山口百恵、神話でも菩薩でもなく、ただ「かなえたかった」こととは(後編)

芸能記事リバイバル企画! あのとき、あの人はいったい…?そして今は…。 後編です。

三浦友和もまた、普通のオトコではなかった

百恵さんの夫、三浦友和も珍しい人ではないでしょうか。今でも女性のほうがハイキャリアだと「格下婚」などと言われてしまいますが、二人が結婚した昭和の時代、大スター・山口百恵と結婚するということは、自分から「格下夫」になりますというようなもの。

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「蒼い時」によると、友和は百恵さんの引退を望んでいなかったそうですが、引退をのぞんだ百恵さんの気持ちを受け止めた。年収が億を超えていた女性を妻にし、養っていくというのはすごいプレッシャーだったことでしょう。

俳優は青春スターから大人の俳優に脱皮するとき、一時的に仕事で伸び悩むことはよくあるそうです。友和も仕事がなかった時期もあるそうですが、そこでヒネることもなかった。フツウの俳優なら、浮気でもしてバレたとしても昭和の時代ですから、「男のプライドが傷ついたから」と世間サマは言ってくれたでしょう。

しかし、友和は結婚した時に、百恵さんに「浮気をしない」と約束したそうです。口で言うだけなら簡単ですが、日刊DIGITALによると、地方ロケが終わり、盛り場に繰り出そうとすると「僕は女房がいるので、そこにはいきません」と空気を読まない行動をした。これはなかなかできることではありません。

女性問題はないものの、友和の著書「相性」(小学館)によると、仕事がなかったり、投資に失敗して長いこと借金を払ったりとお金の面では、百恵さんに迷惑をかけている。百恵さんはそんな友和を責めなかったそうです。

もともとキーキーしない性格ということもあるでしょうが、百恵さんは引退したものの、定期的にベスト盤が発売されていますし、歌唱印税も毎年入るので、落ち着いていられたという部分もありそうです。

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百恵さんはお母さんと違う生き方をしたのか?

結婚せずに妻子ある人の子を産み、一人で育てた百恵さんのお母さんと、浮気しない夫を持ち、専業主婦となった百恵さん。二人の立場は、正反対に見えるかもしれません。しかし、形こそ違えど、ひたむきな愛し方が似ているようにも思えてきます。

「蒼い時」で、百恵さんは引退を決めた理由をこう書いています。

「私は彼のためになりたかった。外に出て行く夫にむかって、『いってらっしゃい』『おかえりなさい』と言ってあげたかった。愛する人が最も安らぎを感じる場所になりたかった」

百恵さんのお父さんは、時々家にやってきて、ふらっと帰っていく、お客さんのような人だったそうです。当然、「いってらっしゃい」と「おかえりなさい」を言う機会はなかったでしょう。

そう考えると、「いってらっしゃい」と「おかえりなさい」は家庭の象徴であり、百恵さんはお母さんがなしえなかった唯一のことを果たしたのかもしれません。

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