森保監督は伊東純也を忘れていない JFAのサポートは今後も必須…招集解禁の可能性は?【コラム】

6月シリーズでも伊東は招集せず【写真:徳原隆元】

6月シリーズでも伊東は招集せず

日本代表の森保一監督は5月24日、6月6日の北中米ワールドカップ(W杯)アジア2次予選アウェー・ミャンマー戦、11日のホーム・シリア戦に向けた日本代表メンバーを発表した。

3月の朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)戦に向けたメンバーから外れたのは鈴木彩艶(シント=トロイデン/ベルギー)、渡辺剛(ヘント/ベルギー)、毎熊晟矢(セレッソ大阪)、浅野拓磨(ボーフム/ドイツ)、佐野海舟(鹿島アントラーズ)の5人だ。

逆に、今回入ってきたのは谷晃生(FC町田ゼルビア)、冨安健洋(アーセナル/イングランド)、鎌田大地(ラツィオ/イタリア)、旗手怜央(セルティック/スコットランド)、鈴木唯人(ブレンビー/デンマーク)になっている。

そして、今回のメンバーの中にも、日本代表の攻撃を牽引し続けてきた伊東純也の名前はなかった。

伊東はカタールで開催されたアジアカップ期間中だった1月31日、週刊誌で性加害が報道され、報道当日のバーレーン戦はベンチに入ったものの、大会期間中に代表チームを離脱することになり、その後は招集されていない。

被害者とされる女性2人が伊東を刑事告訴する一方、伊東も女性2人の訴えは事実無根として虚偽告訴の疑いで逆に告訴を行った。なお、それぞれの訴訟については大阪地裁から東京地裁に移送されることになり、東京地裁で起訴か不起訴かが決定される。

最初の報道があった当日、ベンチに座る伊東の前に国内外の多くのカメラマンが並んで伊東の写真を撮っていた。その後も度々伊東にレンズが向けられていて、伊東が好奇の目にさらされ続けることは間違いなかった。

森保一監督が、伊東の精神状態やチームがピッチ外のことで気を遣わなければいけない状況を憂慮しても、当然だと言える部分は確かにあった。

森保監督は時が来たら「招集させてもらう」と説明

その最初の報道から4か月が経過しようとしており、次第に雰囲気は変わってきたように思える。例えば5月15日、所属するフランス1部スタッド・ランスは8月3日にノエビアスタジアム神戸でヴィッセル神戸と親善試合を行うと発表し、その告知には伊東を前面に押し出したマークを使用した。また、フランスで伊東も日本の報道陣の質問に答えており、少なくともスポーツ報道の場においては取り巻く環境に冷静さが戻ってきた感じもある。

そこで記者会見で森保監督に、3月は彼を守るために招集しないという話だったが、その後何か状況の変化が起きていないかと聞いてみた。

「結論から言うと、3月と私の知っている限りの状況は変わらずということと、3月と同じで、彼を守るために、彼のために招集を今回はしませんでした」

残念ながら3月と状況は変わっていないというのが監督の認識だった。

「彼は今、スタッド・ランスでプレーしています。彼のプレーも日頃から確認をしていて、代表の中で確実に戦力になるだろうなというところは評価しています」

「ただ、3月と本当に同じで、代表としてする場合、また彼にプレッシャーがかかることが起こり得るということと、彼も大切にしている人たちにもまたいろんな影響が出るかなということで、招集を控えさせてもらいました」

一方で伊東の評価は相変わらず高い。

「彼については、これまでの代表で実績を残してくれています。その時々、彼のコンディションが良ければ、チームで存在感を発揮してくれていれば、代表にいつ入ってきても機能する選手だと思っています。そこは慌てず落ち着いて彼がプレーできるように、そして彼の大切にしている人も、そしてチームも落ち着いて活動できるように過ごすことができるようになれば、招集させてもらおうかなと、今、思っております」

この一連の回答がスラスラと出てきたということは、伊東について今回もスタッフの間で話があったことを窺わせた。また、森保監督は最後の「招集させてもらおうかなと今思っております」という部分を話しながら笑顔になったのは、決して伊東のことを忘れているわけではない、ということが説明できた満足感ではなかっただろうか。

もちろん、何が真実かはいまだ判明していない。そのため被害者とされる女性の心理にも気を遣わなければならない反面、2021年に性加害で告訴された、当時イングランド1部マンチェスター・シティに所属していたパンジャマン・メンディがキャリアを邪魔されてしまったという例も考慮しなければいけないだろう。

そして大切なのは、伊東がどうなろうと日本サッカー協会(JFA)がこれだけの貢献者に対して、どうなろうともしっかりその後をサポートしていくことだ。伊東に対するさまざまな今後のシナリオも、用意しておいてしかるべきだろう。(森雅史 / Masafumi Mori)

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