川西賢志郎、役者業挑戦の背景と今後の展望を語る 芸人としては「ライブを確実にやりたい」

松本まりか主演ドラマ『ミス・ターゲット』(ABCテレビ・テレビ朝日系)は、さまざまな男を手玉に取ってきた百戦錬磨の女性結婚詐欺師が、本気の婚活に乗り出すエンタメラブストーリー。平成初期を彷彿とさせるような“王道”な展開が、話題を集めている。

そんな本作でドラマ初出演を果たしているのが、3月末でコンビを解散した元和牛の川西賢志郎だ。川西が演じているのは、ヒロインすみれ(松本まりか)の恋のお相手・宗春(上杉柊平)の幼なじみ・稲垣謙。2人の恋を後押しする“キーマン”的存在になっている。

このドラマのオファーを受けたときの心境や撮影現場の雰囲気、そして漫才に対する熱意を、川西がたっぷりと語ってくれた。(編集部)

ーードラマ出演のオファーが来たとき、率直にどう思われましたか?

川西賢志郎(以下、川西):まずは、感謝ですよね。ありがとうございます、と。ただ、僕が演じている稲垣謙って、最初は標準語のキャラクターだったんです。カジュアルな会話を標準語でやると嘘くさくなってしまいそうだなと思ったので、マネージャーを通して先方とお話をさせていただきました。感情を乗せるとなると、関西弁じゃないのはどうしても違和感があって。

ーーそれでは、台本も一気に変更を?

川西:台本は標準語なので、現場で関西弁にトランスレートさせていただくことになりました。たとえば、「いい感じじゃん」という台詞があったら、「ええ感じやんけ」に変更するみたいな。「変えちゃっていいよ」と言っていただけたので。本当にありがたいですよね。

ーーお芝居にはもともと興味があったのでしょうか?

川西:実は、以前もお話をいただいていたことがあったんです。でも、コンビで活動していたころは、劇場のスケジュールだけで3カ月先まで埋まってしまっていて。その空いているところに仕事を詰めていく感じだったので、お断りするしかなかったんです。だから、タイミングにも運命的なめぐり合わせを感じましたね。幸いなことに、ガサッとスケジュールをお渡しすることができたので(笑)。

ーーでは、お話をもらったのはコンビ解散が決まったあと?

川西:そうですね。2月末くらいでした。撮影のスケジュール的にもギリギリだったので、「(オファーを)受けるか受けないか、早く決めてほしい」という圧がマネージャーから出ていましたね。答え合わせはしていないですけど(笑)。

ーー松本まりかさんや上杉柊平さんなど、キャストには豪華な面々が集っています。

川西:本当に“THEドラマ”って感じですよね。僕が観てきたドラマの世界にいる人たちなので。

ーー松本さんとはお会いしたことは?

川西:5年以上前になるんですけど、バラエティ番組で1度ご一緒したことがあるんです。そのときに、「お写真いいですか?」と言ってきていただいて。女優さんって、普通は言われる立場じゃないですか。それなのに、わざわざ若手芸人だった僕のところにまで来てくれて。すごく印象に残っていたので、こうしてドラマでも共演させていただけて嬉しいです。

ーー上杉さんとはどうですか?

川西:初対面ですけど、圧倒的に話す時間が長いですね。初日はクールな印象だったのですが、知っていくうちに「こんなにかわいい子だったんだ」って。人懐っこさをどんどん見せてくれている感じがします。

ーー現場の雰囲気はいかがですか?

川西:すごくいい雰囲気ですよ。これはもう、松本さんと上杉くんが、雰囲気作りをしてくれているおかげだと思います。メインのお二人がいろいろ考えてくださっているのが分かるので、自分も頑張ろうっていう気持ちになるんですよね。お二人を真似て、親友役の上杉くんはもちろん、夫婦役の小槙(まこ)ちゃんとも、積極的にコミュニケーションを取るように意識しています。

ーーそのほか、役作りをするなかで意識したことはありますか?

川西:感情を作り上げるというところは、漫才も同じだと思うんです。僕は漫才でも「役のままツッコむよなぁ」と言われることもよくあったので。ただ、役者はまったくちがうキャラクターを演じるわけじゃないですか。そうなると、漫才のときとはやっぱり違うというか。「役のベースに自分がいていいのかな?」とか。「これって、お芝居なのかな?」と悩む瞬間もあったりして。なので、現場で小槙ちゃんや松本さんに「どういうふうにやってはるんですか?」と相談させていただいたこともあります。“演技とは”みたいなものが、まだよく分からなくて。

ーー共演者の方に相談されることもあるんですね。

川西:はい。あと、監督からは、「もっとリアクションを大きくしましょう」「もっと熱くてまっすぐな感じでいいですよ」など直接的な指摘をいただけるので、助かっています。僕が演じている稲垣謙は、自分とはかけ離れているタイプなんですよ。ピュアで、熱くて、バカっぽくて、まっすぐみたいな。感情全開な人間で。「彼のキャラに寄りすぎちゃうと、嘘っぽくなっちゃうかな?」とか、いろいろバランスを考えながら頑張っています。

ーー漫才をやられてきたので、台詞を覚えるのはお得意では?

川西:漫才は自分から出ている言葉なので、あらかじめ頭の中に点線で台詞があるようなもの。だから、それをなぞっていけばいいけれど、ドラマの台詞はゼロから覚えなきゃいけないので大変です。あと、これはコント番組に出演させていただいたときに思ったのですが、2人の漫才は、相手がしゃべったあとに自分がリアクションすればいいだけだけど、何人もいると、AさんがしゃべったあとにBさんが入って、そして俺がしゃべる……みたいな。待つ時間があると、むずかしいんですよね。同じお笑いでも、吉本新喜劇の方とかは上手に覚えられるんだろうなぁと思います。僕は意識して、整理をつけてからじゃないと……って感じです。

ーー芸人さんは役者業にも進出されている方が多いですが、川西さんの今後の展望は?

川西:どうなんですかね……。いろんなケースがあると思うんですけど、僕は自分がやってきた経験を持ち込んでいる感覚なんですよ。なので、芸人の活動と役者業を隔てて、「こっちはこういう顔で」みたいなのもなくて。目の前にある作品に、とことん向き合う。向き合って、面白くするためにはどうすればいいのか。それが、ネタなのかドラマなのかの違いってだけで。ただ、今回ドラマに出演してみて、役者業の面白さを実感することができたので、またお話をいただけたら丁寧に向き合っていきたいなと思います。

ーーでは、芸人としての目標を教えてください。

川西:確実にやりたいのは、ライブですね。漫才という形ではなくなってしまいますが、芸人としてやってきたことをいちばん活かせるのはライブだと思うし。それを心待ちにしてくれている方もいると思うので。

ーーそれは間違いないですよね。お笑いをやる川西さんを見たい方はたくさんいらっしゃると思います。

川西:なのでライブをやろうと思います! とはいえ、せっかく時間もできたので、ちょっとダラダラしてもいいかなと(笑)。コンビを解散したからといって、焦って「ヤバい、ヤバい」となるのではなく、自分のやってきたことは絶対に今後に生きるんだと信じて、一つひとつのお仕事に丁寧に向き合っていきたいと思います。

(取材=宮川翔、構成=菜本かな)

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