QOL(Quality Of Life)が爆上がり…44歳で会社員を辞めた張本人が語る「FIREする前と後」の違いとは

「いざ仕事をしなくなると、ヒマで時間を持て余してしまうのでは?」このように、FIREできるとしても時間をどう使っていいかわからない、目的がなくなりゲームなどで時間を無駄にしてしまいそう、といった懸念を持つ人もいるようです。そこで、実際にFIREを達成した寺澤伸洋氏の著書『ぶっちゃけFIRE 手取り25万円で子育てしながら1億円ためる方法教えます』(主婦と生活社)より一部を抜粋して、FIRE前後のリアルな生活の変化を見ていきましょう。

会社員時代の時間の使い方

僕のFIRE前後の1日のスケジュールは[図表1]のイメージです。

[図表1]FIRE前・FIRE後のスケジュール

会社員時代は、辞める1年半ほど前から完全在宅勤務でした。しかし、会社に行っていなかっただけで、人間らしい生活をしていたとは言いがたい生活だったように思います。

朝8時50分くらいまで布団の中にいて、9時前に飛び起きて会社のPCにログイン。これだけでもひどく余裕のない生活です。9時に在宅勤務をはじめたら、夕食直前の19時まで仕事に追われる日々。昼食もほとんど食べることがありませんでした。

自由時間といっていいのは主に夕食後の1時間くらいで、その後お風呂に入ってからまた会社の仕事を開始。この自由時間というには短すぎる時間に、僕は一体何をしていたのでしょうか。まったく記憶にありません。

朝から晩までずっとパソコンの前に張りついて、メールと会議の毎日。外がすごくいい天気でも、家の中から外を眺めて終わり。少し外の空気を吸いたくても、仕事が気になって散歩にも出られませんでした。

今になって思えば、お昼休みくらい外に出て体を動かしたり、ゆっくりしたりすればよかったなと思うのですが、「そうしてる間に、すぐに対応しなければいけないメールがきたらどうしよう」と考えてしまい、結局会社に所属している間は家の外に出ることすらほとんどなかったのです。1か月に数回しか家の外に出ていなかったのではないでしょうか。

僕は夜2時を過ぎてから寝ると次の日にかなり影響が出るので、一応それまでには寝ようと決めていましたが、退職前はずっと2時ギリギリまで仕事をしていました。今から振り返ると、完全に仕事一色の人生でした。よく頑張ったと自分を褒めてあげたいと思います。

さらに毎週月曜日の朝から報告するレポートのために、日曜日の午後からはデータをまとめていましたので、実質仕事のことが頭から離れていたのは土曜日くらいでした。ワーカホリックという表現が正しいのか、強迫観念に襲われていたというのが正しいのか。とにかくひどい状況でした。

FIREしてから、「会社員のときの生活がおかしかったことがようやくわかったよ」と妻に伝えたら、「え? 今まで気づいてなかったの? めっちゃヤバかったよ」と真顔で言われました。家族から見ていても、相当おかしかったようです。

FIRE後の時間の使い方

FIRE後の時間の使い方は、それまでとは大きく変わり、1日1時間程度だった自由時間が大きく増えました。

加えて仕事が執筆活動に変わり、自分が好きなときに好きなことを書く仕事になったので、時間的にも心理的にも仕事に追われることが一切なくなりました。これが僕にとって一番大きい変化でした。本当に心身ともに健やかな生活になりました。

普段は大体朝9時前くらいに起床し、のんびりします。その後はカフェに移動したり、友人と会うために都内に移動したり。友だちとお茶したり、飲みに行ったりするのはもちろんのこと、カフェで好きな執筆をするところまでを自由時間と考えたら、1日のほとんどが自由時間です。

最近は講演活動やインタビューなどもオンラインですべて完結しますから、場所を選ばず時間を有効に使えて、本当に素晴らしい時代になったなと感じます。友人たちと日本のいろいろな場所を巡りながら、オンラインで執筆・講演活動ができたら最高だと思います。

なお、土、日、祝日やGW、お盆などの長期連休はどこに行っても人混みがすごいですし、ホテルや飛行機代も高くなりますから、行楽などは平日を優先することが増え、週末に予定を入れることが少なくなっていきます。これはFIREあるあるかもしれませんね。

ゲームをする時間や動画を見る時間がもったいない

「FIREしたあと、どんなことをしてますか。ヒマじゃないですか?」

FIREをしたというと、よくこのように質問されます。たしかに44歳で会社員を辞めたあと、僕が日々何をしているのか、何を目標に生きているのかと気になるのでしょう。

裏を返せば、質問者自身が「何でもできる時間と自由があっても、何をして過ごせばいいか思い浮かばない」と感じているのではないかと想像します。

たしかに僕もFIREする前は「好きな本を読んだり、ゲームをしたり、動画を見たりするんだろうな」というぐらいしかイメージできていませんでしたし、事実「時間ができたら思う存分ゲームやってやる!」と、20本くらい積みゲーしていたのです。

ところが実際は想定と違って、FIRE後にゲームをしたり動画を見たりする時間はほとんどありません。

では何をしているかというと、価値の創造です。執筆や講演など、自分の経験を人に伝えるコンテンツをゼロから生み出すために、日々時間を使っています。ゲームや動画も面白いのですが、どうしても与えられたコンテンツを消費しているだけのように感じてしまい、何かを作りたくてうずうずしてしまうのです。

またFIREを契機に、会社員時代には会えなかったような方々とお会いする機会もいただくようになり、そちらにも積極的に時間を割いています。ほかにやりたいことや会いたい人が多すぎて、ゲームや動画までまったく手が回っていません。

まあ、ゲームなんていつでもできるので問題ありません。それよりも今は、自分で価値を生み出し、新しい人とどんどん話をして刺激を受けることのほうが、四角い画面の中でおこなわれる冒険よりも圧倒的に楽しいのです。

一度QOLの高い人生を送ると、人生観が変わる

こうやってFIRE前後の時間の使い方を比べてみると、まるで別人のように人生の過ごし方が変わり、QOL(Quality Of Life:人生の質)が爆上がりしました。定年後のことをセカンドライフと言いますが、まさに2回めの人生を送っているかのようです。

QOLが相当低い代わりに給与が高い人生と、収入はそこまで高くはないけれどもQOLが相当高い人生。僕はこの数年の間にふたつの人生を体験することができました。もちろん後者のほうが圧倒的に幸せだと感じますが、そのためには前者のような人生で数年間踏ん張ってお金を貯める必要もあったのかもしれません。

ただ世の中には、既にある程度資産を構築していてQOLが高い人生にシフトできるのに、怖さや不安によってQOLの低い人生から抜け出せない人もいます。

特に以前の僕のように「毎日会社に行って、とにかく頑張らないといけない」と思い込んでいる方々には、きちんとしたプランニングをしたうえで、QOLの高い人生を経験してほしいと思っています。

これは体験してはじめて感じたことですが、今までの常識や人生観が180度変わり、「なんであそこまで頑張ってたんだろう」、「人生を生きるってこういうことだったのか」と憑(つ)き物が落ちたようになったのです。

寺澤伸洋

作家/講演家

※本記事は『ぶっちゃけFIRE 手取り25万円で子育てしながら1億円ためる方法教えます』(主婦と生活社)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。

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