名演聴かせた演者の前にはビール並びまくり! アイルランド発「アイリッシュパブ」の“常識”とは?

本場・アイルランドのアイリッシュパブについて調査してみた

日本でもよく見かけるようになったアイルランド発祥の酒場「アイリッシュパブ」。ビールやウィスキーを味わいつつミュージシャンによる生の演奏を楽しめる……日本の居酒屋とはまた違った魅力があります。本場では独自の文化があるそうで、現地の酒場情報に詳しい「Irish PUB field」(京都市中京区)の洲崎さんに詳しく聞きました。

【写真】京都でいちばん古いアイリッシュパブ

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そもそもパブ文化はアイルランドが発祥だとされており、首都・ダブリンには最古のパブが残されています。はじめから今のような形だったわけではなく、当初は現代でいうコンビニ・ドラッグストア・雑貨屋が“飲み屋”を兼ねたような場所でした。つまり、町の人々が集まる場所として発展していったのです。こうした背景から昔ながらのアイリッシュパブはいくつかの「ある特徴」を持つと洲崎さんは言います。

◾︎フードメニューはナッツのみ!?

「人々の需要から、酒や雑貨などの商品を売る形に発展して次第に店舗の形になっていったのがアイリッシュパブと言われています。そのため、住民のニーズによって店が発展する方向も変わっていった可能性があります。中には『酒場需要』に特化し、現在もフードメニューは『袋詰めのナッツ類だけ』というパブもあるそうです」(洲崎さん)

◾︎ミュージシャンの腕の良さは“並ぶ酒の数”でわかる!?

アイリッシュパブと切り離せないのが音楽。店内で演奏が行われることも多く「人と交流するために音楽がある」というのが人々の当たりまえの感覚になっています。1990年代の後半からアイルランドのビール醸造会社・ギネス社が世界中にアイリッシュパブを広げる事業をスタートしますが、同社が手掛けるパブでも音楽やセッションが重視されていたようです。酒と音楽を愛するアイルランドの人々ですが、演奏者に対して“ある事”をします。

「客は演者に酒をおごるといいます。特に感動的なパフォーマンスをした者には皆が次々におごるので、腕ききのミュージシャンのテーブルにはいくつものビールグラスが並ぶようです」(洲崎さん)

さて、洲崎さんが京都初のアイリッシュパブとして自身の店「field」をオープンさせたのは2000年のこと。当時の日本では、まだまだパブ文化そのものが浸透していなかったそうで、当初は苦戦したのだとか。

「アイルランド音楽を演奏するという趣味を持っていたので、それまで経営していた喫茶店をリニューアルする形でアイリッシュパブをオープンさせました。日本でパブというとどうしても“お色気系”というイメージが強く、開店当初は誤解されたお客様が相当数おられて少々困りました。そのため、店の前に『アイルランド風居酒屋』と大きく書いた看板を出していた時代があります(笑)」(洲崎さん)

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一口に「アイリッシュパブ」といっても、現地には店ごとのスタイルがあり昔ながらの伝統的なパブもあれば、観光者向けのパブ、企業が手掛けるパブなど多彩です。アイルランドに訪れる機会があれば、各店の特徴に注目してみるとおもしろいかもしれません。

(取材・文=つちだ四郎)

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