青蔵高原で花開く生物多様性保護の取り組み 中国青海省

青蔵高原で花開く生物多様性保護の取り組み 中国青海省

青海省黄南チベット族自治州にある沢庫沢曲国家湿地公園の風景。(2023年6月21日撮影、西寧=新華社配信)

 【新華社西寧5月25日】中国の青蔵高原では長年にわたり、政府と民間団体の協力の下、生物多様性保護の取り組みが続けられている。

 青蔵高原に位置する青海省は黄河、長江、瀾滄江の水源地であることから「中国の給水塔」と呼ばれる。生息する陸生野生動物は665種で、うち国家1級保護野生動物はユキヒョウ、オグロヅル、ハイイロネコ、ナベコウなど40種。国家1級保護野生植物1種、大型菌類260種余りも分布している。

青蔵高原で花開く生物多様性保護の取り組み 中国青海省

祁連山国家公園の青海エリアで赤外線カメラが捉えたユキヒョウ。(2019年3月22日撮影、西寧=新華社配信)

 同省林業・草原局の杜平貴(と・へいき)局長によると、森林や草原、湿地、野生動植物、有害生物などに関する法整備から違法取引の一斉取り締まり、ユキヒョウやチルーなど希少種の保護から国家公園を主体とする自然保護地体系の構築、そして省全体の生物遺伝資源の収集・保存レベルの向上から野生動物による被害を補償する保険制度の初導入まで一連の具体的な措置により、省内の生物多様性はここ数年、多彩な美を開花させている。

 保護活動の継続により、青海固有種のプシバルスキーガゼルは300頭未満から3400頭以上まで増加。オグロヅルは10年前に比べて1400羽以上増え、2600羽を超えた。青海湖のみに生息するコイ科の回遊魚「青海湖裸鯉」の資源量は12万トンに回復した。省は過去10年間で累計50種千匹以上の野生動物を保護し、収容救助システムの整備を続けている。

青蔵高原で花開く生物多様性保護の取り組み 中国青海省

青海省可可西里(ココシリ)地区の索南達傑(ソナムダジェ)保護ステーションで撮影したチルー。(2023年5月18日撮影、西寧=新華社記者/李琳海)

 ユキヒョウは高山生態系の象徴種であり、気候変動の影響や水資源の安全度を示す指標種でもある。ユキヒョウ個体群の長期にわたる存在と安定的な繁殖に加え、保護活動の成果が高原・山地生態系の安定性と一体性に直結する。

 密猟や生息環境の悪化などにより、ユキヒョウはかつて国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで絶滅危惧種(EN)に分類されていた。ここ数年は青海省などが個体群と生態系の包括的な保護を積極的に推進し、以前は形跡をたどることが難しかったユキヒョウが、今では赤外線カメラの前に頻繁に現れ、青蔵高原の生物多様性を保護する取り組みの効果を裏付けている。

青蔵高原で花開く生物多様性保護の取り組み 中国青海省

青海湖の鳥島。(2019年9月24日撮影、西寧=新華社記者/李琳海)

 林業・草原局の趙海平(ちょう・かいへい)副局長は「青海省は国家公園を主体とする新たな自然保護地体系を構築し、ユキヒョウに代表される生物多様性の観察・調査を行う仕組みを確立した。省内には約1200頭のユキヒョウがいる」と述べ、IUCNの評価を基に、青蔵高原のユキヒョウ生息適地のうち、4分の1に当たる約47万平方キロが省内に位置すると紹介した。

 青蔵高原に生態系のセーフティネットを築くに当たり、法規定も力を発揮している。2023年に省は延べ5848人の法執行人員を派遣し、5623カ所を監督・検査、野生動物に関わる事件70件を処理し、違反者66人を処罰した。(記者/李琳海)

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