心臓や尻肉を手当たり次第えぐられ…ヒグマに襲われ牛8頭死傷、北海道別海町が “第2のOSO18” を警戒「人的被害も懸念」

定点カメラがとらえていたOSO18(標茶町提供)

5月21日午前8時頃、北海道・別海町の「なかしゅんべつ未来牧場」の牛舎内で、飼育されていた生後1~2週間の子牛8頭が、死傷しているのを従業員が発見した。

「12頭の牛を飼育していたんですが、発見時、4頭はすでに死んでおり、うち3頭は飼育ケージから引きずり出されていました。また、別の4頭も体中に噛み傷や引っ掻き傷を負っており、瀕死の状態だったため、殺処分するしかありませんでした」(同牧場・友貞義照専務)

牧場によると、単独のヒグマによる襲撃と見られる。

「前日17時頃に見回ったのが最後で、夜から21日朝にかけて襲われたようです。手当たり次第という感じで、何頭かは無惨にも心臓などの内臓や、尻肉などの柔らかい部分をえぐりとられていました。

もちろん、場所柄クマがいるのは承知していますが、別海町でこのような被害は記憶になく、驚いています。子牛を食べに再び襲撃する可能性があるということで、生き残った牛は別の牛舎に移しました。

北海道猟友会に箱わなを設置していただき、職員はクマ撃退スプレーを携帯し、複数人で行動しています。とにかく早く捕獲されないと不安でなりません」(同)

北海道で牛を襲ったクマといえば、2023年に射殺された雄グマ「OSO18」が記憶に新しい。

OSO18が初めて確認されたのは、2019年7月16日。北海道標茶(しべちゃ)町オソツベツで、オスのヒグマが1頭の乳牛を襲った。推定体長は2m超えと、体躯は巨大だった。北海道庁は、現場付近に残された幅18cmの前足跡と、最初の被害現場がオソツベツだったことから、そのヒグマに「OSO18」というコードネームをつけた。

OSO18は、その後も次々に牛を襲い続け、2023年までに被害は66頭にもなった。

「北海道も『特別対策班』を結成して、捕獲を試みました。牧場主も放牧場を電気柵で囲うなどしてきましたが、とにかく警戒心が強くて、知能が高い。ワナを仕掛けても成果はありませんでした。その姿を見せることはなく、監視カメラにも数回しか映っていませんでした」(地元関係者)

そんな最凶ヒグマだったOSO18だが、2023年7月30日、北海道・釧路町でハンターによって駆除されている。ハンターはヒグマをOSO18と知らずに駆除したとみられ、道が体毛をDNA鑑定したところ、OSO18だと特定されたという。

だが、今回、別海町に出没したヒグマは、OSO18と異なる点がある。

「OSO18は66頭もの牛を襲いましたが、放牧されている牛や人の目がないところを狙い、施設の中まで侵入してくることはありませんでした。しかし、別海町のクマは人的被害も懸念されるため、要警戒です。見回りを強化しないと厳しい」(別海町の地元関係者)

警察の発表では、現場に残された足跡は約17cmで300kg級のヒグマと見られる。第2のOSO18とならないよう、1日も早い駆除が望まれる。

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