【漫画】アラフォーバンギャル、魂のV系語りに「いいね」殺到 “推し活”をとらえた高すぎる解像度と熱量

V系バンドを推すバンギャルたち。あまり知られていなかった彼女たちの生態だが、近年 SNSの発達によって明らかにされつつある。コロナ禍における、その実情を自らの経験を 合わせて描いた漫画が蟹めんまさん(@kanimen)による漫画『今日もライブに行けません!~アラフォーバンギャル、魂のV系語り~』(ぶんか社)だ。

現在そのなかのエピソードを切り抜いた「バンギャルはいろいろバンドもいろいろ」の話がX上で3万いいねを集め、バズっている。地元の奈良を題材にした『出戻りて、奈良。~中年娘のシカ県民やり直し日記~』(ホーム社)を連載中の作者に本作の人気と制作背景について話を聞いた。(小池直也)

――いいねが3万も集まっていますが、どう感じています?

蟹めんま(以下、蟹):漫画で万単位の反応をいただいたことがなかったので驚きましたし、励みになりました。実は本作の連載が始まって2話目の時に父が亡くなって、母も高齢 だったので東京から実家の奈良に戻ったんです。コロナ禍に抗って推し活をする漫画のつも りが、タイトルの『今日もライブに行けません!』の通り、真逆になりましたね。

推し活の最前線から離れた劣等感で数年間卑屈になっていたので、かなり浄化されました。どこで描いても読んでもらえるのはありがたいですよ。普段あまりXに投稿しないので、もっと宣伝する必要も感じています (笑)。

――本作の冒頭に出てくる学生時代の回想も地元に帰ったことが関係しています?

蟹:25年以上V系バンドを追いかけているので、以前からそれを振り返って描く作風ではありました。ただ年を経て帰ってきて、改めて都会との違いを痛感して思い出したことはあります。

――バンギャルには相手を思いやるがゆえのコミュニケーションの難しさがあるのかなと。

蟹:当時はバンギャルという呼び方も知名度はないですし、大人からはよく思われない趣味でした。だからこそ気を使っていた気がします。好きなバンドが何かによって過激度が変わってくるし、 追いかけ方も違うんですよね。

「自分は真にバンギャルなのか?」、「名乗ってもいいのか?」と気にしていた時期もあります。SNSが盛んになってからは自問自答系は少なくなって、インターネット学級会のように問題になるのは「このバンドはV系なのか否か」ということ。といっても最近は議論も減ってきたかもしれないですね。

――いつが最盛期でした?

蟹:2012~2016年くらいだったと記憶しています。系統で言うとメタル寄りのバンドがそういう話に発展しやすいかなと。V系がルーツだったり、イベントに出てたけど、本人たちが過去に「ジャンルに囚われたくない」等の発言をしていると議論になりやすいのかなと。

――タイムテーブル問題も興味深かったです。有識者会議が開演前に行われるなど、バンギャル同士は仲がいいということでしょうか。

蟹:「仲がいい」とは違うような……。疲弊せず、末永く推し活をするために協力できるところは互いにする、という感じかもしれません。なぜタイムテーブルが重要かというと、取るのは全休か半休か、日帰りか泊まりかなどが経済的にも影響してくるので。 あとは推しのバンドを前で見るためにも開演前に知りたいじゃないですか。みんなが幸せになれるため、もしくは目的遂行のための情報共有かもしれません(笑)。

――今後の展望もあれば教えてください。

蟹:まずは連載している『出戻りて、奈良。』を続けながら、またV系の漫画も描きたいですね。自分の中の「バンギャルあるある」的なネタはもうあまり残っていないので、今は新しいネタや切り口を探しているところです。と言いつつ、明日新しいバンドにハマって新たなあるあるを発掘している可能性も無くはないですね(笑)。

(小池直也)

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