてもしっかり作り込まれ高評価を得た必見のゴルフ映画です。後に『トランスフォーマー』シリーズ(07~)初期3作の主演で脚光を浴びるシャイア・ラブーフが、ゴルフ史にその名を刻んだ伝説のプレーイヤー、フランシス・ウィメットを瑞々しく演じています。「アマチュアゴルフの父」と呼ばれるウィメットの幼少期から、20歳で初出場してセンセーションを巻き起こした1913年の全米オープンの名勝負までを描いた感動の伝記映画です。

労働者階級に生まれたアメリカの少年ウィメットが、イギリスの王者ハリー・バードンに憧れてゴルフを始めます。しかし当時ゴルフは完全に富裕層のスポーツであり、ランク上位の選手はゴルフを発展させたと言われているイギリス人ばかりだった時代で、地道な生き方を願う父親とウィメットとの間に確執が生まれます。一方バードンも、貧しい家に生まれたことから王者になっても様々な苦い思いをさせられます。そんな二人が運命に導かれるように、勝負を挑むことになるのです。そしてウィメットは、10歳なのに妙に大人びて可愛いエディをキャディーとして雇い、あらゆる常識を打ち破り快進撃を続けます。そんなウィメットの活躍を、本作は撮影当時の最新技術を駆使した臨場感溢れる斬新な映像で描き出します。

ちなみにウィメットは1974年に、ハリー・バードンや『バガー・ヴァンスの伝説』に登場するボビー・ジョーンズとウォルター・ヘーゲン、さらにはあのアーノルド・パーマーやジャック・ニクラスらと共に世界ゴルフ殿堂入りを果たし、全米ゴルフ協会の博物館には彼の名前を冠した部屋まであります。また本作にはバードンが生み出し、ウィメットも普及の一翼を担ったクラブの握り方“オーバーラッピング・グリップ(バードン・グリップ)”がはっきりと映し出されるので、ゴルフファンは要注目です。

最後に蛇足ですが、ハリーが訪れる怪しげなパブでピアノを弾いて歌っているのは、大ヒット曲「ステッピン・アウト」(米米CLUB「浪漫飛行」の元ネタとしても有名ですね)で知られるジョー・ジャクソンで、劇場でオペラを歌っているのはグラミー賞を4度受賞している著名なソプラノ歌手ドーン・アップショーです。

『グレイテスト・ゲーム』 デジタル配信中(購入/レンタル)、DVD発売中 © 2024 Disney

圷 滋夫(あくつ・しげお)/映画・音楽ライター

1962年10月3日生まれ。映画配給会社の宣伝担当として20年以上勤務。その後フリーランスになり、主に映画と音楽について執筆するライターとして活動。鑑賞マニアで、演劇や落語、現代美術、コンテンポラリーダンス、サッカーなどにも通じている。

Edit : Yu Sakamoto

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