「墓に入りたくない」「コレクションを処分されたくない」死後にされたくないこと「15の希望」はこうして実現しよう

自分の葬儀の後も “心配の種” が山積み(写真・PIXTA)

「デジタルデータを見られたくない」「相続争いしてほしくない」「悪口を言われたくない」「コレクションを処分されたくない」「葬式はいらない」……。

本誌読者に「自分が死んだ後で『絶対にしてほしくない』こと」を聞くと、527人からのような切実な回答があった。

司法書士の田代隆浩氏は、“家族に忘れられたくない” という思いに応えるため、家系図作成会社「家樹」を立ち上げた。

「日本で家系図は “立派な先祖を持つ人だけのもの” と思われがちですが、家の歴史を知ることで子供が興味を持ち、歴史教育にも役立ちます。また、家族で取り組むことで推定相続人が誰なのかも事前に把握でき、実用的で楽しい終活になるはずです」

では、実際に、どのような終活をおこなえばいいのか。本誌は読者から寄せられた「死後の希望」を実現させるための方法を「ネガティブ終活」と名づけ、その方策を調査してみた。

「墓に入りたくない」「コレクションを処分されたくない」など、15の希望を叶える「ネガティブ終活」の “正解” とは――。

(1)“アイツ” には葬儀に来てほしくない
→「エンディングノート」で弔問客リストを

「葬儀に呼んでほしくない人がいるなら、事前にリストを作って、エンディングノートに書いておくのがいいでしょう。最近は葬儀をしたくないという相談が増えています。葬儀の形もさまざまなので、自分の希望を記しておきましょう」(相続・終活コンサルタントの寺門美和子氏)

(2)葬式を仕切ってほしくない
→元気なうちに「葬儀社」と契約しておこう

苦手な兄弟などに、葬儀を仕切られたくない場合は……。
「葬儀の方法や料金などは、葬儀社と打ち合わせをして予約することができます。また、自分の葬儀や納骨、埋葬に関することを信頼できる人に委任できる『死後事務委任契約書』を公証役場などで作成することができます」(相続に詳しい木野綾子弁護士)

(3)墓に入りたくない
→「海洋散骨」も選択肢のひとつ

「海洋散骨は認知度が上がり、リピートされる方もおられます」

散骨サービスを手がける㈱メモリアルスタイルの西山悦子さんが語る。

「年間300~400件のご依頼があるなかでも、増えているのがお墓のご遺骨をすべて取り出し、散骨して墓じまいをされるケースです。2023年は、前年比で倍増しました。ご希望を聞いておく生前予約や、亡くなった後に散骨を任せる方を決めていただき、料金を預かる生前信託があります」

同社では個人、合同、代行の3種類の散骨があり、個人の場合、料金は小型クルーザーを利用し、神奈川県葉山に散骨するプランが16万円から。ほかに海洋散骨をするための粉骨に3万円かかる。同社では樹木葬も紹介しており、合祀型で20万円~、個人型で30万円~だ。

(4)家族とは疎遠なので遺産を遺したくない
→「遺贈」で相続させないことはできるが……

「遺言書で遺贈や寄付をすることにして、家族に遺す額を少なくすることはできます。ただし一定の法定相続人には、法律上取得することが保証されている遺留分があるので、請求されたら精算するしかありません」(木野氏)

いくら嫌いな家族でも、1銭も渡さないわけにはいかないのだ。

(5)恥ずかしい動画ファイルを残したくない
→「専用ソフト」もあるが…生前整理を徹底すべし

一定期間パソコンを起動しない場合に、データを消去してくれるソフトはあるが……。

「自己責任で利用するのはいいかもしれませんが、むしろ “デジタル終活” をしておくべきです。ネット銀行の暗証番号などは書き出し、見られたくないものと分けて保存しておきましょう」(寺門氏)

(6)植物状態になってまで生きたくない
→「尊厳死宣言公正証書」を残しておこう

「『尊厳死宣言公正証書』というものがあります。自らの考えで延命措置を中止することを宣言し、公証役場で証書にしておくのです。証書がなければ、子供は親の延命措置を『やめてくれ』とは言いづらいもの。本人の意思はもちろん、子供も救われるでしょう」(木野弁護士)

(7)孫に忘れられたくない
→「生命保険信託」で孫に毎月「小遣い」を

「信託銀行などで『生命保険信託』の契約を結ぶのはいかがでしょう。たとえば、祖父から20代の孫に保険金として1000万円を遺したら、すぐに散財してしまうかも。そこで『毎月10万円を100カ月』あげる形にすれば、お孫さんは感謝とともにあなたを思い出すはずです」(木野弁護士)

(8)へんな戒名をつけられたくない
→事前に葬儀社にお願いしておく。無料アプリもある

数十万円も払ってつけられた戒名がへんだったら、あの世で泣くしかない。

「予算や希望、そもそも不要であることなどを、事前に葬儀社やお寺に相談するのがいいと思います」(木野弁護士)

名前や職業、趣味などを入力すれば、戒名を作れる無料アプリもある。自分で考えるのもありだ。

(9)自宅を空き家にしたくない
→家族の同意を得て「生前整理」も一案

全国の空き家は900万戸、全住宅の13.8%にも(総務省調べ、2023年10月)。

「親は不動産に思い入れがある一方、子供はコストがかかるなどの理由でいらないというケースは多いです。子供ときちんと話し合い、自分が施設に入るタイミングで売却するなど、生前整理を考えましょう」(木野弁護士)

(10)孤独死したくない
→働き盛り向け「見守りアプリ」もある

「孤独死すると、高額な特殊清掃料金がかかり、住居も事故物件になってしまいます。宅配の新聞や牛乳を取れば毎日 “生存確認” してもらえますし、週に1度は行く店を持てば『最近来ないね』と気づいてもらえるでしょう。働く世代も対象の『見守りアプリ』も増えています」(寺門氏)

(11)コレクションをタダ同然で売られたくない
→マニア向けショップには「生前見積もりサービス」が

「コレクションは価値がわかる人にしかわからないですし、遺族に二束三文で処分されがちです。品目、あげたい人、鑑定業者などのリストを作り、遺言書に記しましょう」(木野弁護士)

漫画やさまざまなグッズを扱う「まんだらけ」には、コレクションを生前見積もりしてくれるサービスも。

(12)認知症になったあとに勝手に判断されたくない
→「任意後見契約」で “行く末” を決めておく

「判断能力が不十分になってから選任される成年後見人は、望んだ人がついてくれるとはかぎりません。将来、判断力が低下した際に備えて、公証役場で自分が選んだ信頼できる人に事務を代行してもらう『任意後見契約』を結んでおくのもおすすめです」(木野弁護士)

(13)自分のルーツを知らずに死にたくない
→「家系図作成サービス」が人気上昇中

「自分が何者だったかをきちんと知り、納得してから死んでいきたいと考えられる方が多いのでしょう」

家系図を作成する「家樹」の田代代表が語る。

「余命宣告をされた方などから、家系図作成のご依頼をいただくケースも多数あります。取得できるものでいちばん古い明治19年式の戸籍をもとに、江戸時代末期まで遡り、家系図を作成しています」

約1000年前の先祖がわかるプランも。約66万円と値は張るが、文献や現地調査をしてできる家系図は、自分がいなくなった後も家宝になるだろう。

(14)ペットを処分されたくない
→「ペット信託」で信頼できる人に

飼い主が亡くなると、ペットは衰弱死したり、保健所に引き取られたりすることも。

「事前にお金を払い、ペットの世話を依頼しておく『ペット信託』や、世話をしてくれることを条件に財産を譲る『負担付遺贈』があります。トラブルも多いので、きちんと調べて契約しましょう」(寺門氏)

(15)妻の再婚相手に財産を渡したくない
→「家族信託」で再婚相手に財産を取られないようにできる

「愛情の問題もありますが、自分の財産が、妻の再婚相手側に流れるのは嫌ですよね。その場合は『家族信託』を使えば、遺言と違って第1は妻、妻の死後は子供と、次世代以降の相続順位が決められます。妻が再婚した相手側に、先祖代々の土地などを相続されるのを防げます」(木野弁護士)

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