“ナカさん”役のベンガルが語る『あぶない刑事』の思い出「僕が恭兵さんのダミーに」

舘ひろしが演じるタカ(鷹山敏樹)と柴田恭兵が演じるユージ(大下勇次)の二人による派手なアクションと軽快なトークで人気を博した昭和の人気ドラマ『あぶない刑事』。時代を越えて愛し続けられているこの作品は、その後も劇場版がいくつも作られ、いよいよ最新作『帰ってきた あぶない刑事』が5月24日に公開を迎える。

ニュースクランチは、タカとユージと同じ横浜港署捜査課の元刑事で、粘り強く被疑者の自供をとることから「落としのナカさん」の愛称で親しまれた田中文男を演じるベンガルに、『あぶない刑事』シリーズの思い出や今作への抱負をインタビューした。

▲ベンガル【WANI BOOKS-“NewsCrunch”-Interview】

『あぶない刑事』が僕を育ててくれた

――新作の公開は5月24日ですが、早くも多くの反響があると聞きました。

ベンガル:それはうれしいです。テレビでもスポットのCMが流れていましたし、前作の『さらば あぶない刑事』(2016年1月公開)から8年経っていて、ちょうどいい時期だったのかもしれませんね。

――新作が作られると聞いたときのお気持ちを聞かせてください。

ベンガル:最初に聞いたときは“本当にやるのか……”と思いました。最初にテレビシリーズを作ったときには、“テレビで放送されたら終わりになるだろう”と思っていたんですけど、しばらくすると「映画が作られる」という話を聞いて。最初の映画を作ったときでさえ、“テレビでたくさん放送されたのに、今度は映画になるんだ……”と驚いたことを覚えています。

映画を1本撮り終えるたびに、“たぶん、これで終わりだろうな”と思うんですけど、どんどんシリーズが続いていくから(笑)。今回も同じような状況が訪れて、インタビューを受けているという感じです。

――長年放送されてきた『あぶない刑事』シリーズは、ベンガルさんにとってどのような作品ですか?

ベンガル:僕が一番長く関わっていた仕事ですし、僕を育ててくれたようなところもある。いまだに「ナカさん」と呼んでくださるファンの人もいらっしゃいますし、やっぱり僕にとっても思い入れのある作品ですね。

――印象に残っているエピソードはありますか?

ベンガル:いろいろと忘れてしまっていることも多いんだけど……(笑)。横浜でロケをやっていた頃は、休日になるとたくさんの人が現場にやってきていて、人が集まりすぎてロケが中止になるぐらいの状況でした。

そういえば、柴田恭兵さんが乗るロケバスがファンの人に囲まれてしまったときに、僕が恭兵さんのダミーとして、ファンの方を引き寄せたことがありましたね。

――ベンガルさんはファンに声をかけられたり、追いかけられることはなかったんですか?

ベンガル:僕のことを追っかけてくる人は……いなかったかな(苦笑)。ロケ現場にいるときも、お客さんから「おじさん、(仲村)トオルが見えないよ!」と言われるような感じでしたから。

みんなが作ってくれたキャラクター「ナカさん」

――ベンガルさんの役者人生で、田中文男(ナカさん)はどのような存在ですか?

ベンガル:“ナカさんをこのように演じたい”という僕の思いよりも、みんなが面白がって提案をしてくれたことが、いろいろと積み重なって完成したキャラクターだと思います。なので「ナカさん」は、みんなと一緒に作り上げた役と言えるのかもしれません。

――ベンガルさんと田中文男さんの似ている点はありますか?

ベンガル:女好き……(苦笑)。「ナカさん」は、普段の僕がそのまま出ている役だと思います。『あぶない刑事』の役柄は、皆さん本人の個性がそのまま出ていて、全く異なるキャラクターを作っている人はいないんじゃないかな。

舘ひろしさんは本当に普段のままだし、柴田恭兵さんはもう少し口数が少ないけれど、作品とあまり変わらない。仲村トオルさんや温っちゃん(浅野温子)にしても、みんな“自分の素の姿”の延長でやっているからね。

タカとユージの二人にしても、お互いが支え合い、良い影響を受けながらキャラクターを作り上げていったところがあるんじゃないかなと思います。

▲ナカさんとの共通点を「女好き」と教えてくれた

――ナカさんといえば、扇子がすごく印象的です。

ベンガル:そうですね。そうそうたる人が刑事部屋に揃っていて、自分の居場所がなくて少し不安だったんです。「もしかしたら目立ちすぎちゃうかもしれないけど、扇子を持たせてほしい」と僕から長谷部監督にお願いしたのが、扇子を持つ最初のきっかけでした。

だけど、僕が扇子を持ち始めると、そこからはスタッフさんも一緒に楽しむようになってきちゃって。浅草や新宿などで見つけた扇子を買ってきて、僕に持たせてくるんですよ。だから、扇子を持つのは僕のアイデアだったけど、そこからみんなと一緒に作っていったように感じています。

――印象的なベストも皆さんのアイデアなのでしょうか?

ベンガル:あの派手なベストも、「そんな地味なやつじゃなくて、こういう(派手な)やつを着てみたら?」と衣装さんが提案してくれたのが最初で、それがどんどんエスカレートしていって、今のキャラクターになりました。

刑事があんな派手なベストを着るなんて、現実では起こり得ないことだけど、作品がここまで長く続いて、皆さんに見ていただけているのは本当にうれしいですし、ただただ驚いています。

舘さんと恭兵さんは「年齢を超越している」

――舘ひろしさんと柴田恭兵さんの派手なアクションは、今作も健在です。お二人と同世代のベンガルさんは、タカ&ユージの勇姿をどのようにご覧になられていますか?

ベンガル:最初は“よくやるな……”と思ったけれど、二人ともまだしっかり足も上がっているし、昔と全くスタイルが変わらない。とにかく「すごい」の一言ですよ。舘さんは74歳、恭兵さんは72歳なのに、あの頃と同じようにバイクに乗ってショットガンを撃つんだから、「年齢を超越している」といっても過言ではないよね。

――今作では、ほとんどの皆さんが警察を退職していますが、ナカさんはどんな毎日を過ごしていると思いますか?

ベンガル:それは僕も知りたいね。『あぶない刑事』という作品は、家庭的な雰囲気がある人がほとんどいないから……。タカやユージも家庭で過ごしている姿なんて全く想像ができないし、兄弟や両親のエピソードが出てきたことすらもない。温っちゃんや(木の実)ナナさんも同じで、ストーリーのなかに家庭的な人がほとんど登場しないんです。

さっきの話にもつながるけれど、『あぶない刑事』の登場人物は、現実の世界には絶対に存在しないような人ばかりだから、わざわざ自分とは別のキャラクターを作ることなんてできないと思う。だからこそ、自分の個性がそれぞれの役柄にそのまま反映されているところがあるんじゃないかな。

――最後になりますが、作品を心待ちにされている皆さんへのメッセージをお願いします。

ベンガル:今作はこれまでの『あぶない刑事』ではあまりなかった、女性や親子の良い話が入っていて、素晴らしいドラマに仕上がっていると思います。これまでのように犯人を捕まえるストーリー以外の部分にも注目して、たくさんの皆さんに楽しんでもらえたらうれしいです。

▲『帰ってきた あぶない刑事』のパンフレットを手に撮影に応じてくれた

(取材:白鳥 純一)


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