鶴ケ城下に蜜蜂の園 ブランド蜜販売へ 福島県会津地方の養蜂家有志 蜜源広げ循環期待

鶴ケ城公園近くの勤労青少年ホームの屋上に巣箱を設置する伊藤さん(左奥)ら

 福島県会津地方の養蜂家による有志団体は会津若松市の鶴ケ城近くを拠点に蜂蜜生産に乗り出した。名城と城下町のブランド力に着目。市有施設の屋上に巣箱を置き、一帯で採れる蜂蜜を「百花蜜」として売り出す。収益は花の種苗の購入に充て、近郊の耕作放棄地などに植え付ける。循環をつくり「蜜源」の拡大と景観向上を進めつつ、農業体験などの交流の場ともする考え。県内の蜂蜜生産量が減る中、団体はまちづくりと一体で養蜂産業を盛り上げたいと意気込んでいる。

 会津若松市の長嶺養蜂場、ハニー松本、松本養蜂総本場、会津蜂蜜、渡部養蜂場でつくる任意団体「会津ミツバチプロジェクト」が活動主体となる。20日には鶴ケ城から約300メートル南東側の市勤労青少年ホームの屋上に巣箱を3群設けた。ここを拠点に、約10万匹の蜜蜂が鶴ケ城公園や周辺の花から蜜を集める。

 プロジェクトが生産するのは複数の種類の花から蜜を採取する「百花蜜」。蜜蜂は半径2~3キロを活動範囲とし、蜜源となるアカシアが多く植えてある鶴ケ城公園の他、小田山や飯盛山にも飛来する。圏内にはサクラやリンゴ、トチノキなどの木々も多く、十分な蜜源が確保できる見通しだ。

 巣箱は蜜蜂の活動期に当たる8月末まで置き、3カ月間で約20キロの蜂蜜を採取できると見込んでいる。6月上旬に最初の蜜を採る。

 蜜蜂はスズメバチなどと違い攻撃性は低い。地上ではなく3階建ての市勤労青少年ホームに巣箱を置くことで、人の目線近くを蜜蜂が飛ぶ頻度を減らした。団体は2021(令和3)~2023年に試験設置を重ね、安全性を確認した。

 昨年10月に市内で開かれたイベントで、採取した蜂蜜を500グラム1500円で販売したところ、2日間で用意した100本がすぐに完売する人気ぶりだった。

 蜂蜜の売り上げは花の種苗の購入に充て、市や地域団体に無料で配る。城周辺の休耕田や耕作放棄地を蜜源として活用し、花と緑があふれるまちづくりを促す。市内の飲食店と連携し、蜂蜜を用いた料理の商品化も検討している。

 農林水産省によると、昨年1月1日時点の県内の蜜蜂群数は6700群で都道府県別で10番目に多いが、2014(平成26)年の8300群に比べて1600群減少した。温暖化による収量の不安定化や、安価な輸入品に押されているのが要因とみられる。

 プロジェクトの中心を担うハニー松本専務の伊藤身輔さん(43)は「鶴ケ城のブランド力を借り、会津の蜂蜜の魅力を広く発信したい」と話した。

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