電子処方箋導入進まず 福島県内医療機関、薬局の約1割 県、費用一部補助へ

 昨年1月に運用が始まった電子処方箋を導入している福島県内の医療機関や薬局は、対象の約1割に当たる403施設だったことが厚生労働省の調査で分かった。薬局が中心で、地域医療の要となる病院は公立岩瀬病院(須賀川市)の1施設のみ。導入費用の負担が大きい点や患者の認知度の低さが要因。県は6月定例県議会に提出する2024(令和6)年度一般会計補正予算案に事業費約3億円を計上し、導入費の一部補助に乗り出す方針を固めた。24日の県議会各会派政調会で示した。

 厚労省や県によると、県内の病院、診療所、薬局は計約3千施設。19日現在、病院1施設、診療所40施設、薬局362施設が電子処方箋を活用している。政府は2025年3月末までに約23万施設での導入を目指している。全国で導入済みは2万2169施設で、導入率は福島県と同じく1割程度だった。

 電子処方箋の利用で患者の処方情報を一元管理でき、薬局は過去の処方履歴を基に患者が飲み合わせの悪い薬を服用していないかを確認できる。大規模災害発生時などにかかりつけ医以外の医療機関を受診した際、これまで服用していた薬の処方にも役立つ。

 導入費用は病院で400万~600万円程度、診療所や薬局は50万~60万円程度に上る。導入費用の軽減に向け、県は国の制度に上乗せする形で、費用負担が病院で2分の1、診療所や薬局で4分の1となるように補助する方針。

 県は今年度末までに導入率を6割程度まで引き上げる目標を掲げている。担当者は「医師会や病院協会、薬剤師会と連携し、導入を促進したい」としている。

 ただ、県内の医療機関は導入に慎重な姿勢を示す。県北地域の病院の担当者は、導入には医師が資格証を登録する必要がある点に触れ、「費用の他にも大変な点が多い印象だ。今のところ患者から導入を求められたことはない。周囲の病院の動向を注視しながら検討したい」と話した。

※電子処方箋 医師が患者の治療に必要な薬の種類や量、服用方法などを記載した紙の処方箋を電子化したもの。医師が処方情報を管理システムに登録し、薬局の薬剤師がダウンロードして調剤する。医療DX(デジタルトランスフォーメーション)推進の一環。昨年1月に運用が始まった。

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