金澤志奈がツアー史上3人目の快挙に王手 “師匠”の申ジエから授かった金言を心に刻み初Vに挑戦 

初日から快調に伸ばし単独首位で最終日へ 初V王手の金澤志奈(撮影:藤井孝太郎)

<リゾートトラストレディス 3日目◇25日◇関西ゴルフ倶楽部(兵庫県)◇ 6545ヤード・パー72>

首位タイから出た金澤志奈が4バーディ・1ボギーの「69」で回り、トータル12アンダーで単独首位に立った。ティショットを右に曲げた9番パー3をボギーとしたが、3日間でボギーはこの1つだけ。「ティショットはあまり気持ち良く打てていないけど、グリーン周りでカバーできている。ボギーのあとも特に気持ちは変わらなかったし、次、頑張ろうと思った」と10番パー5は2メートルを沈めるバウンスバックのバーディ。12番は残り140ヤードの2打目を3メートルにつけ、16番も3メートルを確実にカップに沈めるバーディで、混戦のV争いから一歩抜け出した。

以前からプレー中はほとんど表情が変わることがない。だが、「昔は結構、前のホールのことを引きずっていました」と心は揺れていた。“引きずり”を卒業できたのは、尊敬する申ジエ(韓国)から授かった金言だった。「とにかく今、立った場所を精いっぱい、100%の力でプレーしなさい。前のこととか、先のこととかはあまり考えず、この場を全力でプレーするように言われました」。2017年のプロテスト合格後はオフの海外合宿にも参加、マネジメト会社も同じで、心酔する元世界一の矜持に触れて、自分を磨いてきた。

初日に小林夢果、小林光希、藤田かれんと並ぶ「67」をマークし、19年の「ほけんの窓口レディース」以来となる2度目の首位発進。2日目は「68」で小林(光希)とともに首位の座を守り、この日はついに単独首位に立った。これまでは21年「伊藤園レディス」の2位が最高で、初めて首位から出る最終日を逃げ切れば、ツアーデビューから191試合目で初優勝のゴールが待っている。

「最終日はたぶん、緊張すると思うけど、平常心を保ちながら自分のプレーに集中したい。緊張するとリズムが速くなる。自分の取り柄はリズム。そこは崩さないようにしていきたい」

30日に開幕する「全米女子オープン」に出場するジエは今週は不在。「ジエさんは今年、日本ツアーにあまり出場していないので寂しい」とつぶやいたが、お互いの場所で全力を出し切るだけ。初優勝を4日間大会の完全Vで果たせば、1988年のツアー制度施行前も含めて日本人選手では90年「宝インビテーショナル」の西田智慧子、2010年「日本女子オープン」の宮里美香に次ぐ史上3人目の快挙となる。「たくさんバーディチャンスを作って優勝できるように頑張りたい。優勝を意識していきます」。

控えめな28歳から珍しく飛び出した強気なV宣言。米国にいる“師匠”に必ず一等賞を報告する。(文・臼杵孝志)

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