相馬野馬追...支える誇り胸に 「力になりたい」ボランティア次々

仲間を担う薄井さん(手前)と馬上の伊東さん。野馬追の開催はテスト期間中だが「貴重な機会だから力になりたい」と意気込む=相馬農高

 猛暑による人馬への影響を避けようと、従来の7月から急きょ2カ月前倒しで開催される相双地方伝統の「相馬野馬追」。日程変更は出場する騎馬武者はもちろん、野馬追を支えるボランティアの高校生や地元企業などへも影響を与えた。

 「地域盛り上げる存在」

 「野馬追は地域を盛り上げる存在。普段経験できない貴重な機会だから、力になりたい」。相馬農高3年の薄井我光(わこう)さん(17)と伊東成吾さん(17)は、25日の開幕を前に胸を高鳴らせる。馬術部員の2人は、馬の引き綱を握って制御し、行列のスムーズな進行を担う「仲間(ちゅうげん)」として今年、騎馬武者行列に初めて参加する。

 日頃、馬に親しんでいる同校の馬術部員は野馬追の運営を下支えし、欠かせない存在だ。これまで7月末の開催だったため、部員らは夏休みを利用して参加していたが、今年はテスト期間中に野馬追が行われる事態になった。最終学年の2人にとってテストは大切だが「前倒しして勉強するので、問題はないです」ときっぱり。野馬追への思いが変わることはなかった。

 騎馬武者行列には相馬中村(相馬市)、相馬太田(南相馬市原町区)、相馬小高(同市小高区)の3神社のみこしも繰り出す。

 地域企業として相馬中村神社のみこしの担ぎ手を務めるIHI相馬事業所は昨年まで、2日間行われる行列に1日当たり社員100人程度を送り出していた。

 だが、5月はこれまで多数加わっていた新入社員がまだ試用期間のため、会社として参加させることができず、社内で調整して人員を確保することになった。

 「想定より多く」

 野馬追の開幕を直前に控え、総務部長の脇田素士さん(46)は「想定より多くの社員から協力を得られそうだ」と胸をなで下ろす。60人を目標に声がけすると、グループ会社からの協力も得て、最終的に1日当たり70~80人が行列に参加することになった。

 希望者が集まった背景には、野馬追を支えることへの誇りがあった。相馬工場の坂本傑さん(26)は「沿道から声援をもらえるなどやりがいがある。地域の祭りに貢献している姿を見せることができるのはうれしい」と今年も行列に加わる。

 脇田さんは「『地元のために参加したい』という若い社員がいる限り、私たちは野馬追を支え続けていきたい」と語った。日程の変更は地域社会にとって、長い歴史の中で親しまれ、国指定重要無形民俗文化財となった野馬追への思いを再確認する機会にもなった。

© 福島民友新聞株式会社